ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

青春小説 ■春海■コミュの第3章■夏・絡み合う腕■2

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
○ 海で…

焼けるような暑さの中で浜辺へ向かって走った。
「うわあぁぁぁぁぁぁーーー」
声にならない奇声が交差する。
にじむ汗を感じながら春海の手を引っ張って走った。
後ろからナベと陽子ちゃんが付いて来る。
そのままみんなで海へと突進した。
「はじけるぞぉぉぉぉ!」
「キャアアア冷た〜〜〜い。」
「ソレッ!ソレッ」
冷たい海水を晴海に向かってかけてやると
俺の後ろに回ってお腹を両腕で抱き押し倒す。
「ブブブ」ザバアアア!!
「だぢじやがるんだあ!」海水を吐き出しながら起き上がる。
「フフフ・・」陽子ちゃんが笑ってる。
「ねえおっかしいよね。キテキって」調子に乗りながら
ナベが軽く陽子ちゃんの肩に腕を回した瞬間
潜り込んでナベの足を掴んで高く上げた。
「わわわわ」ナベが海の中に倒れようとした時
一緒に陽子ちゃんも倒れてしまった。
「何てことすんのよ!」春海が叫んだ。
「きゃははははははははは」笑いたがりの彼女は笑いながら
髪の毛をぬぐった。
「お前!失礼だろ!」
「失礼なのはどっちだ!」二人組み合ったまま
また海の中へドッボーーーン!
ギラギラの太陽を背に受けて彼女達は声を上げて笑った。

「グチさんも来れれば良かったのにね」
「ああ、仕事じゃあしょうがないよな」
「でも、2×2でちょうど良かったんじゃないか?」
ナベがうれしそうに言う。
「そう思ってるのはお前だけだよ」
「えっえっ・・陽子ちゃんはどうかな?」
「うん・・来て良かったなって・・」
「ホラな、言ってる意味がちがうべさ」得意げに俺。
「まっまあ、恥ずかしいんだよねっ陽子ちゃん」
「フフフ・・」
「ホラ見ろキテキ」胸を張るナベ。
「バ〜カ陽子ちゃん何も云ってないじゃネエか」
「心は一つなの・・俺と・・」
「ねえねえ。来る時さあ、駅の伝言板に今日の行き先を
キテキ書いてたけどグチさん見たかな?」
「さあな・・多分見てないんじゃないかな?」
「乗り換えの駅だから朝は忙しくてそんな暇無いだろ」
「そうか・・そうだよね・・」
「そんな事より折角来たんだからもっと楽しまなきゃな」
「そうそう。そう言う事!ネッ陽子ちゃん!」
「ナベ!おまあなあ・・いちいち語尾に陽子ちゃんをつけるな!」
「ハハ〜ンあまりにもかわいいんでキテキ妬いてるんじゃない?」
「ちょっと!それどう云う意味!」
目くじらを立てたのは春海だった。
(バカかお前もっとTPOを考えろ)ナベの脇を小突いた。
「ちちち・・ハハ・・ハハ・・あの・・そんな・・意味じゃあ・・」
「カカカ!大丈夫!この春海様そんな事くらいじゃあめげません!」
「タハ・・タハハ・・スミマセン・・」
「なあ、あの向こうにある白い灯台の所まで行って見ないか?」
「わああ、ロマンチック。ネッ陽子ちゃん行って見ようよ」
「うん、行って見たい」
「よ〜しそうと決まったら俺、ジュースとお菓子買ってくるよ」
「こういう時は動くの早いんだよな」
「あっ私も行きます!」
「へっ陽子ちゃん?・・変わりモンだね・・イッチィィィィイーーーーー」
俺の腿のあたりをギュッっと春海がつねる!

