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ホルモン避妊法について考えるコミュの生物学徒然草

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よもやま話のようなトピックですが、我々は人ですが、改めて、霊長類ヒト科の生物として、眺めると、遺伝学的な分析によれば、我々は他の類人猿と極めて似ているとか。然し、彼らはミクシにトピックを立てる事はできない。我々はここでホルモンを語っている。

所で、我々の一生を見ると、男性の場合、思春期に精通現象を体験して、極端に言えば死ぬまで生殖能力は維持しうる。実際には性交能力は晩年には衰え、顕微鏡的には動きの悪い精子も増えてくる。始まりに関しては、生殖能力の開始期というものが女性と同様に存在するけれど、終わりに関しては閉経に相当するイベントは男性にはない。

セミやカゲロウのような生物は、成虫になるということは、繁殖を意味し、繁殖が終わると彼らはその生命を終える。然し、脊椎動物の多くは、種により生きられる時間は様々であるが、多くの動物は1年の特定の時期に繁殖期が集中し、繁殖期以外は生殖とは関係のない生活を送っている。ヒトは年に13回妊娠可能な機会があるけれど、季節性型の動物では、その時期以外に実質的な繁殖行動はない。ウサギは性交刺激が引き金になり、排卵が起こり、それから短い間に子宮内膜が着床に相応しい状態にまで変化する。ヒトより効率的に思えるが、同じホルモン成分を兼ね備えながら、ホルモンの動態はヒトと全く異なる。

ともあれ、脊椎動物は他の動物よりも生殖とは無関係に生きる時間が長くなっている。全てが生殖の時間では文化創造の時間もない。所で、ネコなどの動物はメスの繁殖行動がオスの行動を決めている。メスがその時期にならない限り、オスはメスにさしたる関心も示さない。一方、ヒトでは周年妊娠が可能であり、メスの意向に関係なくオスは性行動を取り得る。純粋に生物学的に見ると、オスは精通現象以後、メスは最初の排卵を経験した後、いつでもスタンバイ状態にある。メスでは閉経でそれが終わるが、その間、常に生殖系ホルモンにより身体は支配されていると言える。こうした状況は他の動物ではない事であるから、性ホルモンと身体の関係はヒトと他の動物とでは同じでないように思われる。

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いつでも妊娠できる状態になっているという事は、つまり妊娠が母体に及ぼす影響は大きいので、常にそれに対応できるようにしているという事を意味する。ならば、初経までの女性の身体は、成熟期に比べると実に少ない性ホルモンしか血中に存在しない。初経までの12年時には14年頃までの間、性ホルモン(エストラジオールやプロゲステロン)に晒されること無く過ごす。この間に骨は伸張し、背が伸びる。
この骨の成長は主に成長ホルモンと甲状腺ホルモンの共同作用によるが、この時期に血中に循環している微量のエストラジオールは成長ホルモンの働きを支持して、骨の伸張に寄与している事は以前どこかで書いたかもしれない。
早く個体が性成熟しないように計算されている事がよく分かる。
研究者は、初経が遅いと、それだけエストラジオールの働きが遅れ、将来の骨粗鬆症に結び付く事を書いたり、ちょっと早いと将来の乳癌のリスクに結び付けたりする。
その通りであるかもしれないが、その影響は人類の命運に影響するようなものでないことは確かであり、実際、その影響はごくごく小さい。

研究者は、タモキシフェンが乳癌の治療に効果を示す事から、またある研究者は植物性エストロゲンの取り過ぎが乳癌の発生に影響を与えたという結果を報告し、乳癌とエストラジオールとの因果関係を確認しているが、同時に更年期女性のホルモン補充療法の研究から、プロゲステロンを加える事はエストラジオール単独よりも乳癌のリスクを高める事を指摘し、乳癌はエストラジオール依存性であるだけでなく、プロゲステロン依存性でもあるという事を強調している。
性ホルモンは乳癌に関して言えば、悪者である。
もう一つの根拠は女性ホルモンのない男性の乳癌発生率が極めて低い事も女性ホルモンと乳癌を結び付ける事実であろう。

