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青春小説 ■春海■コミュの第6章■そして再び・・春■

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●エピローグ 1

「はい、行ってらっしゃい。先生の言う事よーく聞くんだよ」
「うん。あのねぇ、内田先生ネエおもしろいんだよぉキャッキャッキャ」
「早く!遅れちゃうから!」
「はーい」

まさに春の日差しが心地良い一コマだな。
「???」
何だって?

何か質問があるのかな?
あーあの事ね・・もう随分昔の事で忘れちゃったなあ。
なんせざっと20年だ…ふ〜ん…20年かあ…
そうだ!今の事を話そう。

そう、あれからあっという間に20余年が過ぎた。
光陰矢のごとしとはこの事だが・・まあ、あの一年に比べれば
あれからの20余年なんて確かに
繋がった羊羹の様にも思えるな。(はんっ!?どういう意味だ?)
俺も、もう45歳だ。
勿論、子供を今送り出している妻は春海。
安心したか?
そして、その男の子は二人の宝だ。
近くの小学校に通っている。
まあ、大団円って言うわけだな。これくらいで良いか?

ダメ!?
ダメ!の口調が強いなあ。
そんなに聞きたいの?
んじゃあ・・思い出しながら話すかな。

●エピローグ 2

んーと、そうだ!
春海と病院で話をした後、次の日二人で高岡に向けて出かけた。
駅に降りてびっくりした。
兎に角、雪景色なんだ。
町も山も白・白・白まるで南極観測船から
紅白歌合戦の白組に送った応援電報みたいなものだ。

そりゃあ雪の多い場所だってって事は知ってるさ。
でもね、まだ12月にもなっていない時期だったんだよ。
11月の終わり頃だったかな?
駅員に聞いたら、こんな早い雪は記憶に無いって言ってたよ。

ナベん家の実家に寄ると色々めんどくさいからすぐに二上山に出かけた。
タクシーに乗って途中まで行くと、急に思い出した場所に出くわしたので下りた。
なんちゅう寒い!二人とも雪山仕度なんてしてないので震えながら。
一般の山道から外れ、さらに雪深くなった木々の間を抜けた。
しばらく行くと、小枝の隙間から黒っぽい小屋のような物が見えて来た。
中から少〜し煙が上がってる。
例の炭焼き小屋だ。
それぞれに駆け寄る二人。
中をのぞくと、薄暗い余り広くない場所に沢山のごみが山積みしてあった。

ナベはいないみたいで、焚き火らしき跡があり。
煙は殆ど消えかかっていた。
「んーナベはいないみたいだなあ・・どこへ行ったか?」
「それとも、ここにはいないのかも・・」春海がつぶやく。
「いや、いるな。あの缶ビールの山は奴の仕業だ」
そういいながらまわりを散策し始める。

もう、全部が雪をかぶっていて道も何も分からなくなっている・・
少し歩いた時「ゴソ・・」
何か音がした・・
「ごっくん」
春海が生唾を飲み込む。
すると正面の雪山がほんの少し割れて崩れた!
「もしかして?」
その春海の声に反応したオレは
ダッと走り込みその雪を掻き始めた。

しばらくすると真っ赤に晴れ上がった顔をしたナベが
息も絶え絶えに横たわっていた。
「ナベ!」
「ナベさん!」
「ナベ!」
「ナベさん!」
「おい!しっかりしろ!」
「大丈夫!?ナベさん!」
二人で抱えるように炭焼き小屋に連れて戻り
焚き火に木や新聞紙を焼(く)べた。
ゆっくり炎が上がり廻りの気温が上昇してゆく。

「よし!俺は救急車を呼んで来る。その間暖めてやってくれ」
走り出した。

雪に足を取られ木は行く手を阻み
道は道らしい存在を成さず
オレは気力だけで兎に角
麓の方へ麓の方へ走った。
小枝が顔に突き刺さり僅かに雪から顔を出してる
木の根につまずきついにもんどりうって倒れ込んだ。
「ぷっはー・・・ちっく!」
いつもの台詞を吐こうとしたその時だ。

向うから知っている顔が上がって来た・・??
「あれー?」
「おう!血相変えてどうした?」
「やすだぁー。」
力が抜けるように膝元に崩れた
「俺は安井だっちゅーんだよ」
そう言うとグイッと俺の肩の下に腕を入れ担ぎ上げる。
少し笑ったようにも見えたが良くは判らなかった。

「きゅーきゅーしゃを・・」
つぶやくように叫んだ。
「なに!?」
「ぎゃっ!」
俺を放り投げて自分の車に駆け込んだ。

三人が見守る中、少しだけナベが意識を取り戻す
「お・・おぅ・・キテキじゃネエか・・何でここにいるんだ?」
「よう!『何してんだ?』じゃねえ!何やってんだおめえ!」
言葉を続けようとした俺を制して安井は直立不動の姿勢をとった。
しばらくの沈黙のあと、いきなり敬礼をして大声で叫んだ。

