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青春小説 ■春海■コミュの第2章■入梅・引き合う時■4

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○男達のいる風景 そして・・

「あれ?これなんだ?」
いきなりナベが何かを探し当てて高く掲げた。
それはあの日、春海ちゃんの忘れってったハンカチだった。
今日もずっと眺めていたんだ。
だからナベがいきなり入って来た時あんなにあわてたのさ。

あの日、忘れてった物だったんだけど。
まだ洗濯をしていなかった。
そのハンカチはすごくいい匂いがしていて。
それはもう…頭の芯まで届くような匂いで…
俺はその匂いをいつも、嗅いでいたんだ。
さすがに今ではもうしなくなったけどね。

「てめえ!それを離せ!・・ブッ殺ス!」
「なんだよ。すっげーけんまくジャン。ホイッ!グチ」
「おっとっと。なになに。HARUMI、刺繍がしてあるぞ・・あの娘のか?」
「どうでも良いからこっちによこせ!」
出入り口近くにいた、グチを目指して飛びかかった!
「げっへっへっへ」
下品な笑い声と共にナベが俺に覆い被さる。
ドッシャーーン三人は玄関先にもつれるように転んでしまった。

その時・・ドアがスゥーっと開いた・・
「あのお・・何度ノックしても返事が無いので・・コンニチハ・・」
見下ろす視線が一本。寝っ転がりながら見上げる視線が三本。

「春海…・ちゃん」
「ハルミちゃん?・・!」
「はじめまして・・ハルミちゃん・・友達のグチです」
「バカヤロー!二人共!とにかく、俺の上から降りろーーー!!!
「コ・コンニチワ・・」
*********************
「(ヒャア、カワイイじゃねえかよ)」
ナベが俺の隣で正座したままひじで小突く。
「(まあな。)」俺はホンの少しウィンクをした。

「はじからグチ、ナベ、昔からの腐れ縁だ。そして現在のメンバーのイシ」
「みなさんはじめまして春海です」
「こう見えても春海様は右のフックがすげーパンチなんだ」
「へぇぇぇそうなんだあああ俺にも入れて欲しいなあ・・」
相変わらず、大仰にうなずくナベ。
(こらこらナベ助・・それ以上前に出るんじゃない!)

「俺にも入れて欲しいなあ入れて入れて入れて!」
と春海の前に顔を近づける。
その時
「キャッ!」
と言う小さな叫び声と共に
ボゲン!
「はがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ナベの顔面を春海の右フックが捉えた。
「ああっ!・・・ごめんなさい・・」
(ホラ云わんこっちゃ無い…へへへでもナベにはいい薬かな?)
「ダイ・・ジョブ・・・ダイジョブ・・こっ・こっちにも」
と言いつつ右に頬を出した。
(やっぱ、薬にもなってねえな・・)

「じゃあ、僕が春海ちゃんの為においしいコーヒーを入れてあげよう」
グチが立ち上がった。
「ああ、それがいいや。あのねえ晴海ちゃんこいつはねえ前にコーヒー専門店で
バイトをやっててさあ、本格的なサイフォンで入れてくれるんだよ」
懲りないナベがいつになく饒舌だ。
「おい、キテキさあ」
グチの呼びかけに春海が反応した。
「あーっ。本当にキテキって呼ばれてるんだ」
「ん?そりゃそうさ、嘘なんかついてないよ」
「ねえねえグチさん。ボーっとなってる(鳴ってる)からキテキって言うのホント?」
「そうなんだよ!いやあこいつさあ、突然ボウッとなってひとり言のように
何かブツブツつぶやくんだよな。見てると面白れ-ぜ」
「ナベ!お前には聞いてないぜ。グチって言ったろ。」
「あん?そうだったか?」
「なあキテキ、この間持ってきたサイフォン出してくれ」
「オーーッス!チョット待ってくれ。え〜〜とここだっけなあ?アレ?違うなあ」

