mixiユーザー(id:64170)

2015年08月26日07:46

289 view

涙を流す巨大な亀


 柔らかくて、傷つきやすい内面の女性性をかばうために、亀の甲羅のような硬いかたい鎧を身につけてきたわたし……

 ぼくが河合隼雄さんとのセッションに通っていたのは、1985年から足掛け7年くらいです。で、気がつくと、いつの間にか自然消滅してしまっていました。なので河合さんと合意してセッションを終了し、二人でプロセスを振り返り、全体を眺め渡してみるという通常の手続きは踏みませんでした。なのでこれから少し自力で振り返りつつ、シェアできるかぎりやってみようかと思っています。

 セッションはカウンセリングというかただの会話、それから夢語り、それから箱庭の繰り返しでした。とりわけ箱庭になると、河合先生はただ箱庭の創作にそばで立ち会っているだけで、いっさいコメントもないし、解釈もありません。ときおり「ほぉ〜面白いのができましたね」という相槌が入ることがあるだけで、ほとんど空気のような存在でした。

 箱庭のセッションは、用具が必要なので、奈良の自宅ではなく、京大の研究室に通っていたのですが、初回は1986年の9月からでした。最初に河合さん宅を訪ねたのは1985年の2月でしたから、箱庭を開始するのに1年半ほどかかっています。この間、河合さんは別に箱庭を勧めるでもなく、ただ流れにまかせるだけで、あるとき、ぼくの方が作りたくなったので、お願いしたのがきっかけでした。ほんとうに河合さんはぼくのプロセスを大切にして付き添ってくださったと思います。

 解釈も分析もいっさいないままに、河合さんとのセッションは始まり、続き、そしてあるとき『さがしてごらんきみの牛』を生み出した後一度止まり、また再開されて、また止まり、そして再び始まり、こうしていつの間にか終わっていったのです。

 ぼくは生まれてきた箱庭を期間とモチーフに従って3つのシーズンに分けているのですが、今日、紹介する「青い目をした亀」の像は、88年の夏からスタートしたシーズン2に属している作品のひとつです。

 写真をごらんになっていただくとわかると思いますが、ここに描かれているのは「背中に緑の樹々をはやした巨大な亀……そのサファイアブルーの目から大粒の涙がこぼれています。亀の背中の森林のなかには、ひげをたくわえた東洋の老賢者の立ち姿」です
 
 これは河合先生に確かめたことがないのですが、どうして父からの非公式のいきなり電話を受け、即座にスケジュール過密の個人カウンセリングを空けて、ぼくを受け入れてくださったのか、、、、とにかく「すぐに来てください!」との返事だったと父は言っていました。

 もしかするとそれは、ひとつには、ぼくの姓が文珠であることと関係しているのかもしれないなと思っています……ちょうどぼくが初めて河合さん宅を訪れた頃は、河合さんは『明恵……夢を生きる』を執筆中、あるいは脱稿直後だったと思います。

 あの本の中には明恵上人が夢見た「亀姫」について触れられています……深い女性性の傷とその癒しについて、そしてそれが文珠菩薩との関連で書かれている箇所があるのです。
 
「魚のような獣のような生き物がひどく痛めつけられた姿で ぶらさげられているのを、姫だと思い、いとおしく感じて いたわる。」とあり、目覚めた時に明恵は、この姫を文殊菩薩だと感得しているのです。アニマ像が成長を遂げたあと、さらに深い層と接触を持つように なっても、まだ救われていない女性的存在があるいうことについてです。

 河合先生と初回セッションのおりに話したのもそのこと、深い深い涙……非情の悲しみについて……そしてその涙が凍りつき、凍結してしまったことについてでした。観世音菩薩へと転身する常泣菩薩の涙が凍結してしまい、身動きできなくなってしまった姿といってもよいかもしれません。

 OSHOにサニヤスダルシャンの席で語られた「完全な柔らかさ、薔薇の花のように傷つけられやすい、究極の女性的資質」という意味が含まれているモンジュという名前は、そのまま、明恵の『夢記』における「深いレベルで救われていない女性的存在」を表す亀のイメージへと通底してゆきます。

 けれども、一連の河合さんとのセッションで、この亀姫が浮上してきたのは、セッションが進み、かなり時間が経ってからのことでした。

 今はここに、ぼくもまた河合さんと同じように、コメントや解釈はいっさいつけづに「青い目からポロポロと涙を流す巨大な亀」の姿を公開したいと思います。亀の頭の上に、小さな白いネズミが載っているのも見逃さないで。
 
 では、どうぞ味わってみてください。


3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年08月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031