「渡辺宏幸殿!貴公の殺人の疑いは綺麗に晴れました!」
「何!?どういう事だ?」と俺
低い声で俺に向かって
「それがな・・2日前に自首してきたんだよ。」
と呟いた。
「誰?」
「友里さ」
「やっぱ・・そうだったんだ・・」
「ああ!私が殺したのに!私が殺したのに!と連呼していたそうだ・・」
「あん?どう言う意味なんだ?」
「うむ、深すぎる愛情の末の顛末と警部補は言ってたがな
オレは愛情に関してはてんで判らなくてな。答えは出ねぇーんだ」
「そうだろうねえ・・やすだくん・・君のおつむじゃあねえ」
「ああ・・むつかしい・・」
意外に熱くならないのでちょっと拍子抜けしたが
少しだけコイツを見直して『安田』と呼ぶのは止めようと思った。

「ふーん。それって自分が殺してたのに自分以外の人に
罪がかぶさる事自体、自分に取って許せないような感情があるのかも」
春海が割って入った。
「女独特の感情かもしれないよ、なんせ生命を創り出すんだからね」
「そうだよなあ。男の独占欲とはまた異質の・・」
「そう・・その時、友里ちゃんは殺すつもりじゃあなかったかも知れない…
最後の抵抗でもしかしたら。もう一度、鍋島を取り戻そうと・・」
「しかし、鍋島がそれを聞かなかった?・・」
「それでカッとなったか?」

丁度そこで安井のポケットから無線機が音を立てた。
「ガーーーピーーーーー・・・まあ、素人筋じゃあ推測してもそんなとこだろうな。」
「あっ!善さんだあ」
なんと春海が叫んだ。
「ひゃひゃひゃ・・びっくりしたか?」
「久し振りだね。」
「そんじゃあプロの見解って奴を披露してもらおうか?」
「あん?まあ・・普通一般人には明かさないんだが・・まあいいだろう・・」
しかしこの後の善さんの説明にはちょっとした作為(さくい)が秘められていた・・が
その時はまだ知る由もなかった(たまにはこう言う小説っぽい表現しても良いよな)

その日、友里は陽子から電話を貰った。
友里の電話番号は唯一陽子しか知らなかったのだが・・。

「例のホテルらしいの・・」そう陽子は言った。
「うん。分かったわ。」そう友里は答えた。
短い会話だったがその中には彼女達にしかわからない
大きな意味が沢山含まれていた。

陽子と友里には共通点がある。
話して楽しい事ではないが・・無論、鍋島の事でだ。
そういった関係もあり、よくお互いがお互いの
相談相手になっていたらしいのだ。

友里が実家に帰ってからは
陽子から定期的に鍋島情報を受け取っていたらしい。
そういった関係で今回、鍋島が陽子に連絡してきた時も
すぐに友里に電話したんだろう。
友里は静岡の富士市に帰っていたがすぐに身支度を始めた。
行き先はわかっていた。

夜になってそのホテルのすぐ横で待っていると鍋島の車がやって来た。
しばらくすると衣服をはだけた春海が逃げるように降りて来て。
出待ちのタクシーに飛び乗った。
追いかけるように降りて来た鍋島だったがすぐにタクシーに乗った春海を見て。
間に合わないと思ったのか自分の車に入った。
その瞬間助手席に滑り込んだ影があった。
渡辺である。

渡辺は一方的に
『ばかやろうだのこのやろうだの』と小学生のような罵声を浴びせ。
頭を二発思い切り殴ると
『もう、陽子には手を出すな。俺の嫁にする。』
と捨て台詞して帰っていった。

ぐったりしている鍋島そこにもう一つの影が近づいた。
勿論友里だ。
助手席に乗り込み血の出ている頭部をハンカチでぬぐおうとすると
鍋島が気が付いた。
「ん?なんだ友里じゃないか何故こんな所に?」
「私・・いまでも愛してるの・・あなたの子供が欲しい」
そう詰め寄った。
「気もちわりぃ。何てこと言うんだ!」
「気・・気もち・・わる・・い?」
「そうだよ。もう終わったんだよ・・お前とは・・
それとも何か?もう一回俺とヤリたいか?」
ニヤリと笑うとエンジンを『ずぅうぉぉぉぉんん』とかけ
バックしようと扉を開けて外へ顔を出した。

その瞬間、友里が足を伸ばして左ハンドルのアクセルを思いっきりフカした。
撥ねるように赤いスポーツカーはバックして壁にぶつかった。
そして、その壁の前に立ってた金属の支柱は
鍋島の横顔に致死に至る充分な打撃を与えた。