「ねえねえ、春海ちゃん、オトモダチはいないのかなあ?」
小さな声でナベが始めた。
(あのバカ!)
「えっ?いますよ〜。」
「ヒョエ〜、こ・こ・こんど、み・み・みんなで何処かに遊びに行こうよお」
☆★☆ガンッ☆★☆
「ってぇええええ!つゥゥゥゥゥ――――!」
「みっともない事してんじゃねえゾ!」
「だからって・・やかんをぶつけるこたあねえだろ!イチィ〜〜」
両手で後ろ頭を押さえながら涙目でナベが叫ぶ。

「フフ・・面白い仲間たちサンですね・・」
「面白いって事も無いんだけどさ、なんとなくね・・腐れ縁なんだ」

やっとサイフォンを見つけて隣に座った。
「でも・・良いですよ。お友達呼んで、今度何処かに行きましょうか?」
「さすが!春海ちゃん!分かってるよねえ!エライ!」

騒いでるナベを横目にイシに話しかけた。
「イシさんはおとなしいけど少し下の年齢?」
「あい!そうです・・でも、藤原さんを尊敬してますから!」
「えっ?尊敬?・・あれを?ちょっと違うような気がするけど・・」
「カリスマを感じるんでしゅよ」
「ふぅ〜んカリスマねえ」

そこで、グチがコーヒーを入れて持ってきた。
「お待ちどう様。ちょっと豆が湿気ってて、もう一つ香りが立たないんだけどね」
「いやあ。上等上等!う〜〜ん良い香りだ」
ナベが騒いでる。
「ほんとう、すごく良い香り。いっただきま〜〜す」

「でも、ちょっと香りがね、うんうん。惜しいな・・。」
ナベがカップを持ったまま首を傾げている。
「何言ってんだよナベ、この間なんて喫茶店に入って。
注文して出されたコーヒー飲みながら
『いやあ、やっぱりブルマンは違うね。こう、コクと言うか酸味と言うか
絶妙だよブルマンは』って、言ってると。
お店の人がやって来て
『間違えました・・お客様、モカを注文されたかと思って・・』っていわれてさあ」
「フンフン・・」
「こいつ、自分で『モカ』を注文しておいて、
コーヒーが来た時には自分で何を注文したか忘れて
『ブルマンは良い』なんてモカの事をでかい声で誉めるもんだから、
お店の人が注文を間違えたかと思ったんだよな」
「プ〜〜〜〜きゃはははは、おもしろ〜〜い、ナベさんの事好きになりそう」
「何いってんだよキテキ。あれはお店のネエちゃんが間違ったんだよ。・・えっ?
あっ・・良いですよ、好きになって・・」
「ヤバイ!春海その言葉は危険だ!すぐに撤回しろ。」

「えっ?なぜ?」
「こいつは、誰でも片っ端から惚れちゃって結婚しようぜって言いまくる癖があるんだ」
「そうそう、それでこの間もキテキと俺とでナベの焼け酒を付きあわされちゃって、
結局朝まで人生ゲームやっちゃったんだもんな。」

「朝まで?人生ゲーム?ホント面白いなあ。こんど私も入れてもらおっかなあ」
「いいぜ。キテキがすぐズルしてさあ、勝っちゃうんだけどさあ。面白いよ。」
「ズルなんてしてないって!借金カード食っちゃったのナベだろ!」

「さあ、ナベ、そろそろ、俺達は帰ろうか・・」
「何でだよ!せっかく春海ちゃんが来てくれたのにぃ!
今日は泊まりだよなあキテキ。」
「ナベ!帰るんだよ!」グチにしてはかなりの口調だった。
みんなもこのグチの口調には従わなければならなかった。
俺達の不文律なんだ。

「チェッ!つまんねぇなあ〜。あ〜あ。あっよせ!
止めろ!歩けるって!引っ張んなよ!グチ!」
ぶつぶつ言いながら二人の影が小さくなった。
その後をイシが追いかける。

