ここは、いろいろランド。
たくさんの色が暮らしている国です。
クレヨンや色鉛筆や絵の具が仲良く暮らしています。
いろいろランドの住人の仕事は、様々なものに色を塗ることでした。
ある日、神様がいろいろランドにお願いに来ました。
「今度、新しい国を作ることにしたんじゃ。空を作って、それに色をつけたいから、誰か色を貸してくれないかな?」
いろいろランドの掲示板に、【新しい国の空の色を募集】と、貼り出されました。
「空の色はまだやったことがないね!みんなでやってみようか!」
「楽しそうだね!やってみよう!」
クレヨン組の12兄弟は、盛り上がりました。
12兄弟は、赤、オレンジ、黄色、緑、青、水色、藍色、紫、ピンク、白、灰色、黒です。
「神様、僕たち、空に色をつけたいです!」
クレヨン組の12兄弟は神様に伝えました。
「ありがとう。じゃあ一緒に新しい国に行ってくれるかな?」
「はい!行きます!!楽しみです!!!」
「新しい国は、いろいろランドから南に30km。みんなで空を飛んでいこう。」
「はーい。」
12兄弟は大地を蹴り、神様からはぐれないように、真っ直ぐついていきます。
どこまでもどこまでも飛んでいくと、そこに辿りつきました。
「ここはまだ作ったばかりの国だから、何もないのじゃ。少しずつ揃えていきたいが、まずは空を描いてほしい。」
「どんな空がいいですか?」
「空はみんなの心じゃ。喜んだり、怒ったり、哀しかったり、楽しかったり、色んな空があるといいな。」
「空は一つだけじゃないのですか?」
「いろいろな空があったら、面白いじゃろ?仲良くみんなで、空を描いてごらん。」
「はーい。分かりました!」
「じゃあ、任せたよ。よろしくね。」
神様は一足先に帰っていきました。
新しい国は作ったばかりだから、神様は大忙しです。
「空は……まずは晴れを作ろうか。」
「賛成〜!」
赤くんはピューッと高く飛び上がり、グルグルと大きな丸を描きます。
太陽です。
白ちゃんは踊るような動きを繰り返します。
雲です。
水色ちゃんはひたすらに塗りつぶしました。
青い空が広がりました。
「次は曇りを作ろう!」
赤くんと青くんは休憩。
灰色くんが白ちゃんの隣まで、ピューッと飛び上がります。
「曇りは僕達の出番だね!」
白ちゃんと灰色くんは何度も繰り返し、行ったり来たり。
あっという間に大きな大きな雲の出来上がり。
「あとは、えーっと、雨と夜を作らなきゃ。まずは雨から?」
「雨だと、また雲を作らなきゃいけないから、ちょっと休憩したいな。」
白ちゃんはさっきから動いてばかりで、息が上がります。
「じゃあ、次は夜空を作ろうか。」
「賛成〜。」
白ちゃんと灰色くんとバトンタッチで、今度は黒くんと黄色ちゃんが飛び上がります。
「私は真ん丸お月様を描くわ。」
張り切って、黄色ちゃんはグルグルグルグル回ります。
赤くんの動きを真似するようにグルグル回ります。
大きな満月の完成です。
「じゃあ、僕は夜を塗るね。」
黒くんは行ったり来たりの大忙し。
塗り残しがあったら大変ですものね。
「私は月が終わったから、お星様を描くわ。」
「流れ星も描いたら?」
「素敵!流れ星も描くわ。」
黄色ちゃんは今度はたくさんの星を描きます。
流れ星を描くたびに、他の兄弟から拍手が聞こえます。
だけど、笑顔の兄弟と、少しつまらなそうな兄弟がいます。
せっかく来たのに、出番がない紫ちゃんとピンクちゃんとオレンジちゃんと緑くん、それに青くんと藍色ちゃんです。
「空の色だと、私は出番がないわ。」と紫ちゃん。
「お花の色なら、私達は大活躍なのにね。」とピンクちゃん。
「俺も俺も。俺の色がないと、葉っぱや茎はつまらなく見えるよ。」と緑くん。
「私も今日は暇だなぁ。」とオレンジちゃん。
「オレンジちゃんは、夕日を描かないと。」と、紫ちゃん。
「そうだそうだ、忘れてたわ。」とオレンジちゃん。
「私達も何か、描きたいな〜。色塗りたいわ。」
ため息をつく色達に、青君と藍色ちゃんが提案します。
「今から私達が雨を描くから、傘を描いてくれない?」
「みんな濡れちゃうわ。」
「賛成〜!」
「じゃあまずは濡れないように、雨雲と傘を描きましょう!」
白ちゃんと灰色くんはとにかく激しく動き、雨雲をどんどん描いていきます。
どんよりした雨雲です。
「黒くん、傘を描いて。紫ちゃん、ピンクちゃん、緑くん、素敵な柄を描いて。」
「任せておいて。」
黒くんが張り切って大きな傘を描きました。
そこに紫ちゃん、ピンクちゃん、緑くんはたくさんの花畑を描きました。
花の絵や色は、三兄弟の得意技です。
「キレイな傘だね!」
他の兄弟に褒められて、三兄弟はにっこり笑顔。
青くん、水色ちゃん、藍ちゃんが雨粒をどんどん描いていきます。
傘の下で雨宿りをしながら、他の兄弟は雨粒を見上げました。
四人が描いた大きな傘のお陰で、雨を描いている色以外は誰も濡れませんでした。
「寒い寒い。体が冷えちゃったよ〜。」
雨を描き終わった青くん達が戻ってきました。
「私に任せて。あったかい、大きな夕日を描くわ。」
先ほど描き終わった青い空から太陽を外し、オレンジちゃんはグルグルグルグル回ります。
夕日が一面を照らしました。
夕日の光がポカポカあたたかくて、ずぶ濡れの青くん達は風邪を引かずにすみました。
「オレンジちゃん、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「あとは…描いていない空はあったかな?」
「神様の依頼は、喜ぶ空。怒る空。哀しい空。楽しい空、だったよね。」
「喜ぶ空は、晴れ。」
「うんうん。」
「怒る空?」
「あ!雷は?」
「黄色ちゃん、雨の空に雷を加えて描いて。」
「はーい。」
「哀しい空は、雨だよね。」
「うんうん。」
「楽しい空?」
「楽しい空ってなんだろう?」
「見上げたら、みんなが楽しくなる空。」
「楽しい色って何色?」
「さっき、花畑を見たら楽しい気持ちになったね。」
「明るい色かな?」
「みんなで手を繋いで空を飛んだら、楽しいんじゃない?」
「賛成〜!」
「俺達は下から見てるよ。」
そう言ったのは黒くん、灰色くん、水色ちゃん、白ちゃん。
「みんなで手を繋いで飛ぼうよ〜。」と他の兄弟。
「私達は今日たくさん空に色を塗ったわ。でもみんなはまだまだ塗りたりないでしょ?」
「下から見てるよ。みんなが空を飛んだら、どんな景色が見えるか。」
「分かった。じゃあ四兄弟は、下から俺達を見ていて。」
「分かった。」
「じゃあみんな行くよ!せーのっ!!」
赤くん、オレンジちゃん、黄色ちゃん、緑くん、青くん、藍ちゃん、紫ちゃん、ピンクちゃんは手を繋ぎ、一斉に高く高く飛び上がりました。
すると、空には大きな大きな虹が架かりました。
兄弟で力を合わせて描いた空は、とてもキレイでした。
END
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