浜辺を横切るような形でしばらく歩いて行くと
次第に砂浜が岩場に変わっていった。
そうかもしれないと予想してたので、
サンダルを履いて移動したので大正解だった。

かなり波に削られて切り立った岩場で
少し肌を擦らせるだけで大きな裂傷を負いそうだった。
しかし、そのおかげか、恩恵か家族ものや普通のカップル達も
影を潜めておりキテキ達が独占した形になった。

「うわあ・・すごいなあ・・」
と結構強い風に吹かれながらキテキが叫ぶ
「何がすごいんだよ」
両手いっぱいのお菓子やジュースで転びそうになりながら
ナベが絡んできた。
「ホラ・・あれだよ」
キテキが指差す方向には
なんとも立派な入道雲が水平線から湧き上がっていた。

「ホントだ!立派な入道雲なんだか見てると感動で
涙が出そうになるね」
春海がキテキと同じ方向を見ながら答えた。

「けっ!そうかな・・ただの雲だろ・・」
今度はナベが風と格闘しながら毒づいた。
シートを岩場の上に敷こうとしているが風が強くてうまく行かない。
「あっ手伝います・・」
すかさず陽子が両端を押さえた。

「キテキのようにな。感動してるだけじゃあ物事、進まないんだよ。
何時までたってもキテキはキテキだ。」
「お前、そう言う良い方は無いんじゃねぇか、
自然の素晴らしさに感動する純な心も生きていく上で必要な事だぜ」
「そういう夢物語ばっかり追っかけてる理想論者だからあの時だって
結局メジャーになりきれなかったんだろうがよ!」
「そんな事をいまさらここで持ち出さなくても良いじゃねえか
あの時はナベだって納得ずくだったろ!」
「ああ!納得ずくさ。あの時で言えば納得するしかネエだろうが
リーダーのおめえがなっとくしネエ、でハンコ押さなかったんだからよ!」
「バカか!あの時ハンコを押してたら俺達自分のやりたい事も出来ずに
今頃どっかでくすぶってら!」
「ナンだと!」
一発触発の状態だった
何が何処でどう彼等のスイッチを
入れたのか分からなかったが・・・

「ホラホラ・・青い空と白い雲・・おいしいジュースとお菓子、
それに・・・・」
「それに・・なあに?春海ちゃん」
女の子の言葉に極端に弱いナベは
さっきまでいきり立っていた事をもう忘れたかのように笑顔だった。
「それに・・二人の美人の女の子・・・・それ以上何を望むか!」
最後は演説口調になってた。
パチパチパチ・・拍手が沸いた。
「わぁわぁ!」
ナベと陽子ちゃんだった。
「そうだ!そうだ!なんにもいらな〜〜い」
ナベは既に上機嫌のゾーンに
達しており、それ以上はキテキも何も言えなかった。
(その答えは今度の夏祭りのイベントで出すさ)
「ホラ・・キテキも座って・・」
「あ・・ああ・・」
四人並んで入道雲を眺めた。
そのうちにもどんどん形を変えて行く。

しばらくするとナベが
「この下の波打ち際の所には色んな魚やイソギンチャクとかいるんだよ
面白いよ・・陽子ちゃん行って見る?」と誘った。
「うん。」
二人はこわごわと下に降りて行った。

「う〜〜ん気持ち良いねえ・・」
思いっきり伸びをしながら春海がつぶやいた。
春海は白地に腰の当りから斜めに紺の模様が入っている水着で
プロポーションがくっきりと浮き立って見えた。
(やっぱ・・オッパイおっきいや)
「むむ・・・むむむむ・・・」
春海がキテキを覗き込む
「たははは・・ごめん・・」
「まあ、よろしい」
「俺さ、入道雲ってすごく好きなんだ。立派だよねキ然としててさ。」
「私も好き。よくさあビルとビルの間からニョキニョキって
湧き上がってる時ってあるじゃない
あれって感動しちゃってポーッと見とれちゃうんだ」
「へっ?そんな奴いたのか・・俺だけかと思ってた。昔から俺はそうでさ。
ナベなんかと歩いてる時いきなり、交差点のど真ん中で立ち止まって
見とれててナベに酷く叱られた事がある。」
「キテキなんだなあ・・何時の時でも・・」
「ソレどう云う意味だよ」
「うん、わかんなきゃそれでいいよ」
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪《入道雲》♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
http://www.geocities.jp/sfxwks2/Music/KASI/NAHA/nyudogumo.htm
    いつまでも やさしい 気持ちでいれたなら
いつまでも やさしい 気持ちでいれたなら
いつかは大人に なることわかっていたけれど
今は 考えないで ただ見つめていたいよ
遠くの入道雲 二人して 風に吹かれ
遠くの入道雲 いつまでも ここでこうして

