もう闇の中はイヤだコミュの親のＤＮＡを洗浄したい

　ＡＣは、親の加害を受けていることがほとんどです。そのため、加害した過去の親と、こころの回復作業のなかで対決し、乗り越えなければならないのですが、そこで、自己嫌悪に陥るワナが、親を否定したり、糾弾すると、自分に跳ね返ってくるという恐れです。

　さらに、おとなになったあなたが、分別をつけてある種の許しの感情で関係を再構築していたり、親が無力化し、現在はなまなましい加害はできなくなったりしていると、なおさらのこと、親を糾弾しても仕方がないという諦めや、親を非難するなどは人間としてして許されないという倫理観なども入ってきて、回復にむかうこころにブレーキをかけたり、なだめたりします。しかし、その場合でも、自己否定の感情は少しも解消されず、理由のないネガティブな落ち込みにしばしば襲われ、そのなかで親のＤＮＡを継いだことを嫌悪したりします。

　まして、絶対に許せない、死ぬまで許せない、早く死んでくれないか、という激しい感情を湧き出させるほどの、きわめてひどい加害者となってきた親も少なくないのです。その場合は、「こころの法廷」で糾弾したり、そのときの自分の感情を抱きしめて、あらためて理解したりもできるのですが、「鬼畜としかいえないアイツを、恐れて、憎んで、早く消えてくれと叫んでいるけど、そのわたしのなかにアイツの血が流れている。私も、あいつのように子どもをひどい目に遭わせるのかと怖くなってしまう。ＤＮＡをきれいに洗い流したい」という痛切なこえを上げるサバイバーの苦しみは、胸を打ちます。

　あなたのせいじゃない、あなたはなんにもわるくないよ、と受容されて、安堵する一方で、回復の取り組みのあちこちで、「この、のろわしい血のせいで、ＡＣを繰り返してしまう」という恐怖もつきまとっているのです。

　わたしが、治療同盟のサポートのなかで、この課題をどう乗り越えてもらっているかを提示して、同じ悩み・恐れを抱くサバイバーのみなさんに何かの力になることを願ってこのトピをおこしました。本編は、編集を追加しますが、この恐れについてのご意見は、ここに書き込みされるか、「第２闇イヤ」においでください。

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【続　編】

　マエフリだけで、沢山の反響を呼び起こしてしまいました、みんなのこころに染み込んだ恐怖だと、改めて思いました。

　わたしが、ずっと回復におつきあいしてきているAさんのことに触れて紹介します（実は、Aさんを軸にしていますが、何人かの経験をミックスしてあります）、そこでの気づきを一緒に感じて欲しいと思います。

　不適切な養育者で加害者だった親などは、さまざまな傷を与えていますが、もっとも根源的な嫌悪や不安・恐怖が「DNAで繋がってしまった」という逃れようのない思いです。

　Aさんの思いは、回復のステップなどで「加害した相手を許す」という提示が許せないというほど堅固な拒否で満たされています。それだから、つい自己否定の材料に「あの汚らわしいヤツの血が流れているからだ」という落ち込みに走り、「この血は、私の代で切らなければいけない」とまで考えてしまいます。

