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私の書く物語コミュの海

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「見えるんだ
海が
黒い海が見えるんだ」

黒い砂浜に一粒
白い真珠が落ちていたので拾ってみたら中で小さな女の人が喚いていたからそのまま黒い海へぽーんと投げて還して走って家へ帰ったらママンが泣いてこう言った。「あなたをそんな子に育てた覚えはないわ。」
天井から吊された六羽の黒い海鳥も
細胞分裂を停止した頭を持ち上げて「育てた覚えはわいわ」と鳴いたのですっかり嫌になってしまったから図書館へ行こうとポケットに手を突っ込んだら中から溶けかけたキャラメルが出てきたので姉との思い出が全て詰まったキャラメルをくちゃくちゃと舐めながら真っ黒な空の下黒いコートの行き交う人波をかい潜り咳が出そうな喉を押え押え歩いてゆくと目の前に漆黒の壁が聳え(そびえ)立っていた。
漆塗りの建造物の
その入口から入ると黒い石で出来た受付の小さな窓から黒いケープを頭から羽織ったヤケに大きな鈎鼻の皺くちゃな婆さんが「はい。3階へどうぞ」と桜色のチケットを渡してきたので受け取りポケットへ突っ込んでそのままエレベーターへ乗ったら中は修道女でいっぱいなうえに3階だけボタンが無いので慌て「失礼、失礼」と掻き分け出てエレベーターを軸にぐるぐると纏わり付いた螺旋階段を1段1段数えながら登ったら823段目にして漸く2階だったのでもう数える気力もなく只ひたすら登ってゆくとそこは4階だったので慌てて駆け降り受付の婆さんに3階は何処ですかと尋ねるとこの奥だという。
見れば奥の黒い扉に桜色で「3階」と書いてあった。
中に入り蔵書を漁るがどれも全て黒い表紙にタイトルが黒い文字で書かれていて全く解らないので適当な本を手に取り黒檀の広いテーブルに向かうとやけに背の高い黒いスーツに鼻眼鏡の黒髪を七三に分けた顔色の悪い書士が貴方その本は読めませんよというので本を開いてみたら全てのページが黒い紙に黒インキで印刷されていたのでそのひょろっとした書士に読める本はどれですかと聞くと此処の蔵書は全てこうなのだという。
馬鹿馬鹿しくなって図書館を後にしようと扉を開けるとそこは階段だった。そうだ。此処は3階だ。扉を開けたら階段に決まっているじゃあないか。
一筋の灯りもない真っ暗な階段を
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる降りた。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるどこまでもどこまでも降りる。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。どこまで降りても2階は現れない。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる嗚呼きっと1階も現れない。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。何故私は降りてしまったのだろう。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。登ったって良かったのだ。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。階段なのだから昇って最上階へ行ってぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。街並みでも眺めたってぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。良かったのだ。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。どこまでもどこまでもぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。嗚呼何故私は何の躊躇もなくぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。降りてぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。しまったのぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。だろう。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。いつだってそうだった。いつだって上があることを忘れて降りてしまうのだ。ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
ぽーんと足を踏み外し
私は真っ黒な塔の穴から空中へと転げ出た。真っ黒な空中を真っ黒な街に向かって私は落ちて落ちて落ちていってしまうのでパラシュートを開いた。何時だって準備はしておくものだよキミ。どすんと落ちた。
黴臭い井戸の中。
そうかこの街は井戸の中にあったのか。そうか。そうか。そうだったのか。井戸の黒ずんだぬるりとした石をガチャリと1つ外しぼろぼろと崩れ始めた井戸の壁を払い退けるとそこは沼地でコールタールの沼は脚に重く纏わり非常に歩き辛いがそれがちょっとした快感でもあるのだなあなどと呟きながら舐めかけのキャラメルをポケットから摘み出しくちゃくちゃと舐めながらハイキングにでも来たようにハナウタでも歌ってみたがどうしても哀しいメロディしか出てこないのでハナウタは止めてしまったがそれはそれで切ないので独り言でも言おうかと深呼吸をしたら
バターの香りがした。カランコロン
コンニチハダレカイマセンカそうドアーを少し押して中の様子を伺いながらどう見てもパン屋としか思えない建物の鍵の掛かってないドアーを押しているのだから我ながら何てヘンテンテコな挨拶をしたもんだと呆れたが中から何の返事も返ってこないので暫く様子を伺ってみたが何の変化も無いのでそのまま中へと入ってみると真っ黒に焦げたパンがきちんと陳列されているので全くなんてパン屋に入ってしまったのかと後悔しそうっと店の外へ出ようとすると「いらっしゃいませ」と声がしたのでつい振り返ってしまった。
ちびた親爺が立っていた。
「焼きたて香ばしいパンをいろいろと取り揃えてございます。イースト菌も小麦も全て厳選された一級品です。材料は全て惣菜の中のお野菜も無農薬です。牛肉は黒毛和牛を使用、豚は黒豚、鶏と玉子は全て烏骨鶏を使用しております。もちろんその飼料も無農薬でございます。お魚は全て昨日水揚げされました天然モノを使用しております。お客様は本当に運が良い今日はその一級品ばかりを使用して作られましたこれらのパンが全て採算ド返しの300円でございますよ。さあ!お客様どれをお求めでございましょう。」でも全て「お客様さあ!さあ!さあ!」どのパンも「さあ!お客様!」真っ黒に「それじゃあそのロールパンをください。」焦げている。「ロールパンは3個からの販売になりますので900円になります。」焦げているのに。「ありがとうございました。またのご利用を。」
真っ黒に焦げたロールパンを齧ってみたが中まで炭になったロールパンは3個ともボロボロと足元に崩れ
足元には黒い砂。目の前には黒い海。
玄関を開けると天井からぶら下がった六羽の海鳥の死骸の下で干からびたママンが泣いているので声をかけようかと思ったら6人の黒い服の男達がママンとの間に立ちはだかりそのうち一番長い髭の男が黒いインキで文字が印刷された黒い紙を突き付けて軍隊か何かの号令のような声ではっきりとこう叫んだ。「姉殺害の疑いで君を逮捕する。」
私は
十三年前に海に投げたあの真珠の中の女の人がきっと姉だったのだと納得した。

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