昔から設置が希望されている新駅のお話です。
ＪＲ宇都宮線(東北本線)は，関東平野のほぼ中央に位置する茨城県古河市を通っており，市内北部には古河駅があります。｢古河行き｣という列車もあるので，古河市に行ったことの無い方でも古河駅の存在はよくご存じでしょう。宇都宮線の駅で茨城県内に所在するのは古河駅だけで，東京方面から北に向けて列車に乗ると栗橋駅(埼玉県久喜市)・古河駅(茨城県古河市)・野木駅(栃木県野木町)と３駅連続で県が変わることで，鉄道ファンの間ではよく知られています。
その古河駅が所在するのは先述のとおり市内の北部で，古河駅と南隣の栗橋駅とは7.5kmという異例の長い駅間(なお，古河〜野木間は4.7km)になっていることもあり，昔から両駅間に｢南古河駅｣の設置を求める声がありました。1955(昭和30)年に古河市と合併した旧新郷村においても既に新駅設置を求める声があったときいていますから，その設置希望は少なくとも70年にもわたる歴史があるのだと言えるでしょう。
またそれとは別に，東北新幹線についても古河市内に駅を設けてほしいという要望があります。同新幹線は茨城県古河市・五霞町を通っておりますがいずれも駅は無く，茨城県は全国で唯一｢新幹線が通っているのに駅の無い｣都道府県になっています。こちらについても新駅を設けてほしいという要望が以前からありますが，こちらについては同様の希望を埼玉県久喜市も掲げていて，古河市の要望はあまり具体的なものになってはおりません。
僕は以前から宇都宮線の南古河駅には大きな期待を持っていました。この辺りは坂間工業団地があって工場も集積しており，また最近では住宅開発が進んでいる上に茨城県立古河第三高校なども近いので，駅があると非常に便利です。古河市の市街地は市の北部に偏っていますが，新駅が出来れば間違い無くこの地域は大きく発展することでしょう。更に言えばこの南古河駅建設予定地は古河市を代表する観光拠点である古河総合公園にも近く，設置のメリットは計り知れません。
しかし現状では，新駅設置は全く進展していません。地元からの希望で設置してもらう駅を｢請願駅｣といいますが，そうした請願駅の設置費用は用地取得費を含めて地元が全額負担することとなっています。2017(平成29)年の古河市の試算では南古河駅の設置には106億2000万円を要するとされています。古河駅はそれなりに大きな市(面積123.58k�屐た邑�約14万人)とはいえ，これほどの額はおいそれと出せるものではありません。また周辺整備と用地確保のために｢大堤南部土地区画整理事業｣を行う予定で既に都市計画決定も既に為されていますが，一部地権者の反対でこの区画整理はまだ着手されていません。
なかなか手づまりな様子で，このままでは南古河駅の設置はなかなか進まないに違い無いと感じざるを得ません。一体どのようにすれば良いのでしょうか。僕としては｢新幹線駅の設置は取り下げて，南古河駅設置に注力する｣｢茨城県が積極的に関与する｣｢近隣の自治体にも協力を呼び掛ける｣といったことが求められるのではないかと考えます。
まず新幹線駅ですが，仮に設置しても古河市内では宇都宮線と連絡しない単独駅にしかなりません。無論，新幹線という｢飛び道具｣があれば大宮方面への所要時間は大幅に短縮するでしょうが，鉄道をネットワークとして機能させるという点ではあまり優れた駅にはならないでしょう。そんな駅を作ることよりも，宇都宮線の南古河駅のみに注力するのが賢明ではないでしょうか。因みに久喜市のほうはどうかといえば，こちらは在来線駅のすぐ近くを新幹線が走っていますが，久喜〜大宮間は宇都宮線でも20分少々しかかからず，新幹線を利用する意味は大きくないと考えます。東北新幹線の新駅は，同じ久喜市内でも久喜駅付近ではなく東武鉄道日光線の南栗橋駅付近に設けるのが最適だと僕は考えておりますが，これはまた古河市内の駅とは別の話になるので機会を改めて論じたいと思います。
また，有益なプロジェクトについて市町村の手に余る場合，広域自治体である県が行う或いは協力するというのは別に不思議な話ではありません。実際，茨城県内では市町村の道路整備において多額の費用と高度な専門的知識を要するトンネル工事については県が権限代行して実施している例が幾つも存在します。南古河駅というのは茨城県が進めている｢筑西幹線道路｣(北関東自動車道の桜川筑西ＩＣと古河市とを結ぶ地域高規格道路)の終点になることが予定されており，協力を行うことは決して不思議な話とは言えません。無論，県が乗り出したからといって｢大堤南部土地区画整理事業｣に反対する地権者が賛成に転ずることは無いでしょうが，道路用地見合いの土地を単純買収するといった方法で事業を推進することは可能です。更に言えば仮に区画整理事業を県営に改め，事業を強力に推進すると同時に，県自らが新拠点の整備に力を入れ投下資本を回収するなどといったことも視野に入れても良いのではないか。東京や大宮に近い古河での事業であれば，不動産が売れず塩漬けになるなどということにはならないでしょう。
更に，南古河駅について｢近隣自治体に協力を呼び掛ける｣ことも必要でしょう。古河市の東隣の境町からは古河駅までのバスが既に走っていますが，境町からは南古河駅のほうが距離的に近くなります。また古河市の西隣は埼玉県加須市(旧・北川辺町)，更に西に行くと群馬県板倉町です。現在は北川辺や板倉から古河に向かって走るバスはありませんし，仮に走らせても古河駅のある市街地は道路も狭く渋滞に巻き込まれかねませんが，南古河駅のほうにならば上手に交通規制を行い信号機の調整を行う等の方法で，定時性の高いバス路線を設けることも不可能ではないでしょう。幸いなことに古河市と加須市・板倉町(及び栃木県野木町)は｢関東どまんなかサミット会議｣という連絡協議会を設け，長年にわたって地域の課題に協力して取り組んできたという過去があります。境〜古河間のバスに南古河駅を経由させることや｢板倉〜北川辺〜南古河駅｣というバス路線の設置を提唱するいった方法で境町・加須市・板倉町といった近隣自治体にも南古河駅の必要性・重要性をより強くアピールし連携して新駅設置の機運を高めていくことも可能になるのではないか。
南古河駅の設置は古河市のみならずこの地域の発展には極めて重要であると僕は考えています。上記の方策の採用などを含め，様々な方策を組み合わせることで是非とも早期に実現を図って欲しい。僕はそのように願っています。
茨城県古河市「南古河駅」JR東日本に要望 宇都宮線の新駅、構想から40年
https://news.railway-pressnet.com/archives/39354
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