　自分が親になったら、また虐待をしてしまって、自分とおなじようなACを作ってしまうという恐怖は、実に沢山の特に女性の思いとして寄せられています。

　果たして、そうだろうか？。

　遺伝子はそんなに決定的な力をもって、次の世代の人生まで縛っているのだろうか？、DNAの解明がすすむとともに、古い時代の血縁社会の価値観を元にして、素朴な進化論から導き出された「血の系譜」や「悪い遺伝子」という思考は、いまだに社会通念のなかには大きな影響力をのこしていることは確かです。
　しかし、実際に遺伝的要因が人生の中で与える病変への影響は、研究がすすむほどすくないものだということが明らかになっています。あれほど恐れられたハンセン病も、遺伝子は無関係で、弱い病菌が原因だととっくの昔に分かっていました。日本では、半世紀もその恐れを固持して患者の人生を国家が奪い続けた悲劇があります。
　同じような偏見と烙印は、統合失調症にも見られました。つい最近まで、日本は先進国では例外的に、精神病院の入院施設が多く、閉鎖病棟に閉じこめる「治療」が普通に行われて、そのことが「施設症」として回復不能な状態にまで追い込み、ひとびとの恐怖を煽ってきたのです。悪い血の病気という烙印が捺されて患者や家族の苦しみを倍加させてきました。
　しかし、やっと病名の再定義からはじまった数年前の治療全体の見直しで、やっと実現した統合失調症という規定は、失調という語彙に表れているように、回復可能な「失調状態」にある症状だということです。生物学的な脆弱性は要因としての基盤にはあるものの、いまの社会的環境では２００人に一人は発症する「だれでも、いつでもなる可能性のある、回復可能な病気」だと分かっています。
　しかし、偏見は根深く残ります、その影響はACなどの心的外傷にも及んでしまっています。
　遺伝的要因は、リスクを高めますが、生活習慣病のすべてに見られるように、後天的、環境的な因子のほうが大きな危険性を持っています。DNAでうけとったリスクがあっても、生活や人生のありかたで、リスクを下げて幸せに暮らせるのです。

　まして、ACの加害はDNAのせいではまったく無いのです。もしも、ACを世代間で繰り返していたとしても、それは、家族のあり方「機能不全家族」や「多問題家族」という環境因子のせいです。

　よく考えて、イメージしてくださいね。確かに、あなたには両親がいます、その二人共が呪わしいこともあれば、一人が主犯格で他方が共犯のこともあります。しかし、その二人には、さらに二人ずつの親がいて四人います、もう一世代さかのぼれば八人という具合に、数百年さかのぼるだけで膨大ないのちの繋がりが見えてきませんか？。
　確かに、あなたのいのちは両親がいなければ生まれなかった、そして、まるで要らないいのちのように扱われて、自分の誕生を自己嫌悪することもあった。なんで、生んだんだという叫びもこころに潜んでいる。だけどね、その呪わしい両親の後ろには、膨大な銀河のようなモンゴリアンのいのちの受け継ぎがあった、その受け継ぎにこそ意味がある、DNAを考えるなら、あなたのいのちは、両親からだけじゃない、大銀河の受け継ぎ手としてあるのだということです。
　まさか、その大銀河の祖先たちが、すべて呪われた血だなんて滑稽すぎて想像も成り立たないくらいの妄想ですよね。事実、Aさんのお祖父さんはとても立派な人物だったと、語り継がれています、なんと、呪わしいチチオヤの口からも・・・です。
　いのちの受け継ぎは、壮大な駅伝かもしれません。前の世代の親ランナーがレースをぶちこわすだめなやつらだったとしても、いのちという襷は汚されてはいないのです。あなたの人生で誇りをとりもどせばいい、それが、膨大ないのちの受け継ぎをしてくれた祖先たちの、モンゴリアン大銀河（混血して行けば、人類大銀河だ）の願いとして、人間らしく幸せを追求して、次に託してくれという、いのちの駅伝です。

　世代間で繰り返してはいけないのは、ACを産みだす「機能不全家族」です。それはヒトとヒトとの関わり方、生き方の不全です。連鎖させないことは、この生き方だけです。あなたの血は、大銀河の人類から託されたたった一つのいのちです。自分の人生を再構築して、誇りと充足のなかで次の受け継ぎ手に渡すこと、あるいは、DNAは違っても人類の一人として次の世代を育て、ACの被害から解放された人生を渡すこと、それは、あなたから始まるのです。

　あなたに流れる何万年の人類のDNAは、誇っていいものであっても、呪うべきものではない。呪うべきものは、すべて後天的な歴史的・環境的・社会的ななかで産みだされたいまわしいゆがんだ生き方だけです。