いつまでも変らずに 微笑んでいれたなら
いつまでも変らずに 微笑んでいれたなら
時計の音も 聞こえない 帰り道の事もみんな忘れて
触れ合う指と指が 言えない言葉伝えてくれたら
いつまでもやさしい 気持ちでいれるのに
いつまでもやさしい 気持ちでいれるのに
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪《北山 峻》♪♪♪♪
「いい唄だね・・始めて聞いた・・」
「うん?そうだな・・自分の曲の中ですごく好きな唄なんだ、
ライブでの受けは悪いけどな。」
「ふ〜ん、あたしは好きだけどなあ」
歌の様に二人してしばらくボンヤリと入道雲を眺めていた。
潮の香りと波の音それだけで充分だった。
あとは何も要らない。

「俺、前に高層ビルを見て山のような気がするって言った時があったろう」
「あっ・・うん」
「あれ・・どう思う?」
キテキには珍しくしおらしい態度だ。
「どうって?」
「どうって?ってんじゃん無くさどう思うんだって聞いてんの!
時々話しが噛み合わないんだよなあ・・」
「あれ?ちょっとイライラしてるかな?」
「そんな事無いけどさ・・」
「あのね・・あたし・・あれから考えたんだ。山の事。
そして、その後キテキが言った
『俺、なんで東京なんかにいるんだろう』ってセリフ。」
「良く憶えてたなあ・・」
「そりゃあ憶えてるさ。すっごく気になったんだから」
「そうかあ・・何処が?」
「ねえ・・キテキさあ、田舎に帰った方が良いんじゃない?
この街にキテキは似合わないよ・・たぶん」
「いきなり何言い出すんだ。どうせ、俺は田舎者だよ!」
「そうじゃあなくて・・何て云うか・・キテキが小さくまとまってる気がしてさ
もっと大きくて暖かい人なのに、何だか窮屈そうなんだ。
何故、東京にいるの?
あたし・・大きくて暖かいキテキを見てみたいなってそう思ったんだ・・
ビルが山に見えるキテキを見ててさ。」
「ふむ・・どうだかな?・・・・・・まだわかんねえや。」
「わたしさあ・・キテキとキテキの生まれて育った町で暮らして見たいなって・・」
「ふ〜ん・・・ってそりゃあお前・・」
春海の顔が少し赤かったように思えたのは気のせいだったのか・・
それとも・・少しずつ夕焼けに近づいて来た太陽のせいなのか・・・

「あれ?なんだか泣き声が聞こえない?」
「???確かに・・聞こえるぞ」
立ち上がって見まわすと磯辺に座っている
二人の姿が見えた。
泣いているのは陽子ちゃんのようだった。
「どうした!?ナベ!」
叫ぶが聞こえないのか振り向きもしない。
陽子ちゃんはひざを抱えてそのひざに顔をうずめるようにして肩を震わしていて、
ナベは近くに立っていて、腕を振りまわして怒っている様子だった。
「くっそー。絶対許せネエ。」
飛ぶように降りて行くとナベの声が聞こえてきた

「何でそんな奴について行ったんだ?」
何を話しているのかナベはかなり興奮していた。
「おう。ナベ、どうした・・女の子を泣かせちゃいけないんだろ?
何時も言ってる自分のセリフじゃないか。」
「ああ、キテキか・・」
少し遅れて降りてきた春海が肩を抱くように陽子ちゃんの所に行った。

