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2022年06月23日09:37

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ラピュタ阿佐ヶ谷の新東宝特集のパンフレットはお買得です。サイコパスに逃げた「アオラレ」、節度を守った「空白」。

 6月18日(土)に昨年の令和3年5月公開「明日の食卓」を観る。

「明日の食卓」(瀬々敬久)
東京・大阪・静岡と住む場所も家庭環境も全く異なるが、小3の石橋ユウなる同姓同名の息子を育てている菅野美穂・高畑充希・尾野真千子 (共に個性を活かし好演)の3人の母親の子育て記が、交互に綴られていく。些細な家族の感情の行き違いが縺れ、いずれの母も息子殺しにまで至りかねない憎悪に至るという後味の良い話ではないが、それでも親子の絆を信じ、生きていくしかないとの、瀬々敬久らしいポジティブ精神で納めるのは心地良い。ただ、夫婦の収入の簡単な逆転・バツイチのシングルマザーの奮闘が子に与えた想定外の影響・いい夫婦や親子を演じようとした結果の子供へのトラウマ・陰湿な現代のイジメ構造etc、私のこの頃の子育て時代を思い返すと、ほとんどのキーワードが時代劇(私の方が時代劇的存在なのだが)としか思えない。すべての題材が自分に近い必要はないが、アナロジーの範疇で感動したり考えさせられたりする訳で、私にとってはそこをかなり逸脱していた。家族を描いたといえば小津映画だが、題材的にこれこそ時代劇にも関わらず、感動する若者が少なくないという。彼等にとっての小津ワールドは、アナロジーの範疇なのだろうか。(まあまあ)

 マイミク中村勝則さん編集の「アウトサイダーのまなざし」を、御厚意で送っていただいた。ラピュタ阿佐ヶ谷で開催中の「〜国映/新東宝ピンク映画60年記念特別上映会〜Vol.1」のパンフレットである。今回は全16作品上映だが、私は9本が鑑賞済だった。

 フィルム上映の新東宝特集パンフレットは、過去に何シリーズも発行されているので、今さら言うまでもないが、的確な作品解説・データ性などの充実度は今回も変わらない。また、巻末の対談「産業としてのピンク映画」「滝田組同窓会2」は、歴史的資料として価値がある。映画の手引きとして絶好なので、お買得な1冊である。特集は8月22日(月)まで開催中なので、お手に取ってどうぞ。

 6月19日(日)に昨年の2021年5月公開「アオラレ」を観る。

「アオラレ」(デリック・ポルテ)
題名ズバリの世間で話題を賑わせているあおり運転が題材だ。クラクションを激しく鳴らし、窘められたが謝らなかったことをキッカケに、執拗な追跡を受ける破目になるのだが、こういうのはスピルバーグの大傑作「激突!」のようにちょっとした日常性の逸脱の怖さがキモである。ところが、この映画ではそれをサイコパスの殺人淫楽症に設定してしまった。とってつけたように、主人公の動機を社会からの疎外感に置いたりしているが、なんでもサイコパスで済ますのは、ホントもういい加減にしてほしい。この役をラッセル・クロウがいとも楽し気に演じていること、個人情報に溢れたスマホを盗まれてしまうと人をいくらでも追い込めるということ、などを巧みに駆使して、それなりにサスペンスフルではあった。(まあまあ)

 6月21日(火)に昨年令和3年9月公開のキネ旬日本映画第7位「空白」を観る。

「空白」(吉田恵輔)
離婚して中学生の娘を男手一つで育てているちょっと粗暴な漁師の古田新太。内気で人付き合い下手だが父の突然の死でスーパーを継ぐ破目になった松崎桃李、おせっかいで善意の塊のようなそこの従業員で中年独身女の寺島しのぶ、3人共にやや周囲から浮いてはいるが、世間でよくある人間の範囲だ。ところが中学生の娘が万引きでスーパー店長に追われ、ハズミで交通事故死したことから、すべての歯車が狂気へと転がっていく。それを拡大助長させていくのが、マスコミのストーリー主義のでっち上げであり、イジメに対する学校側の事なかれ主義だ。ただ、事態はエスカレートしても、誰もが紙一重でサイコパスの方向にまで走らないのが、この映画の見識だろう。時を経過しても赦しや人間回復の修復には決して至らないので、後味が良くはない。でも、新しい命の誕生とか、微妙な各自の心境の変化にみる「時間という名の魔術師」への期待が、私の人生観・社会観にはピッタリだった。吉田恵輔作品は、「ヒメアノ〜ル」のような全く出口の無い映画が時にあるのだが、今回はそこにまで至らずホッとした。主要人物3人の狂気一歩手前で、有りうる実在感を感じさせた演出・演技は見事だ。(よかった)

 前回日記以後の自宅観賞映画は次の7本。

「アウト・フォー・ジャスティス」「明日の食卓」「ワールドエンド」「アオラレ」
「プリズン・ランペイジ」「ライリー・ノース 復讐の女神」「空白」

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