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私の書く物語コミュの白猫

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私はぼうっと窓の外を見ていた。
外を眺めている理由は特に無い。
白い部屋の白いテエブルの上の四角い大きめの白いプレイトに撒き散らかしたマアブルチョコレイトをおはじきのように弾いては口に運び、前歯で一度カリリと割ってから口の奥に運ぶという動作を緩慢に緩慢に繰り返していた。
奥歯でチョコレイトを包む糖衣をかみ砕くごりごりという音が顎から漏れ聞こえる以外は眠たくなるほど静かな曇天の昼下がりだ。
一瞬、ひゅうと白い風が吹き、マアブルチョコレイトが指から落ちる音にはっとした。いつの間にか1匹の白猫が窓辺に座っていた。
猫は首を左に傾げ、前足の肉球で窓を叩いた。ように見えた。
何度も同じ動作を繰り返し、意思が通じない窓に苛立ったのか、鼻に皺を寄せ、首を反対側に傾げ今度は少し爪を立てて窓を叩いたが、やはり意思は通じなかったのだろう。
思い切り爪を出した両手を大袈裟に振り上げ、窓を叩き、叩いた反動で、落ちた。
大変だ。 此処は四階だ。そう思って立ち上がったのはチョコレイトを5、6粒、口にしてからだった。
窓を5センチ程そっと開け目線をその隙間から外へとやるために顔を近づけた時、にょっきりと先程の猫が顔を出したので驚いて後ろへのけ反ると、猫はするりと入ってきた。
柔らかい動きで軽やかに私の横を摺り抜けテエブルに乗り、ついでにプレエトの端を踏ん付けた。
プレエトの中の色とりどりのチョコレイトが白い部屋にぱらぱらと乾いた音を立てて散ってゆく。
猫は黄緑色のチョコレイトに狙いを 定めると飛び付き、ちょっと後ろに下がり、左前足の爪先で何度か突いたと思うと、両手で押さえ込み、齧り、そのまま仰向けになり身体をくねらせている。
窓は開いたままだった。
部屋の中に閉じ込めていた暖かい空気達はこの白い部屋がよほど嫌いだったのかあっという間に逃げ出していったようで猫と共に入り込んだ外の空気に指先が冷えて痺れ始めた。
コオトを着たいと思ったけれど、この部屋にはクロオゼットもコオト架けも無かったし、隣の部屋に取りに行きたかったが、この部屋には扉も無い。
白い猫は暫く遊んでいたが、やがて突っ立ったまま動かない私の顔を嗜めるように数秒眺めるとさらりと立ち上がり、窓の外へとその身を躍らせ、灰色の景色にふわりと白い点が浮いた。
私は白猫が弄んでいたマアブルチョコレイトをゆっくりと唇に押し込み、白い点が溶け込み見えなくなるまで舌の上で溶けてゆくチョコレイトを味わった。

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