「…・ふう…疲れるよ全く…」天井に煙草の煙を吐きながら喋る。
「ウソ!すごく楽しそうな顔してた。ホントだよ。」
「ヘッ、俺が?そうかな・・で、今日はどうしたんだ?」
「うん・・これ返しに来た。もっと早くに来たかったんだけどちょっと色々あってね」

あの時貸した俺のシャツを洗濯して持ってきてくれたんだ。
俺は、洗濯なんていいから大丈夫だって言ったんだけど、
春海が絶対に持って帰るって
引かなかった。まあ、もっとも、あのままシャツを返してくれたら。
俺、頭から被ってたかも知れないけどな。
「シシシシシシ」

「ああ、良かったのに。プレゼントしてやるって言ったろ」
「うん。うれしかった・・でも・・もしもらっちゃったらさあ
・・こうして返しにこれないから・・」
「めんどくさくなくて良いジャン。わざわざ来る手間省けるしさあ。」

「…・そうか・・うん、そうだね。じゃあもらっておけば良かったかな?」
「はじめからそう言ってんだろ。」
「あああああ!それ!私のハンカチだ。むむっ!・・むむむむむっ!」
「な・な・なんだよ・・」
「お洗濯してな〜〜い!黄ばみが落ちなくなっちゃうでしょ!」
「オッ!おう!そうだった・・いやあ、忘れてたんだ・・ハハ・・ハハ」
「ひっど〜〜い。忘れてたなんて」
「イヤ・・ち・ちがうゾ。あっそうだ、俺、いなかったんだよ、ずっと仕事でさ。」
「三ヶ月も?・・」  
「ウッ・・」  
「うそつきぃ・・罰だゾ。嘘ついた罰に歌を歌え!」
「素直じゃねえなあ。歌が聞きたいんなら歌ってくださいって頼んでみな」
「歌なんて聞きたいんじゃないモン・・罰なんだから…」

「はいはい!わかりましたよ。歌ってやるよ、この前の『ネオンサイン』で良いんだな。」
「うん、『ネオンサイン』がいいんだよぅ。うゎぁぁぁい。」パチパチパチ

   ♪♪♪♪♪♪『ネオンサイン』♪♪♪♪♪♪
http://www.geocities.jp/sfxwks2/Music/KASI/NAHA/NEONSAIN.HTM
ねえ君の肩に手をかけてもいいかナ
夕陽がビルの向こうに沈むよ
ねえ君の肩に手をかけてもいいかナ
今日は何だか優しい気分だから
風の中に香りを乗せて
人が行き過ぎる大きな街だネ
ネオンサインが少しずつ灯りはじめたよ

ねえ君の肩に手をかけてもいいかナ
君の言葉ひとつづつ思い出すよ
ねえ君の肩に手をかけてもいいかナ
君の涙ひとつぶ思い出すよ
風の中に香りを乗せて
人が行き過ぎる大きな街だネ
ネオンサインをひとつづつ数えてみようか

ねえ君の肩に手をかけてもいいかナ
夜の静けさ淋しいね
ねえ君の肩に手をかけてもいいかナ
お酒を朝まで飲み明かすのも良いね
星空の中に君を見つけて
口笛ひとつ淋しい街だネ
ネオンサインをぼんやりと一人眺めてる

  ♪♪♪♪♪ by 北山 峻 ♪♪♪♪♪♪♪♪

「ねえ・・」
「ん?」
「キス・・して・・」
「何でだよ・・」
「何ででも良いから!はやく!」
「どうした?」
「ううん。キス・・して欲しくなった・・」
「それで、歌をせがんだんだろ?」
「エッ?知ってたの?」
「分かるさ・・俺と同じ気持ちだったからな・・」
その日、春海は俺の部屋に泊まっ…・・…たんだ。

そして次の朝、帰る間際に春海はこう言った。
「私、今日の日を忘れない。2人がどうなったとしても。私、一生忘れない。」
「ああ・・そうだな。きっと俺も忘れないよ。一生な・・・」

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