Deeeeep NY　女の夜遊びコミュの完結編：開脚！愛のお餞別大作戦の巻

　
　京大ダーリンが日本に帰ってしまった。

　私を振った『エールの君』、『競歩男』、『もじゃぁ〜チェブラーシカ』はニューヨークに住んでいる。私は振られてもずっと好きよ〜の感情は継続。故に「偶然、街で再会！　彼らが好きになってくれるかも」という恐ろしく前向きな考え方でマンハッタンを歩いている。

　しかし、京大ダーリンはニューヨークにいない。
　偶然、街ですれ違うこともない。

　胸に大きな風穴があいてしまった。
ピュ〜、ピュ〜。

京大ダーリン……。

　と、彼の賢いエリート顔を思い浮かべるも、現実問題で彼の顔がかき消されてしまった。合計300ドル以上もした高級ランジェリーはどうしようか？
　来月のクレジットカードの支払いが怖い。
　値札を思いっきり捨ててしまったから返品は無理だ。
　普段に着るには私には高級過ぎる！　いや、そんなケチくさいこと言っていないで日常着るくらいの気合いがないと男は寄って来ない（のかなぁ？）

「Hey! Megumi」
　悶々と考えながら歩いていると、私の名前を呼ぶ者がいる。
振り返ると、マイクがいた。

　マイクは、ゲイ友の亜米利加人だ。ゲイ・メンだけどレズビアン・バーに一緒に行ったりと、かつてはよく遊んでいたが、マイクにダーリンができて、彼と同棲を始めてから疎遠になってしまった。
　久しぶりぃ〜のハグをして、お互いの近況を簡単に話した。
マイクは、まぁまぁ幸せと言ったが、ということは安定してる証拠。でも浮気心がむくむくと出て来てそれと闘っているそうだ。
私は、一連のストーリー：「ストリップでエクササイズ」に行って練習をしたが、京大ダーリンに相手もされず、ストリップは披露でできなかった話をした。
　悲痛に話すと本当に哀れなので、笑いを取ろうと面白可笑しく話そうとすればするほど、惨めな気分におちいっていく。

「ボクで良かったら観客になってあげるよ。折角、練習したんだろう」
「へっ？」

　思わぬ展開に驚くも、自己練までしたストリップをお蔵入りにしてしまうのはもったいない。がぁ〜〜、恥ずかしい。

＊＊＊

　踊るか、踊らないか決めかねつつ、マイクを私のアパートに招待した。
　マイクは、ゲイ・メンだから洋服のセンスが良い。それに男を愛する心の持ち主とはいえ" 男"だ。そりゃ緊張する。
「どうしよう〜」
　私は度胸を決めた。
　マイクの前で踊る事にした。高級ランジェリーを着て、アイラインもグリグリ入れて、マスカラもたっぷり塗った。椅子も用意した。
　音楽はビヨンセの　その名もズバリのNaughty Girl（エッチ・ガール）。Naughty Girlはアップテンポではないのでゆっくり踊れるからいいのだ。
　マイクはカウチに座ってビールを飲んでいる。

　ミュージック・スタート。
　　
　基本形1から始める。
　左の腰を（1）斜め左に、（2）後ろに戻して、（3）斜め右に、そして（4）後ろに戻す。

(1)(2)(3)(4)　One Two Three Four　プラス手の動き。

「おっぱい、つかんでっ！」
「セクシー・フェース」
「髪の毛かきあげて〜」

　キンバリー先生の声が心の中でこだまする。

　相撲の蹲踞（そんきょ）のようなポーズで座って脚を開いて、クラックをタッチをする。
　それも”ゆっくり”、”ねっとり”
　二本指で下から上に動かしてみた。

　あ、陰毛がパンツの脇からはみ出ていたらどうしようと心配するが、それは愛嬌だっ！

「Wow!」
マイクは目を丸くしている。

　勝手に私が命名した、「お尻好きでしょう？　でも見せてあげないも〜ん」も試みる。お尻に手を当て、お尻の振りをできるだけ小刻みにしてみた。

　ビヨンセの唄う「Sexy~」に合わせ、髪のを両手でかきあげ、「あはぁ〜〜〜ん、たまらないわぁ〜〜」を演出する手を内股に入れながら肩を震わせ、顔は顎を上げて、口を半開きにしてセクシー・フェースで決める。

　陰毛がはみ出ようが、パンツがずれてマイクにクラック(割れ目）を見られようが、ここまで来たら、愛の開脚V字をしなければ！　愛の開脚V字なしに、このショーのクライマックスは有り得ない。

　私は、椅子に座り、ヒールを持ち、開脚V字を披露〜！
One, Tow, One, Two, One, Two

「待ってましたっ！」と京大ダーリンの空想の声が聞こえる。
妄想のスポット・ライトが私に当たっている。


＊＊＊



「Megumi、良くできたよ。セクシーだったよ。ごめん。ボク、ゲイだから全然興奮しないけど、ストレートの男だったら、間違いなく＊ハード・オン＊するよ！！」

　話の途中ですが、菊楽　恵のためになって欲しいワンポイント英語レッスン！！
＊ハード・オン＊：To get a hard-on（勃起する）
例文：I got a hard-on.　ボク、勃起しちゃったっ！


……と言って、抱きしめてくれた。
「マイク、ありがとう〜」
　こんなみっともない、踊りにもなっていない異様なストリップもどきに、やさしい言葉をかけてくれたマイク。
　しかし、マイクには悪いが今抱きしめてくれているのが、京大ダーリンだったら………。

　泣けて来た。
うあぁぁぁぁ〜〜ん。


　もう、男なんかいらない。
　男はゲイ友とGo Goボーイズだけで十分。
　子供が欲しいときは、精子バンクでそれこそノーベル賞を受賞した学者の優秀な精子を買えばいいのだ。京大ダーリンよりも優秀な精子をゲットできる。

　ペニスを欲するから悲しみが増えるだけなのだ。
　もうペニスはいらん、と本気で思ったところに、あるアイディア（妄想）が私の頭を駆け抜けた。

「マイク、私のオスカル様、見つける」
「はっ？　何、それ？　オスカルって？」
「説明は後でするよ。レズビアン・バーに行こう〜！」
「よっしゃぁ〜！　」
マイクはノリがいい。

　もう一度言わせていただく。
　もう男なんかいらない。
　やっぱり女には女。

　　私とマイクは、ウエスト・ビレッジにあるレズビアン・バーに行く事にした。

　私のオスカル様を探しにゆきます。
　ニューヨークだけど、ベルばらですわっ！　ほほほ〜
　禁断！百合の世界へ「行って来まぁ〜す！！」