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2017年09月30日19:11

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もしかしたら「壊れた」のではないのかも?

機械安全の概念として「本質的安全設計」という概念がある。
一言で言うと、
「安全防護(ガード)や付加的保護装置などが必要ないように設計すること」
つまり、今回「壊れた」とされた安全装置に頼らなくても安全、という概念。

正直10数年前、この概念を聞いたときは、
「そんなの、大抵の機械で実現しようとしたら、肝心の機械を使う目的すら
 達成できなくなるんじゃないか?」と思ったもので、
実際社内向けに解説書や設計規程を書いた際も、
「100%は無理だから、次善の安全防護策を検討しましょう」と書いた覚えがある。

しかしながら、今回の件で思い当り改めて調べてみたところ、こういう解釈もありという事が判った。
http://brevis.exblog.jp/21589348/
つまり、安全防護策が機能しない状態では、機械自体が機能しないように設計する、でも本質的安全対策には迫れる、という事。

具体的に今回の事例に当てはめると、
「安全装置の正常な動作を確認できない限り、プレス機として機能しない」
みたいな設計も、本質的安全設計と見做せる。

残念ながらプレス機に作業者が挟まれる事故は、決して珍しいモノではない。
それはユーザーとして原則熟練者を想定する為、安全対策としては低位の「ユーザーへの注意喚起」で済ませるケースが多かったことに起因する。
それでは拙いと、エリアセンサーや両手押し起動(起動スイッチを両手操作にする事で
動作範囲内に作業者の手が無い事を確実にする方策)等、防護策も図るようになった。
それを推し進めれば、
「安全装置の正常な動作を確認できない限り、プレス機として機能しない」
事は容易に実現できるはず。

但しその手の方策は、やり方が拙劣だと使い勝手を悪化させる。
そして使い勝手の悪さは、より危険な状態を招き得る。
先の私が書いた解説書でも、
「安全防護策に頼るのは仕方が無いにしても、使い勝手を悪化させる対策は
 ユーザーにより解除される可能性が高い。
 故に、使い勝手に配慮するとともに、『容易に解除できない様』工夫する事」
とも書いた覚えがある。

正直、今回の事故機がどの程度の安全防護策を、どのような形で実装していたのかは
判らない。
使用者の熟練度頼みが基本の、申し訳程度の安全防護策だったのかもしれない。

しかしながら、仮に「使い勝手を悪化させる」類の防護策だったり、「安全防護策の正常動作が装置起動の必須条件」という設計であれば、使用者が意図的に解除した可能性、
つまり「壊れた」のではなく「壊した」可能性もあるかもしれない。




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■30代男性従業員、プレス機に挟まれ左腕切断 労働安全衛生法違反容疑で大阪府八尾市の金属加工業者を書類送検 大阪南労基署
(産経新聞 - 09月30日 14:37)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=3&from=diary&id=4791074

 危険防止措置を講じずに従業員に金属加工作業を行わせたとして、大阪南労働基準監督署は29日、労働安全衛生法違反の疑いで、大阪府八尾市の金属部品製造「天徳工業」と、同社社員でプレス班班長の男性(33)=大阪市=を書類送検した。

 送検容疑は、昨年10月20日午後3時半ごろ、大阪市平野区の同社工場で安全装置が壊れた状態のまま、男性従業員(36)=同市=にプレス機械で金属製のガードレール部材の打ち抜き作業を行わせたとしている。

 同労基署によると、平成27年11月に安全点検を実施し、安全装置が故障していることを把握しながら、そのまま放置していた。男性従業員は作業中にプレス機械に挟まれ、左腕を切断する重傷を負った。
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