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私の書く物語コミュの梅香

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曇天の
灰に染み入る
紅飛沫
仄かに薫り
春雨にとけ


それは紅梅白梅真っ盛りの頃の事でした。
香りに誘われ神社へと足を向けると
梅の木を愛でる女が。
何の仕事もしたことのないような柔らかな白い指を
真紅の花びらに差し向け、
佇むその姿はぞくりとするほど美しい。
わたくしは香に酔ったのかもしれません。
その女を欲しいと、
妖気すら漂わすその女を心底欲しいと
思ったのでございます。
わたくしはそっと女の横に立ちました。
びくりとして逃げ出そうといたします女をぐっと片手で捕まえます。
「山犬め!」
女がそう叫びその柔らかな白い指先から生える鋭い爪でわたくしの両の目を掻き潰すのと、
わたくしの脇差しが女の横腹を突くのと同時だったでございましょうか。
辺りに響くは獣の声。
池の水鳥が飛び立ち
春の雨が、梅の木の下に倒るる白猫と両眼を失った黒犬を
静かに柔らかく包んでゆきました。

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