さて、更年期女性がエストラジオールだけを処方されると、乳癌検出率は低下し、他方プロゲステロンを併用すると若干検出率が増加する。
生殖器年代の女性がOCを服用した場合、検出率が増加するような増加しないような、どっちとも言えない状況にある。最近のデータでは非服用者に比べても閉経後における乳癌検出率に差はなかった。つまり、OCを服用した事が原因で閉経後に乳癌が検出され易いという事はない、という結果が出ている。
更年期女性での報告も加味すると、少なくとも性ホルモンを避妊或いは更年期治療の為に服用しても、乳癌検出率が増える事はないと考えて良いように思われる。
新年を機会にサプリメントを少し勉強する事にした。
仕事柄、既に知っている事もあるが、欧米からのサプリメントの教科書を勉強すると、ちょっと疑問に思ったり、改めて納得する事も出てくる。それを皆さんとシェアしていこうと思います。
我々の身体はホルモンと神経によって調節されているけれど、更に水面下ではビタミンと呼ばれる物質、ビタミン様物質などによっても調節されている。最初にビタミンB群から始めるが、B1(チアミン)は水溶性で、現在の所明らかな取りすぎによる副作用の報告はなく、むしろ不足気味になりやすい。ビタミンの多くは補酵素の形で、ホルモンの働きを支えたり、代謝の効率を高めるのに役立ち、仮に完全に欠乏すれば、生命を保つ事も難しい。
チアミンは特に糖質代謝に関係し、糖分を取り過ぎると代謝の為に大量消費される結果チアミン不足に陥る。そうなると過剰の糖質が血中に溢れる事になり、糖尿病の人にとっては困る事になるし、神経障害を起したりする事になる。不足は主に神経系が関わる事に影響するので、精神的な問題にも関係する。色々調べても速効性はなさそうだが、一方不足しても瞬時に問題が現われるという訳でもなさそうだから、毎日不足ないように摂取する事が大事であるように思われる。不足時の症状を見ると、男性でも女性でもしばしば経験する問題が多い。意外に身体の軽微な不調の陰にはビタミン不足があるかもしれない。
チアミンの成人推奨量は男性で1.0-1.4mg、じょせいで0.8-1.1mgとされている。製品宣伝を行う訳ではないが、有名なネーチャーメイドのマルチビタミンは男性の推奨1日量をカバーしているので、女性もカバーされる。然し、ビタミン剤は含まれている全てが全部確実に吸収される訳ではないから、やはりサプリメントの名称通り食生活における補充と言う形で利用すべきなのだろう。
チアミン不足は、有名な所では脚気、その他動悸・息切れ、ウェルニッケ脳症、肝機能低下、腎機能低下、心臓肥大、食欲不振、吐き気、便秘、消化不良、浮腫、手足のしびれ、全身の倦怠感、反射神経の異常、集中力・協調性の喪失
などが挙げられている。内科で軽微な症状で総合ビタミン剤等が出されるのは、諸症状にビタミン類が関係しているとされるからであろう。
脚気は、歴史的にも有名で、精米にした結果、大名将軍は脚気に悩み、精米を食べられない農民は脚気にならないという事であったらしいが、玄米・胚芽米を別にすると、肉類、豆類に特に豊富に含まれていると言える。ビタミンB群は相対的に四足動物の肉や肝臓に多く含まれているので、肉類の食べすぎは問題であるが、極度に避けるのも問題である。魚介類にも含まれているが、牛肝臓のようにほぼ全てを含むものはないので、肉類を排除して魚介類にのも依存するのは食べ方としては非効率である。B12(コバラミン)は貝類を中心に断トツに魚介類に多い。時代劇で母親に食べさせるのだとシジミ取りをするシーンがあるが、一つにはコバラミン補充ということがあるだろう。
アルコール依存症の人ではチアミン不足が起こるようであるから、飲みすぎは禁物。
このチアミンは、ATPの介在によりチアミンピロリン酸(TPP)となるが、TPPは体内の全てのαケト酸脱炭酸反応の補酵素として働く。殆どの細胞ではこの反応を含むピルビン酸酸化とクエン酸回路を有しているので、チアミン不足が様々な問題を引き起こす事は容易に想像できる。
サプリメントの教科書では、B6、葉酸、B12はピルの服用により血中濃度が低下するとされている。私の教科書は一応米国の教科書を基準に書かれているので、同じ事がアメリカでも言われているに違いない。その背景には妊婦では不足しやすいと書かれている事に関係しているように見える。
この点に関して、全く心配ないというだけの情報はないが、過去の研究報告を読むと、殆ど影響はないというのが一つの結論であるように思われる。問題は、水溶性ビタミンであるB群は食事の偏り、喫煙、お酒など日常の環境要因により影響を受け易いということがある。他の要因を気にかける方が現実的である。
ある本によれば、ビタミンは三度三度の食事を取り、栄養配分に気を配れば不足する事はない、と書いてある。他方、別の本では昨今の生鮮食品は従来に比べて栄養成分の充実度が低く、三度の食事だけでは十分とは言えず、補充する事が必要な時代になった、と書くものがある。
サプリメントアドバイザーの勉強を始めると、やたらサプリメントが強調されている。本当の所はどっちだろうと思うが、ビタミンC等は本人に違和感がなければ、積極的に摂取しても過剰に悩む事はないから、私自身は、粉末を毎日服用している。栄養成分を気にする献立にしているが、相対的に水溶性ビタミンの不足は意識せざるを得ないので、補充している。
所で、生殖内分泌の世界ではエストラジオールが子宮内膜増殖のキーワードになっているが、細胞が増殖すると言う事は、個々の細胞において核酸(DNAやRNA)が合成されなければならないが、この核酸合成に関与する酵素の補酵素として葉酸は必須である。この葉酸の活性化にはアスコルビン酸が一役買っており、アスコルビン酸も子宮内膜増殖に関与しているということになるのかもしれない。
要するにエストラジオールは増殖刺激を与えるが、仮に細胞系から葉酸を意図的に枯渇させたとすれば、刺激があっても増殖目的は達せられないということになる。日常生活でここまで葉酸が枯渇する事はないが。因みにアスピリンを鎮痛剤として使用する頻度が高いと葉酸不足に陥り易いという報告があるらしい。後日証拠を探してみたい。
月経前症候群は、私などは経験しようもないけれど、至る所で、この悩みが渦巻いていて、PMDDなどは精神神経上の問題として、一つの症候群として取り上げられている程であるが、いわゆるビタミンB6(ピリドキシン)はPMSに効果があるサプリメントとして取り上げられており、実際、エビデンスレベルは高いものとされている。
このB6はいかなるものかということであるが、主に蛋白質代謝に関係する酵素の補酵素として機能し、脂質代謝にも関係し、ヘモグロビン或いはインスリン合成にも関与している。その他に神経伝達物質の合成系にも関係している。PMSもPMDDも神経系のトラブルと関係が深いから、B6に効果があるという結果は外れていない。このB6の働きにはB2(リボフラビン)も関わっているということであるから、仮にPMSの解消を目的としてビタミン類の補充を考えるならば、B2も一緒に取りましょうという話になるけれど、リボフラビンは脂質と糖質の代謝に関与する酵素の補酵素である。
OCを周期的に服用することでもPMSはそれなりに解消するが、これは従来PMSやPMDDは黄体期に起こる事から、プロゲステロンが悪影響を及ぼしていると考えられてきたし、OCの効果を期待する場合には、プロゲステロン仮説を前提にしている事が多い。然し、OCや何らかの介入を必要とする人は決して多いとは言えず、大部分の人は脳がプロゲステロンに晒されても精神神経的に何の問題も起こさない。症状を起す人にピリドキシンを補充すると一定の効果があると言う事は、ある種の神経伝達物質に問題が起きている事の証左になる。
プロゲステロンには一般的に脳内伝達物質であるモノアミンレベルを下げる作用があることがサルの研究から知られている。ピリドキシンの伝達物質合成系への関与は利益があるかもしれない。
他方、PMDD治療法としての適応をアメリカで取得したYazでさえも、効果には限界がある。
サプリメントとOCが喧嘩する必要はない。
いずれかでうまくいかない場合には、B複合剤とビタミンCを日々摂取すれば、より適切に問題を回避できるかもしれない。
生化学で習った事があれば知っているかもしれないが、生物の体内でエネルギーを産生するクエン酸回路(クレブス回路)がスムーズに行われなければ、生物にとっては致命的で、よほどの事がない限り、このシステムに関係する要素は欠乏しないように計算されている。
腸管に入った多糖類は分解され、ブドウ糖として血中に入り、解糖系に取り込まれる。そこではピルビン酸が生成し、この過程でエネルギーの一部が産生する。次にピルビン酸がアセチルCoAとなり、クエン酸回路に入り、更に大きなエネルギーが生み出される。CoAを形成する際にビタミンB群のパントテン酸が消費される。アセチル基とCoAの結合にはビタミンB群のナイアシンが必須である。クエン酸回路の中でコハク酸がフマル酸に変わる過程ではビタミンB2が補酵素として必須の役割を果たす。
以前にも触れたようにビタミンB群はエネルギー産生系に主要な役割を果たしており、ここで作られるエネルギーは化学的にATPに変換され、脂質代謝、蛋白質合成、核酸合成、細胞増殖、ホルモン産生、全てのプロセスに利用される。これらの成分は簡単には不足しないはずであるが、抗生物質を連用すると欠乏を招く。
理論的にはこのエネルギー産生の不十分さは、神経系の働きを不調にし、子宮内膜の働きを不調にする。エネルギー不足では卵胞期の子宮内膜増殖も十分に為しえないかもしれない。
実は月経困難症の疼痛軽減にビタミンB1がプラセボと比較して効果のあることが示されている。他に不飽和脂肪酸の一つエイコサンペンタエン酸(EPA)も疼痛軽減効果が示されている。
これらB群やEPAはOC等と衝突する事はないから、これらを毎日補充すれば、他の目的にも効果があるし、健康の下支えになると同時に上手くいけば疼痛軽減にも寄与するので両得である。
我々が食事から摂取する不飽和脂肪酸には各種あるが、アラキドン酸はプロスタグランジンの材料になるし、エイコサペンタエン酸は血管の内皮細胞におけるプロスタグランジンの仲間であるプロスタサイクリンの元になる。青木延雄先生の著書によれば、イヌイット等の食事にはアラキドン酸が少なく、彼らの体内ではプロスタサイクリンの比率が高く、故に一般の欧米人に比べて血栓症になりにくいことが明らかにされているという。
EPAが月経困難症の軽減に一定の効果を有するのは、月経困難症において疼痛の引き金になるプロスタグランジンのバランスを変える為であるとも考えられるし、局所の血行改善にも寄与しているのかもしれない。
最近、非常に気になることがある。
それは、女性では、黄体期にわずかな変動であるが、体温が上がる事に関するメカニズムはどうなっているのか、ということである。健康手帳にきっちり体温を記録する事で、卵胞期と黄体期で二相性に体温が微妙に変化する事実を確認する事ができる。
ところが、ミレーナというホルモン放出子宮内避妊システムを用いると、挿入直後の1周期は概ね二相性になっているが、2周期目以降になると二相性ではなくなり、一相性で日々上下する状態になり、その女性の場合、出血も極端に少なくなっている。
他方、挿入直後から二相性が見られない人もいる。
それから、挿入後いったん出血が止まり、数日後に再び出血が起こる事があり、40人のデータを1日刻みで出血の程度を追跡すると確かに90日目以降、出血量の多少に関しては個人差はあるが、出血量は間違いなく減少する。
一方、この40人を更に細かく調べると、大きく分けて2種類に区分される。
ミレーナ挿入後出血量が大きく減少しないケースでは、その後も中々不正出血が改善しないが、挿入直後から出血量が大きく減少するケースではその後外見的に無月経になる傾向がある。
分析に十分な数とは言い難いが、挿入1週間の出血状況を詳しく観察する事で、その後の出血の状況が予測できる可能性が見えてきている。

挿入初期に観察される最初の中間期出血は、月経初日から数えて8-10日目でミレーナから放出される黄体ホルモンがピークに達する時期と重なっている。この事典の子宮内膜の厚さは平均的に考えると、本来なら増殖初期段階である。これから徐々に血中エストラジオール濃度が高まり、益々子宮内膜が増殖し始める最初の時期である。この時期に大量の黄体ホルモンが作用するという事が最初の不正出血の原因であるかもしれない。
然し、この時には二相性は維持されている。
所が、3周期目には二相性は破綻している。どのような変化が起きているのか。

そもそも二相性の機序に関して、従来から言われている事は、黄体ホルモンが体温調節中枢に作用する事で0.2-0.3度上昇すると漠然と言われているが、これでは全く説明不足である。中枢で体温上昇の指示を出したとしても、どこで具体的に発熱現象が起こるかが分からない。通常の体温は全身で起こっているブドウ糖からATPという高エネルギー物質を作る過程で発生する熱エネルギーの総和であると言われている。黄体期の体温上昇も発熱が起こっている結果であり、解糖系が刺激されていることを示唆している。
黄体期にどこで最もエネルギーが消費されるかと言えば、それは子宮内膜ではないかと想像される。増殖後の子宮内膜では脱落膜化が誘導され、着床に備えて様々な栄養成分が作られてゆく。子宮内膜でのエネルギー産生の増加により発生した熱が全身に伝わり、体温の上げているのではないか。
ホルモン放出子宮内避妊システムが挿入されると、エネルギー産生が妨げられる結果、発熱も不完全になり二相性が失われるのかもしれない。これは局所の作用を示唆し、中枢では排卵後の体温上昇を指示しているのに、局所で妨害される結果、結果的に体温が上昇しないと考えられる。
然し、この考えを推し進めると、黄体期の体温上昇に中枢の関与は必要ないということになる。つまり、排卵後黄体からプロゲステロンが分泌され、常時分泌されている成長ホルモンや甲状腺ホルモン等の代謝に関与するホルモンと協働して、子宮内膜でのエネルギー産生に関与し、その結果局所で熱が産生し、血流を解して全身の体温を僅かに上昇させる。発熱は子宮内膜の局所的現象が全身に及んだ結果に過ぎず、中枢の預かり知らない事かもしれない。
2007年にカリフォルニア大学バークレー校の研究室でEPAが月経困難症における痛みを改善する事を明らかに示す研究結果を発表し、また自治医大埼玉大宮医療センターのグループは子宮内膜症でもEPAが炎症を鎮める可能性を示す研究結果を発表している。自治医大のグループは近年子宮内膜症が増えているかもしれないという背景の一つとして不適切な脂質摂取を仮説に触れている。地球上に人類が出現して以来、男女の性別は存在し、女性は同じメカニズムで月経を起してきたのであるから、子宮内膜症が増えているとするならば、その原因の最たるものは我々を取り巻く環境の変化であろう。食生活の変化も大きな原因と言えるだろう。
こうなると、EPAの血中濃度が比較的高い暮らしをしている人の場合、他の人よりも月経困難症や子宮内膜症の苦痛の程度が軽いのかどうか、とても気になる所である。
最近、非常に興味深い本を書店で発見し、あまりの面白さに一気に読んでしまった本がある。
それは、ニック・レーンの『ミトコンドリアが進化を決めた』(原題”Poser,Sex, Suicide--Mitochondria and the meaning of life”)である。著者は、かつて自らフリーラジカルの研究を行い、現在は自分の研究を土台にして、最新の細胞生物学的研究成果を多くの人に理解し易い言葉で紹介する読み物を出版している。今回の日本語訳に対しては、日本でミトコンドリアを初め生化学の領域で活躍している研究者の内容に関する解説まで付いており、とても参考になる。

何が面白いかというと、既に多くの人が気付いているように、我々の細胞を構成する要素であるミトコンドリアが原始的地球の環境下で独立して活動していた微生物であることを改めて明確に説明している事、葉緑体は動物には存在しないが、これも元は独立した微生物で、歴史のある一時点で寄生生物としての道を選び、結局宿主と一体化してしまった事を様々な切り口から説明してくれている。
更に、我々の活動の本質がミトコンドリアに依存している事を丹念に説明してくれる。
さて、我々はラットに比べると体温は低く、その事は我々のエネルギー代謝や物質代謝がラットに比べると遅い事を意味している。ラットは1日に自分の体重以上の食べ物を必要とするが、我々人間は1日に1kgを超えて食べる事は殆どない。大食い競争の人は別として。私は80kgであるので、体重の1.3%程度である。
エネルギー代謝(体温の高い生物)が活発である動物は一般に生物学的寿命が短いとされている。ところが、鳥類は哺乳類同様に恒温動物であるが、その体温は人類に比べて確実に高く、人類との比較では高温動物と言って良いほどであるが、カモメの場合、70-80年生存し、オウムでは100年近く生きるという。高い体温を発するのに生物学的寿命が高い事は、一般的細胞生物学的理屈に適合しないという。しかも、鳥類の場合、殆ど生物学的寿命が尽きる頃になり、細胞学的な変性疾患を起し、人に比べると中々疾病に冒されにくい事を指摘している。
著者は、その一つの理由として、ミトコンドリアで常時産生されるフリーラジカルの量が鳥類では少ない事を指摘している。彼らのミトコンドリアの数が人類に比べて少ない訳ではなく、フリーラジカルが発生しにくい細胞生物学的仕組みが確立されているという。
フリーラジカルはミトコンドリアで高エネルギー物質(ATP)を生成する際に発生する。この生成プロセスはミトコンドリアの内膜に存在する電子伝達系を電子がリレーのように受け渡される際にATPが随時生み出され、同時にフリーラジカルが生まれる。鳥類の場合、電子は流れるが必ずしもATPが作られないようになっており、ミトコンドリアは活動しているが一種のアイドリング状態にあることを推測している。
一方、熱帯地方に住む人と寒帯地方に住む人との対比に関する説明も興味深い。つまり、アフリカ人の場合人類に共通の体温36-37度を維持する為に寒帯地方の人に比べると熱を産生する必要はない。つまり、環境温度が高いので、ミトコンドリアが多少サボる事が許されるということである。然し、熱を発生していれば、ミトコンドリアでの電子の流れは滞らず、フリーラジカルが発生する余地は少なくなるが、熱産生が抑制されるとフリーラジカルが発生し易くなるという。寒帯地方ではせっせと熱を産生する必要があるので、フリーラジカルの発生は少ない。この事がイヌイット等が生活習慣病に関して熱帯地方の人よりも少ないかもしれないという観察結果に関係するかもしれない、と説明している。故に、熱帯地方ではカロリー控え目でミトコンドリアへの栄養供給を減らすことでフリーラジカルの発生を抑えられるはずである、と。
実際、動物ではこの事が証明されており、一般に低カロリーの方が長生きすると言う。同時にカウチ族に比べてスポーツ族の方が熱産生を促すので、やはりフリーラジカルの発生比率が低いという。

他方、フリーラジカルの発生を抑えているとされるビタミンCなどをせっせと摂取しても生活習慣病から免れて、人類一般の寿命を延長させる程の効果はない、と断言している。実際、サプリメントで摂取されている多くの抗酸化物質が本当に生活習慣病の発生率を低下させ、人類の延命に寄与しているかどうかは立証されていない。他方、癌のリスクはビタミンA不足の人で高い可能性を指摘する疫学的研究が存在するが、ビタミンAを積極的に摂取して効果があるという報告はない。

ともかく、生命の本質を考えさせてくれる様々な議論には大いに興味をかきたてられた。
マリリン・ヤーロムの『乳房論 乳房をめぐる欲望の社会史』
女性の乳房について語り尽くした文化論として実に読み応えのある本であった。といってまだ最後まで読み終わっていないけれど、女性が自らの乳房を客観的に見詰め、考察している。
私が興味を持ったのは、ヒポクラテスが、女性は閉経後に乳癌になり易いと言う事を記録しているという事実である。これは症例記録ではなく、当時の平均的な出来事として書いたものであろうと思われるけれど、閉経年齢は今も昔も変っていないから、紀元前には既に閉経後も余生を送る女性が少なくなかった事を示している。
誤解している人が多いけれど、紀元前でも人の生物学的平均寿命は既に70-80歳には達している。ただ、栄養状態、間違った健康観、乏しい保健衛生観、危険な出産、小児期の栄養の確保の難しさから、ただ生き難かったに過ぎない。故にゼロ歳時の平均余命が短かったということで、当時50歳まで生き永らえた人は、15年から20年の平均余命を持っていたということである。
最近、気になっている事に、人間の産卵(排卵)回数の事がある。かつて水産学でニジマスの系統に関する研究や本を読んでいて、年1回産卵型と年2回産卵型とがあり、もし種の繁殖と言う事を考えるならば、年2回産卵型が優勢になってもいいはずなのに、年2回型に収斂することなく、年1回型も種の中に保存され、日常的に種の存続を支えている。
年2回型には伝染性脾臓壊死症という感染症に弱い傾向があるらしい。
こうした欠点がある故に種の中で優勢タイプにならないのかもしれない。
ニジマスの場合、1回型も2回型も正常で単純に遺伝子型が違うに過ぎない。

人の場合、月経周期は28日を中心に24日〜35日の範囲内にばらつくが、35日周期では年10回排卵型になり、24日では年15回排卵型になる。繁殖の利点から考えれば受精の機会が少しでも多い15回型に偏っても良さそうなのに、そういう結果になっていない。ニジマスなどは産みっぱなしなので、回数が多いと利点になるが、人では10回型でも15回型でも受精して妊娠すれば、結局その後短くて1年、長くて2年は繁殖に関わらないし、年間の排卵回数は種の維持に大きな影響を与えないので、一定の範囲に確率的にばらつき、自然選択の圧力を受けないのであろう。
ここから想像であるが、人類史の中には年3回型のようなケースもあったのではないかと思う。さすがに排卵時期にタイミング良く受精するのが難しく、たまたまそうした遺伝子型を有しても子孫を残せずに終わっていたのかもしれない。
今日、たまに見られる稀発月経の場合も極端に排卵回数が少ないが、受精のタイミングが難しいだけでなく、受精後の妊娠の維持も簡単ではなさそうである。然し、今では不妊治療の進展により、このような場合でも排卵能さえあれば、何とか妊娠へと持ち込むことができるようになってきている。
もしかすると、極端に排卵回数の少ない場合も遺伝子型の違いに過ぎず、マイナーであっても病的異常ではないかもしれない。
いつも避妊或いは副効用の観点からホルモンを見ているけれど、ちょっと最近、骨に関心を持って色々本を読み漁り、常識的な事に改めて納得している。
閉経後骨粗鬆症或いは更年期における骨量の減少は、それ自体、エストロゲン低下が引き金になっている事は言うまでもないけれど、
糖尿病も長い目で見ると骨粗鬆症の原因になり、この場合、更年期を待たなくても、早い時期に骨量が減るかもしれない。
インスリンが過剰に分泌されている糖尿病ではなく、インスリンが分泌されないタイプの糖尿病であるけれど、インスリンは骨芽細胞を刺激して骨基質であるコラーゲンを合成させ、ビタミンDの働きにも関与し、間接的に消化管からのカルシウム吸収に関係しているらしい。
このコラーゲンは、エストロゲンに限らず、様々なホルモン或いは因子によって管理されているみたいだ。
閉経後のエストロゲン減少は、骨粗鬆症の原因の一つに過ぎないということか。
普段、会社ではエストロゲンが関係する骨粗鬆症の話しか聞かないが、ウィメンズヘルスケアに関わる以上、ホルモンだけに囚われていては駄目だ、とつくづく感じた。
因みに長期のビタミンC欠乏は、今は幻に近い壊血病の原因だけれど、同時に骨粗鬆症の原因にもなる。実際に壊血病患者が骨粗鬆症になったという関連性を示唆する報告はないらしいが、理論的にはそうなのだ。ついでに言うと、コラーゲン形成に関与する酵素の一つは、酵素活性の中心に鉄イオンが存在する。つまり、長期の鉄欠乏はコラーゲン合成に支障を生じるかもしれない。臨床的な具体事例を見た事はないが、これも理論的には有り得る。
コラーゲン研究に半生を注いできた研究者の本を読むと、コラーゲンを身体に作らせたければ、バランスの取れたアミノ酸、ビタミンC、鉄をしっかり摂取すべきであるが、当然過剰には注意し、併せて、骨基質に補充されるカルシウム、マグネシウム、リンも過不足なく取りなさい、と。
最近、少し古い論文を眺めていたら、今まで気づかなかった事実を見つけた。世界の経口避妊薬には様々なプロゲスチンが含まれている。これら合成プロゲステロンは実験ではアンドロゲン受容体に結合させることができる。どんなプロゲスチンもアンドロゲン受容体に結合する。勿論、受容体との関係はアンドロゲンに比べればせいぜい10%程度であるが、確かに結合する。実験では培養系にデソゲストレル、レボノルゲストレル、酢酸シプロテロン(抗アンドロゲンと言われている)を高用量1.5mg投与すると、酢酸シプロテロンは確かにアンドロゲン活性をさほど示さなかったが、デソゲストレルはレボノルゲストレルを初め実験に用いた合成プロゲスチンの中で一番強いアンドロゲン活性を示した(アンドロゲンにに比べれば断然弱いが)。一方、ホルモンに含まれている用量よりも少し少ない濃度では酢酸シプロテロンが一番強いアンドロゲン活性を示した。つまり、経口投与するレベルでは通常抗アンドロゲン活性を示すとされるプロゲスチンが一番強いアンドロゲン活性を持っていた事になる。なお、この低用量ではレボノルゲストレルもデソゲストレルも同等に弱かった。受容体が反応した証拠は、アンドロゲン受容体と関連して合成されるグルクロニダーゼという酵素活性がどれだけ強まったかで測定される。
この酵素はグルクロン酸抱合されたステロイドホルモンを有効化する酵素で、これまで滅多にこのような報告は注目されてこなかった。
然し、受容体の親和性というものは、必ずしもその物質の効力の強さを反映しない事は既に知られている。然し、あまり受容体が活性化された結果として、産生された物質を測定するということは行われてこなかった。
非常に面白い結果であると思われる。
前に述べた事から、ダイアンのようなニキビ治療の適応をカナダで取得しているOCであっても酢酸シプロテロンを含んでいる事から、適応があるとしても、絶対的にニキビに効果があるとは限らない事が明らかになったといえる。ダイアンをネットで輸入してニキビ治療に効果があると期待しても、そうならない事は酢酸シプロテロン自身がアンドロゲン活性を助けてしまうという事実と一致する。
それから、ミレーナというレボノルゲストレルを子宮内で放出する避妊具が発売されて早1年が経過しようとしている。
しばしば子宮筋腫に効果があるかもしれないという期待を与えるが、過去の一連の研究から避妊システムから子宮内に放出されるホルモンは、支給筋に作用するには量的に不足であることが確認された。
子宮内膜に対しては洪水のようにプロゲスチンを浴びせるので、月経困難症には十二分な効果が期待されるが、物理的に筋肉にはあまり配分されないので、子宮筋に存在するプロゲステロン受容体を飽和するには全く不十分である、ということである。
それから、プロゲステロンには基本的にエストロゲンに対抗するという機能があるが、子宮筋層では状況によってはエストロゲンの働きを助けてしまう可能性も指摘されている。
故に更に状況が確認されるまでは、子宮筋腫に対してミレーナを用いる場合には十分な注意が必要である。
ジョージ・ウィリアムズという医学に進化論を応用している研究者を皆さんご存じないですか?
この人の研究テーマは、非常に面白いです。
細菌感染の多い地域で、ある部族の血液検査をしていた医師が、彼らが通常の正常範囲よりも血清鉄が低かったので、鉄剤で鉄を補充する治療を施した処、鉄剤を投与された人々に感染が一気に拡大し、投与されていなかった人はいつもの通りで、貧血と思って鉄剤を投与した結果、はるかに良くない事態を引き起こしてしまった。
その理由を調べてみると、細菌が投与された鉄剤を増殖活動に盛んに利用した為と判明した。その部族の血清鉄の低さは取り巻く細菌感染に対する対抗的変化で、自らの体内の蛋白質で鉄を吸着し、細菌に奪われないようにしていたのです。その地域の細菌は感染しても鉄が利用できないので、増殖もできない状況に置かれていたのに、好都合の鉄剤投与で爆発的に増えたという事でした。
その昔、抗生物質のない時期には、感染症には卵白を飲ませたらしいですが、それは卵白に鉄を結合する能力を持つラクトフェリンがあり、細菌の鉄利用を妨げる役割を果たしたからであるとか。勿論、大きな効果があった訳ではないでしょうが、その行動には理由があった、ということです。
科学的でない時代でも、適切な観察に基づき、理論的には意味のある対応を取ることができたというのが、人間の歴史ですね。
祖先の知恵は常に不合理な訳ではない、ということかな。

鉄と細菌の関係が普遍的であるということだから、適応的に鉄を下げている場合を見逃して鉄剤を投与しないように注意する必要がありますね。
ホルモン療法の世界では、エストロゲンの影響を調べる研究者がいるが、概して、その結論は一般的な臨床の現場から乖離していると言えるが、その乖離した結果に基づいて、薬剤の副作用を議論しており、どうも現実的でない状況になっている。
例えば、従来からエストロゲンは中性脂肪を高めるというけれど、結果は一貫していない。然し、今、信じられている所からすると、
?中性脂肪を増加させる
?HDLを上げる
?LDLを下げる

?について、殆ど全ての研究者は中性脂肪に関して完全に健康な女性を被験者として用いているので、中性脂肪が増えても、減っても全く基準値の範囲を出ない。このような変化で動脈硬化に関係するはずはないし、仮に増加が事実でも対象者として中性脂肪が300の女性を用いれば、その時点で既にリスクであり、320に増えてももはやリスクには影響しない。逆に多少低下しても依然として高値であるからリスクは変化しない。
何故、中性脂肪が増加すると良くないかというと、VLDLの増加につながり、そのVLDLは肝臓リパーゼの働きで、LDLに変わるが、依然として中性脂肪を多く含んでおり、再度リパーゼの働きで中性脂肪が除去される。その結果、通常のLDLより小型のLDLが作られ、それが血管壁に侵入し、酸化され、酸化LDLとなり、よりマクロファージに取り込まれやすくなる、と説明されている。

然し、?よりHDLを上げるとすれば、末梢組織からコレステロールを回収してくるパワーも増強するはずなので、簡単には血管壁に蓄積しないかもしれない。更にこのHDLを増加させるプロセスでは肝臓リパーゼの働きを弱める事と関係しているので、そもそも小型のLDLができにくいのではないか、と想像される。

また、?に関しては、LDL受容体を増やすので、肝臓内、細胞内への取り込みが促されるので、血中のLDLは減る。

結局、従来の説明を前提にするならば、???の力関係のような気もする。?の作用が強く現れるかどうかは、ホルモン療法開始時の中性脂肪濃度と関係してくるように思われる。

LDLコレステロールが酸化され易いとして、何が酸化されるのか?
LDL粒子には、コレステロールコレステロールエステル、中性脂肪とリポ蛋白質が含まれている。中性脂肪を構成する脂肪酸が多価不飽和脂肪酸であれば、確かに酸化を受けやすい。然し、中性脂肪には飽和脂肪酸を多く含むタイプもあり、その場合酸化を受けにくいような気もする。一方、摂取される脂肪酸の比率でn-3系脂肪酸を高めると、血中LDL粒子が減少する。ホルモン療法を受ける女性が、脂質代謝に注意した食事に取り組めば、エストロゲンの脂質代謝への微弱な影響は全く無効にできるように思われる。

誰もが統計的に有意なとか、顕著な差が認められたという表現を用いるが、差異としては僅かであり、食事への配慮一つで、WHI研究の結果は変わったように思われる。
こんな話題を見つけました。
男の話題等は探したくもないので、女性の話ばかりですが、月経周期の長さと中性脂肪のレベルに一定の関係があるかもしれない、という話です。
Rubba F,et.al.がNutrition Metabolism & Cardiovascular disease 18:659-663 2008で報告しているもので、5062人のイタリア人女性のコホートを対象に、20-50歳の女性で、月経周期を26日以下、27-29日、30日以上に区分し、21-26日では中性脂肪の平均値は106mg/dLで、27-29日では113 mg/dLそして30-31日では116 mg/dL。月経周期の長さが将来の循環器疾患の高リスクである可能性を指摘しています。
40-50年間安定した月経周期を有するサブグループ女性3823人を対象に分析した場合も同様の結果であった、と。

原著を読む機会を得ていないですが、その後の食生活を含むライフスタイルがどのようになるかで、いかに幅広い年代のコホートで分析したとしても、民族、コホートの違いにより同様の結果が得られるとは限らないし、仮にこの結果を受けて、生活改善を行えば、どの月経周期であれ、中性脂肪の分布に影響を与えるので、最終的な因果は全て変わらない事になるはず。

そもそも上記の月経周期による中性脂肪の分布の違いも十分に世間的な基準値の範囲内。到底、将来を予測できるものとは思えないのだが。
今日,日本内分泌学会で,新しい報告に接した.
生殖系を管理しているのは,脳の視床下部という部位であるが,そこにはキスペプチンニューロンが存在し,誰もが良く知っているゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)ニューロンにはキスペプチンの受容体が存在している.今回,更にキスペプチンニューロンは別のペプチドを生産し,そのペプチドもGnRHニューロンの上に受容体を有している.
つまり,キスペプチンニューロンはGnRHニューロンを二つの物質で管理している,ということ.その生物学的意義はまだ分かっていない.
生殖系に関わるホルモンや神経物質の関係は,まだまだ分からない要素があるということで,これまでの説明が大幅に変わる可能性もある.
先日,京都府立医大の教授と脳におけるエストロゲンに関する最新研究の状況について話をした.
ピルに関する話題に興味のある方々は,受容体という言葉を聞いた事があるかもしれない.
エストロゲンでも,プロゲステロンでも,インスリンでも,或いはホルモンではないけれど,LDLコレステロール等も細胞に受容体を持つ.ホルモンは受容体に結合し,その結果,ホルモン作用が発揮される.
エストロゲンは,その受容体に結合するが,エストロゲン受容体(ER)にはα,βという型があり,プロゲステロン受容体(PR)にはA型とB型とがある.
性ホルモン受容体は核内にあることが分かっており,例えばエストロゲンやプロゲステロンは細胞膜を通過し,更に核膜を通過し,核内の受容体に結合する.結合の仕方が変わっていて,まずエストロゲンが一つの受容体に結合する.更に別のエストロゲンが別のエストロゲン受容体に結合し,エストロゲンとエストロゲン受容体の複合体の二つが結合し,その塊がDNAに結合し,特定の遺伝子が活性化する.
これが性ステロイドホルモンの働き方である.
ERα+ERαは典型的な組み合わせで典型的なエストロゲン活性が発揮される.またERβ+ERβの場合もαと同じではないが別のエストロゲン活性を示す.然し,
ERα+ERβの組み合わせが起こった場合,エストロゲン活性は発揮されない.通常ERβはERαの働きを抑制する.
所が更なる組み合わせがある.ERにPRが組み合わさる事もある.例えば,ERα+PRAとかERα+PRB,このような組み合わせの生物学的な意義はよく分からないということであった.
つまり,エストロゲン活性だとか,プロゲステロン活性と言っても,受容体との関係は複雑.見た目では内膜が増殖して,定期的に剥離するといっても,その背後では受容体が複雑に躍動しているということになるのかな.
以前にも述べたことがあるかもしれないが,骨に直接・間接に関わるホルモンは極めて多い.
エストロゲンは確かに更年期に処方すれば骨密度の増加に寄与するが,20歳代の女性から卵巣をとれば,速やかに骨密度が低下するのは,ヒトのみならず,ラットでも観察されている.然し,正常な月経周期を維持している女性において具体的にエストロゲンがどのように骨密度を維持しているのか,必ずしも明らかではない.昨今の研究から,破骨細胞は,未熟な破骨細胞から成熟することで,骨を破壊できる力を得るが,この未熟から成熟への変身に寄与しているのが,RANK/RANKLシステムで,RANKとは未熟な破骨細胞に存在する受容体で,RANKLは骨芽細胞等に発現している物質で,RANKLがRANKに結合することで,成熟化が進む.エストロゲンは骨においてオステオプロテゲリン(OPG)という蛋白質合成を刺戟し,OPGはRANKに結合し,RANKLの働きを阻害する.その結果成熟化が進まず,破骨細胞の骨の破壊が結果的に鎮静化する.常時エストロゲンがOPGを作らせているので,大々的に破骨細胞が成熟することがないのだ,と説明される.
一方,エストロゲンの十分に分泌されている更年期における骨密度低下は,エストロゲンの存在によって予防することができず,これは下垂体から過剰に分泌され始めるFSHが破骨細胞を刺戟するからであると説明する仮説も提案されている.確かに,この説にも一理ある.
更年期には異常に高まるFSHが骨密度低下に寄与し,閉経後エストロゲンの低下はRANK/RANKL系を刺戟する一方,FSHは直接に破骨細胞の働きを増強する.つまり,閉経後はダブルパンチに見舞われるということだ.

で,私の思考実験は,閉経後の女性にGnRHを投与し,FSHを抑制することで,ダブルパンチの威力を弱めることができるのではないか.勿論,エストロゲンがないことによる骨密度低下を抑えられないが,ダブルパンチを避けられる.このダブルかシングルか,果たして骨密度の減り方に影響するだろうか.ラットでは,卵巣を摘出し,FSHの働きを抑制すると骨密度自体減少することがなかったという.
2010年3月20日
朝日新聞朝刊
”DNA誤情報で逮捕状 別人データ登録”
面白い記事ですが,以下のような記述がありました.
「型が一致する確率は,日本人で最も出現頻度の高い組み合わせでも4兆7千億人に一人とされる」
この記載は,機械的に配列を計算した結果ですが,そもそも日本人で出現頻度が高いと言いながら,世界人口を平気で超える確率を示すのはおかしくはないでしょうか.
出現頻度が高いということは一人ではないことを意味しているように思うし,実際アメリカのFBIにおける捜査でも,例えば犯罪現場に残された皮膚から採取されたDNA配列があるとして,たまたまある人から採取された組織のDNAがその一致を示したとして,その人がその配列の持主であるとは決められないそうです.
またFBIは中々情報公開しないそうですが,データの登録ミスは稀ではないらしい.
配列が一致しても,その他の証拠が一致した人間で有る可能性を立証しないと容疑者にすることも慎重でなければならないとされています.実際,その場にいない事もありうるし,そこに痕跡を残したのは数日前かもしれない.遺伝子痕跡は数日前か当日かを識別しない.

いずれにしても,地球人口を超える人間が分母に出てくるということは,どうしてもおかしな話で,分母は60数億の現在の地球人口を超えるべきでなないように思う.それでもおかしい. 
今日の朝日新聞の朝刊は,乳がん検診の話題が医療記事でも,広告記事でも取り上げられていました.広告記事(東芝の医療機器の宣伝でもある)では20歳代からの定期検診を勧め,医療記事では同じ検診を行うにしても,腫瘍発見率を競うべきではなくて,死亡率を下げるかどうかがポイントである,と.

そういえば,日本メディカルライター協会を初め,多くのNPOが患者になりうる大衆が少しでも自ら適切な情報検索が行えるように講習を展開していますが,その手の訓練を行えば,こうした話題に対応できるかもしれない.

そこで,PubMedを検索して見ると,ここで見つけた論文記事は,後日論文紹介でも取り上げますが,例えば,
Broderson Jら,2010年,Pol Arch Med Wewn 120(3):89-94では,自己検診は死亡率の低下には寄与せず,むしろ疑わしい何かが見つかり生検を行う事になり,然し,それの大部分は問題なしと判断される,と.
そして超音波画像診断も死亡率に関してはまだ有効性は明らかではなく,マンモグラフィーは絶対的により良いのかということも明らかではない,と結論している.

次にデンマークで行われたスクリーニングが実施されている地域と実施されていない地域とで,年齢などの背景を調整して,乳がん死亡率に及ぼす効果を調べている.それによれば,55-74歳の女性群ではスクリーニングによる低下効果は1年あたり1%程度で,非スクリーニング地域ではむしろ2%の低下効果.35-55歳ではスクリーニング地域では1年に5%の低下効果,非スクリーニング地域では6%の低下効果.著者はこれまでのデンマークでのスクリーニングプログラムは顕著な死亡率低下を実現することはできていない,としている.
従来の研究に関する体系的レビューではマンモグラフィーは15-16%死亡率を低下すると示されている.この研究は,この総説の結論を確認することであったと言える.因みにコペンハーゲンでの50-69歳の組織的なマンモグラフィースクリーニングは1991年4月1日に始まったらしい.この論文ではプログラムの具体的な内容には触れていないように思う.全てを呼んでいないので,書かれているかもしれないが,ともあれ,著者は適切なプログラムでないことを強調している.

この最近の論文から読み取れるように,検診による死亡率低下ということは,実際には多くの国で達成されていないのかもしれない.ある本では男性の前立腺がんに関しては早期発見できても有効な治療法がある訳ではないので,死亡率自体は下がらない,のだと書いてる.難しい問題ですね.
厚生労働省に薬に関する安全性情報を発信している処がある.このネーミングに関して,”危険性情報”とすべきではないか,という意見を出されている人がいる.安全性か危険性か,改めてこの言葉の意味を考えてしまった.

英語でも日本語でも安全の意味は,危険でないことというニュアンスになっているが,危険の意味は安全でない事,ではない.つまり安全という意味は,危険という認識の上になりたつ概念で,薬の安全性と危険性は同じように感じるが,危険性という言葉の方が問題を直視した姿勢を打ち出しており,危険という言葉は嫌なものだが,確かに危険性情報の方が正しいように思えてきた.薬は効果があるのは当然であるから,発信される情報は副作用か危険性でしかない.

一方,日本語の危険は,英語のriskとdanger両方を含んでいる.
hazardはまた別の意味である.
hazardは危害そのもので,riskの本来の意味は,イタリア語で勇気を持って試す,ということであるらしい.つまり,可能性の高い危害が存在することを覚悟の上で可能性の低い利益を求める行為,それをriskと言ったらしい.正にtake a riskである.
今日,Oxford英語辞典で調べると,riskは将来のある時に悪い事が起こる可能性,とある.悪い事であるから,死,癌,交通事故,株の大暴落,借金何でも含まれる.一方,dangerは,より限定されたもので,人を傷つけるか殺す,或いは物を壊す事になる要因が起こる可能性,と説明されている.
riskとdangerは視点が異なる言葉であった.
癌を引き起こす要因がhazardであり,将来のある時期に癌になる可能性がriskで,hazardに遭遇する可能性がdangerなのだ.

こうしたrisk概念に基づいて考えると,経口避妊薬の場合,避妊という利益は小さな可能性ではなく,100%に近い可能性を示しているのに対して,ピルをhazardとして起こる悪い事の発生する可能性は,いずれを取っても0.1%を超えない.多くは0.01%以下だ.とすると,ピルを飲む行為は全くリスクを取るものではない.
これほど明瞭な構造を持った薬剤は存在しない.
抗生物質で効果がない可能性の方が高いし,スタチンのような薬剤で心疾患を免れる可能性は全く低い.このように比較すると,ピルはその目的を理解している限り,常に利益がリスクを上回る事になる.勿論,日本では選択肢は多くないが,世界であれば,様々なホルモン避妊法が存在し,ますますそのリスクは更に小さくなる事は明らかだ.
最近、分からなくなってきた。
コレステロールと高血圧で薬を飲むなとか、コレステロールの誤った情報に振り回されるな、と。
然し、一方、漠然とLDLは心疾患のリスク因子である、と書かれ、HDLは助けにならない、という解説をされる先生もいる。
普通サイズのLDLは悪玉ではなく、小型LDLが悪玉だ、と解説される先生がいる。
コレステロール研究の結果は、未だに心疾患の要因であるとしても、結論が出ていない、と熱く語られる医師や研究者が少なからずいる。
実際の人数は分からないが、多くの医師や研究者は、コレステロールや中性脂肪は循環器疾患のリスク因子である、という解説を随所で行っているし、私が勤務している会社でもそうだ。私の勤務している会社でもコレステロールを下げる薬で社員の給料が払われている(笑)。
然し、コレステロールに書かれている本を読むと、危険因子であると解説する本よりも、危険因子説を批判する本の方が科学的に見えてしまう。
どちらが科学的に真実なのだろうか?

温暖化議論も同じようなものだ。
温暖化傾向を認めない研究者とそれに反対する研究者。
人間の産業活動がリスク因子であるとする研究者と否定的な研究者群。

プラスチックの再生は資源の節約になっていない、という研究者がいる。答えはあるのか、ないのか。
答えは一つなのか、そうでないのか。
先日,夜帰宅途中で,明らかに猫とは異なる胴長の動物を見た.互いに目が合い,彼はそそくさと,横断歩道を車を警戒しながら渡り,茂みに消えていった.記憶を再現して,恐らく彼はハクビシンであったに違いないと思うが,都内に結構生息しているらしい.既にハクビシン駆除専門業者がいるらしいが,どうも駆除業者は好きになれない.過去に馴染みの野良ネコと野良イヌを駆除されて以来,彼らが嫌いになってしまった.
ウクライナを旅した時,人が集まる所には,常に野良イヌを初め,野良ネコが集まり,更に樹木には野生のリスが集まってくる.彼らにとっては人間も環境の背景の一部らしい.こちらを気にする事無く,縄張り争いを展開し,カフェでは好みのテーブルの下で和んでいる.人間の方も彼らを気にすることなく同じテーブルの上でコーヒーを飲んでいる.
この大らかさは実に愛すべき風景である.

先日,電車の中を紛れ込んだアオスジアゲハが出るに出れず飛び回っていたが,誰一人として外に出してやろうと行動に出ない.混んでいるから私も動けず,私の腕に止まってくれる事を期待していたら,ついに私の腕で一休みしたので,捕獲して,電車の外に出す事ができた.

蛾は誰もが嫌悪感を持つが,蝶々までが毛嫌いされるとは思わなかった.というか,昆虫が嫌いな人が多くなったような気がする.

生まれた頃に比較すると,明らかに身辺から多くの生き物が消えていった.ある意味,寂しいものを感じる.ネズミがいてもイタチが復活すれば,均衡が取れるのだが.因みにハクビシンなどはネズミを食べてくれそうな気がするが,好物は果物らしい.何とか共存したいものだが.
かつてどこかで触れた話ですが,人差し指と薬指の長さの比率で,男女の社会学的特性を分析した研究が注目され,二本指の法則というような形で書店などで売られました.
OCとの関係を論じた報告もあり,取り上げたのですが,この初期の報告は様々に引用されたのですが,結果を再検討した二つの報告では二本指の法則を再現できなかったそうです.つまり,社会的特性に関して指の比率が何らかの指標になるという初期の結果を追試できなかったのです.
初期の報告では現在の血中ホルモン濃度ではなく,胎児期のホルモン濃度が影響するという考察で,追試を行った結果の一つは現在のホルモン濃度を検討対象にしており,初期の報告の純粋な意味での追試ではないと思われました.
初期の報告でも胎児期のホルモン濃度が影響しているかもしれないというのは,あくまで仮説であり,この仮説が立証されない限り,最初の考察の論点は解決されないのですが,少なくとも統計的には指の比率が社会的特性と何らかの関係があるという結論は支持されなかったということです.
OCにおいて,何故成分としてのレボノルゲストレルがヨーロッパのみならずアメリカで標準的なプロゲスチンとして評価されているのか.正直分かりません.
また,血栓症のリスクにプロゲスチンの特性が本当に関与しているのかどうか.
エストロゲン成分が血栓症リスクの主役であるとされた過去の議論の真偽も実は明らかではありません.
エストロゲンが凝固線溶系の主要な因子である蛋白質の遺伝子を活性化することは,多くの基礎研究で明らかで,この点に関しては個人差も少なく,OCを服用している女性の凝固系蛋白質を測定すれば,多くの場合で活性化されていると思うのですが,血栓症を起こす人は確かにごく僅かです.妊娠及び出産に伴う血栓症でも背景に凝固線溶系蛋白質の活性化が存在しますが,OCより高率ですが,やはり実際に血栓症を起こす人の比率は稀の範疇にはいると思います.
これらの蛋白質は肝臓で作られるので,肝臓にエストロゲンの作用点であるエストロゲン受容体が存在する事は既に細胞学的に確証されていますが,プロゲスチンが介入するとしても,肝臓でのプロゲステロン受容体の存在自体がまだ確証を得ていません.プロゲスチンの作用点がそこにあるかどうか不明です.一方,プロゲスチンだけのミニピルでは血栓症リスクは殆ど議論されていないし,存在する僅かな疫学研究でも血栓症のリスクはないようです.やはり,引き金はエストロゲンですが,両者の相互作用が存在する事も間違いなさそうです.
そうすると,天然のプロゲステロンではどうか,という事です.
世間では内因性のホルモンであれば,間違いなく安全であると思いがちですが,それは卵巣から分泌されていればの話で,我々の身体は内因性のホルモンを経口或いは経皮投与されることは計算に入っていないので,安全とは限りません.十分な数での疫学研究を行った上で,プロゲステロンの特性を明らかにし,その上でプロゲスチンが何か特別であるかどうかを判断する必要があります.
もう一つの因子は,女性におけるアンドロゲンの役割です.性ホルモンとして,多くの有益な働きをしていますが,ニキビ,多毛等,PCOSでもですが,悪い側面しか注目されていません.やはり研究に抜けがあります.個人的には,血栓症でもアンドロゲンは何か関与しているはず.そしてもしかすると,それは低用量では血管内皮の安定性に関係しているかもしれない,という可能性です.反対の結果も多いですが,実験ではしばしば多量を用いるので,生理条件を反映しているとは言えません.

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