鍋島は即死だった。
「やっと私だけの物になったわ・・」
そうつぶやくと友里はどこへとも無く闇に消えた。

「じゃあ、おっさん。ニュースを見て自分の物になったと思ってた鍋島が
容疑をかけられたナベによって自分の物でなくなったって思ったのか?」
「まあ、そう言う事だな。それでもう一度自分の物にしたくて自首してきたって訳だ・・」
「ん・・・そうか・・深いな・・」
「まあ、若けーの今に分かるよ」
「????」
松の木の裏からゆっくり出てきた善さん。
「ひゃっっひゃっひゃ!すぐ裏にいたんだけど出て来れなくなっちゃった」
「無線機だからどこか近くだよなあと思ってたんだよ」

救急車が近づいてきた。
運び出されるナベに
「お前はホント幸せな奴だなあ。なんにも知らねーでよ」とつぶやいた。
すると
「シュウヘイ・・俺・・さあ。親父になれるかな?」そう聞いてきた。
「なれんだろ!大丈夫さ。出来ちゃっただけで一ヶ月もこもっちゃうような奴が
ちゃんとした父親にがなれない訳ネエ」
「そっか・・やったーーーーー!」いきなり叫ぶナベ!
「何だ割と元気じゃネエか?」
「当たりめえだ。このナベ様はこのくらいの雪に負けるわけネエ・・
ただ・・気持ちが萎・え・ち・ゃ・っ・て・た・だけさ」

● 本当の大団円

てな訳だ。
そしてまた春が巡って来た。
春海のセンチメンタルジャーニーの親父は今も生き続けてる。
死ぬの生きるの騒いだ割には中々シブトイ。

ああ…そう言えば取って置きの話があるぜ。
あれから家族を持った事や少し離れて暮らしてたりして。
10年以上も疎遠になってたナベとバッタリ出くわしちまった。
どこだと思う?ナント息子の小学校の入学式でさ。
PTA会長の挨拶で出てきたオヤジがナベだったんだよ。
式典を忘れて「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と叫んじまった。
世の中本当に狭いそして・・深い。

引っ越した先が同じ学区内だったとはな。
しかも、何をどう間違えたか奴がよりによってPTA会長だってさ。
20余年の歳月は確かに短くは無いよな。

そう言えば一つだけ俺も疑問だった事をPTA会長のナベにぶつけてみた。
ずっと気になってたが、当時ついに聞けなかった事だ。
「お前さあ何であのホテルにいたんだ?」
「あん?ああ、実はさ鍋島から陽子の部屋に電話がかかってきた時
俺はその場にいたんだよ。」
「えっ!そうなのかあ・・」
「ああ、んで無理やり電話を変わってナローテメー!って言ったんだよ」
「お前らしいや」
「したらあいつ今日は春海ちゃんをいただくような事を言いやがってさ」
「なにっぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「んで、陽子が場所を知っているらしいんで聞き出して張り込んでたんだよ」
「くっそーーーーーー!何て奴だ!俺がぶっ殺してやる!!!!!」
「はは・・奴はもう死んでるぜ・・」
「確かに・・そうだった・・やっぱいつかは誰かが
成敗してくれるような奴だったって事か・・」
なーんてな。

俺かい?
《ガーガーピー!!!!》おっと無線が入って来た。

「何!コロシ?ばかやろー事件は給湯室で起こってるんじゃない!」
…んでさ…どこまでしゃべったっけ?
ああ、そうだ。
あれから善さんに口説かれてさ。
とうとう刑事になっちまった。
あのロバジジイ最後はあの事件の真相を話したんだろう。
だからお前には守秘義務があるんだ。
だから刑事になれってさ訳のわかんねえ理論出しやがってさ。
なっ、あの時に言った
ちょっとした作為(さくい)がこれさ。
まあしかし、刑事も面白そうなんで引き受ける事にした。

その後。善さんが引退した後、今は安井とコンビを組んで。
敏腕刑事って言われるようになっちまったよ。
安井と俺は実は同い年だったんだ。
あいつ老けてるよなあ・・。
この20年。結構、面白い事件もあったぜ。
今度はそんな話でもしようかなあ。えっへへへ。

そう言えば何処かの物書きが、
俺の事件簿をドラマにしたいって言って来てたなあ。
俺は「ムリムリ」って答えたさ。
俺の話をドラマにしたら。
主演は織田裕二ぐらいしかいねえだろ。
なんちってさ・・
ドロドロした人間模様の刑事ドラマに
トレンディー俳優の織田裕二が出るわけねえもんなア。
けけけ。

まっ、いっか。

バムゥ!勢い良くドアを閉めエンジンをかけた。
無線を取り
「どこだ!?弥生町!?おしゃああ。すぐ行く!そのままにしてろ!
死体はヤスに絶対触らせんなよ!」
その言葉を残し車は走り出した。
ぶろろぅろぅろぅろぅ・・・・・・・・・!
                      

完完完


フィー…終わった…良かった…終わって…長かった・・疲れた…寝る・・ ・。




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