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2020年04月07日11:51

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虹を掴む男

 
【5年前の今日、ここにアップした日記の再録、後半なんかいまの世相にも合ってると思います】

目下、『ニューヨーカー』誌で編集スタッフとしても活躍した、米国のユーモア作家・マンガ家、ジェイムズ・サーバーの 『私たちの時代の寓話 (Fables of Our Time)』 を読み中。
寓話やお伽噺のパロディって、いまではだれでもやるけど、これが書かれた1939年とか40年とかには、きっと斬新だったんだろうね。

試しに一つ、The Mouse Who Went to the Country ていう、イソップの逆転ネタを訳すと:

[田舎に行った都会のねずみ]

ある日曜日、都会のねずみが、田舎のねずみを訪ねようとした。
田舎のねずみが乗るようにといった列車に乗ったのだけど、それは日曜にはベディングトンに停まらなかった。
なので、都会のねずみは、ベディングトンでは降りられず、田舎のねずみと落ち合うことになっているシバーツ・ジャンクションへ向かうバスに、その駅で乗り換えることができなかった。
都会のねずみは、ミドルバーグまで連れて行かれて、そこで、もと来た方向に戻る列車を3時間待つことになった。
彼が、やっとベディングトンにたどりついたとき、ちょうど、シバーツ・ジャンクション行きの最終バスが出たところだった。
都会のねずみは走りに走って、バスに追いつき、首尾よくもぐりこんだ。 
ところが、そのバスはシバーツ・ジャンクション行きではなくて、ペルズ・ホロウとグラムを経由してウィンバリーというところへ行く、逆方向行きのバスだった。
終点でバスを降りた都会のねずみは、強い雨のなかに放り出され、そしてその晩はもうどこに行くバスもなかった。
「こんちくしょう」と都会のねずみはつぶやいて、町へ向かってとぼとぼと歩くのだった。

教訓: どこかへ行こうなんて思わないこと、おうちがいちばん。

  ***

戦前のユーモアってば、まあ、こんな感じね。

このサーバーの絵およびユーモアのセンスの影響を受けたのが、『おしゃべりなたまごやき』 の故長新太。
ちなみに、幼時に片目を失明したサーバーは、見えないほうの目で、いろんな不思議なものを見たんだそうです。 詳しくは、V・S・ラマチャンドランの 『脳の中の幽霊』 をどうぞ。

  ***

さて、”新寓話”をもうひとつ、今度は関西弁でテキトーに意訳して。 The Fairly Intelligent Fly ってお話です。 Here we go。

[そこそこおりこうさんのハエ]

大きなクモが、ハエをつかまえようと、宮殿みたいな、とてもきれいな巣を作っとった。
飛んできたハエは、あ、きれいなお家やな、ちょっと休んでいこう、と巣に下りて、たちまちねばねば糸にくっついて、クモの餌食になる、ちゅう、世間にようある話や。
ところが、ある日、そこそこおりこうさんのハエが飛んできて、巣のまわりをぶんぶん飛ぶんやけど、いっこうにとまろうとしよらへん。
辛抱たまらんようになったクモが、頭を出して、声をかけた。 「下りといでえな。 飛んでばかりやと、つかれるやろ?」
「遠慮しとくわ。 ほかのハエがおらへんところには、下りひんっちゅうのが、ぼくのポリシーなんや。」

それから、そのハエはあたりを飛びまわって、ええかげん疲れたところで、仲間のハエがたくさん集まってぶんぶんいうてる場所を見つけた。
ああ、あそこなら安心や、どれ一休みと、下りようとしかけたら、一匹のハチが通りかかって、親切に声をかけた。
「あほたれ! 下りたらあかん、あれはハエ取り紙やで。 あいつらはみんな、つかまってるんやで。」
「あほなこといわんといてや。 ほら、みんな、あんなに楽しそうに踊ってるやん!」
というわけで、そこそこおりこうさんのハエは、ハチのいうことを無視して、ハエ取り紙に下りて、ぺったんことくっついてしもうたんやって。

教訓: 赤信号、みんなで渡ればこわくない、はうそ。 
数は、安全性の保証にはならへんで。 ていうか世の中に、”ぜったい安全”の保証なんかないで。
はい、おっしゃるとおり・・・。

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