「何があったんだ?」
「どうもこうもねえ。俺は頭ったまに来た!」
「何でお前が頭に来るんだ?ちょっとおかしんじゃねえのか?」
ナベに掴みかかろうとした時に陽子ちゃんが口を開いた。
「違うんです。ナベさんは悪くない。私が悪いんです。」
「・・・そうは言ってもなあ・・どうしよっか?」
そう云いながら春海の方を振り返った。
「こんな所じゃあ話しもできないし、場所を変えて
話しを聞こうよ。」

春海の提案でみんなは近くの海の見える喫茶店に座った。
「・・で・・何がどうなったんだ?」
「お・俺からは話せねえ・・」
「じゃあ、陽子ちゃん話してみてくれないかなあ」
「ええ・・でも・・もう・・終わった事だから・・」
「終わった?・・・何時の話しなんだい?」
「もう、前の事なんです。」
「・・ふ〜ん・・で、何でナベがこんなに興奮してるんだ?」
「俺はよう。許せねえんだ、そいつが。」
「そいつって誰の事?」
「こんなになったのも、私のせいなので全部お話しします。
もう・・半年くらい前の事なんですけど。私・・好きな人がいたんです。
その人は、私達が勤務している大学病院の先生でした」

「・・・・私達って・・春海もそうなのか?」
「言わなかったけ?そうだよ。」
「えっ?それって・・か・看護婦さん?
俺、てっきり・・短大かなんかだと・・まあいいや・・それで?」
「はい・・その先生、すごく優しくて色んな事を教えていただきました。
私は、近くにいるだけで舞い上がってしまって・・」
「陽子ちゃんは純情ナンだよね。素直でさ・・それだけに少し一生懸命に
なりすぎちゃう所があるんだよね。」

「春海ちゃんにも相談に乗ってもらってたりしてたんですけど・・
或る日、その先生がドライブに行かないかって誘ってくれて・・」
「そうなの?その話しは知らなかったわ・・」
「恥ずかしくて云えなかった・・凄く楽しい一日でした。
海へ連れてってくれたんです。まだ寒いくらいだったけど・・」
「ナンだか・・危ない展開だなあ・・」
「だろ?」
いつに無く口の重いナベが挟む
「夕方になって近くのレストランで食事をして、じゃあ帰ろうかって
車に乗りこみました・・陽はとっぷりと暮れていました。
しばらく走っていると先生がポツリといったんです。
『もっと君を知りたいな』って、はじめは何の事かわからず『えっ?』って
答えました。そうしているうちに車がホテルの中に入っていったんです。・・・」
そこまで話しをした時、陽子は大きく泣き崩れた。

「だあああああああああ!もういい!もういいよ陽子ちゃん!わかったから!」
ナベが叫ぶと辺りがシンとなった。
「なあ・・キテキ・・許せるか?そんな奴・・」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・許せネエ!」
「だろ!俺はちょっとそいつに会いてえなあと思ってもおかしくねえべ・・」
「おう・・おかしくねえ・・俺も会って顔を見たくなった・・」
「止めなさいよう!二人共!陽子ちゃんの気持ちをもっと
大事にして上げなきゃだめじゃない・・」

「??大事に思ってるさ・・なあ・・ナベ・・」
「ああ・・」
「いい!絶対に鍋島先生に会いに行っちゃあダメだからね!」
「フンッ!鍋島っちゅーのかい・・そいつの名前は・・」
「あっ・・と・とにかく絶対ダメだよ!」
「ん?・・会わねえよなあ・・ナベ・・」
「・・・ぉう!・・」

その日はその事件でみんな少し興ざめしてしまったか
帰りはあまり元気も無く言葉少なだった。

その後、また海岸に出た。
海に落ちてゆく夕日は
少しだけ夏の終わりを告げているかのようだった。
そりゃあ、楽しいだけで生きていけないよ。
そう、語りかけるように見えた。
何もしゃべらず。
ただ、四人で眺めていた。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

青春小説 ■春海■ 更新情報

青春小説 ■春海■のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング