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2024年04月18日00:02

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一番の人間失格は作者

『斜陽』『走れメロス』『人間失格』など
数多くの名作を世に送り出した文豪と言えば、言わずと知れた【太宰治】ですが、
その私生活は一言で言うと
『ダメ男のチャンピオンとして文壇に君臨した』と言っても過言ではないんですね。


その象徴的なエピソードとしては、
第三回の芥川賞の選考が行われる前に太宰治は、
審査員を務めていた川端康成にすがりついて、
推奨してもらうように頼み込んだという話が挙げられますね。


『何卒私に与へてください。一点の駆引ございませぬ』とか
『困難の一年でございました。死なずに生きとほして来たことだけでもほめて下さい』
などと書いた手紙を川端康成に送りつけたわけですが、よりによって川端康成宛てに、
よくこんな手紙を送ったものだと言われちゃってるんですね。


というのもこの二人は、
それより一年前に、かなり激しいやり取りをしていたからなんですね。
記念すべき第一回の芥川賞の選考が行われた時、
デビューしたばかりの太宰治の作品が候補となったんですね。


当時の太宰治はパビナール中毒に悩み、薬代が嵩んで借金まで抱えていたので、
彼は作家としての名誉はもちろんですが、芥川賞に贈られる五百円の賞金が、
喉から手が出るほど欲しかったんですね。


しかし惜しくも受賞は叶いませんでした。
それは審査員全員の意向に基づいた結果なんですが、川端康成は彼の才能を認めつつも
『目下の生活に厭な雲がある』と厳しく批判したんですね。
それを受けて太宰は、震えながらペンを握って猛烈に反論したんですね。


『小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。
刺す。そうも思った。大悪党だと思った。
そのうちに、ふとあなたの私に対するネルリのような、
ひねこびた熱い強烈な愛情をずっと奥底に感じた。
ちがう。ちがうと首をふったが、その、冷く装うてはいるが、
ドストエフスキイふうのはげしく錯乱したあなたの愛情が私のからだをかっかっとほてらせた。
そうして、それはあなたにはなんにも気づかぬことだ。
私はいま、あなたと智慧くらべをしようとしているのではありません。
私は、あなたのあの文章の中に「世間」を感じ、
「金銭関係」のせつなさを嗅いだ。
私はそれを二三のひたむきな読者に知らせたいだけなのです。
それは知らせなければならないことです。
私たちは、もうそろそろ、にんじゅうの徳の美しさは疑いはじめているのだ』


【川端康成へ】と題されたこの文章は、太宰治の人柄をよく表していて、
自己中もここまでくると芸術の域に達してる気がしますね。


ただの愚痴といえば確かにそうなんですが、
文体からは素人に真似できないリズム感と瑞々しさが醸し出されており、
読んでいてとにかく楽しいと感じさせるところが文豪たる所以なんでしょうね。


微笑亭さん太
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