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2014年07月27日20:39

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不倫不倫物語、旦那弟のコドモを身ごもった女の巻。

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今日はヒドイ一日だった。完全に日曜日という美しい日がズタズタになってしまった。
そもそも、隅田川花火大会のゴミ散乱現場を見た瞬間、私の脳裏には映画「エクソシスト」のパズス像と対峙するメリン神父のシーンが浮かんでいた。
不吉な予感がしていた。
私は病気でお寺の仕事の大半から離れたとはいえ、檀家たちとのコミュニケーションが深いので、相談事や悩み事はいつでも聞くことにしている。
コドモの名付けや結婚の報告などはハートウォーミングなハナシなのだが、遺産相続を巡る遺族同士のケンカや嫁姑の争いといった類いは「みんな死ねー!」と一喝することにしている。しょーもないし、そんなモンにイチイチつきあってられないからだ。自分たちで始末がつけられないならコッチに持ち込んできたってしょうがない。だからてっとり早い解決方法として、全員速やかなる死を遂げるよう強くススメている。

で、今回は不倫の悩み事。真っ青なカオをした若夫婦が居間に通されていて、作務衣に着替えた私が出向いていくと、二人とも示し合わせたかのように視線を逸らした。

「実は不倫をしまして、身ごもりました」と若奥さん。旦那はだまったままである。
「不倫っ。やっちまったもんはしょうがないですな。それで産むおつもりですか?」と私。
「はい」と二人とも異口同音に返事。
「うん、コドモには罪はないですからね、堕ろす方にアタマを持っていかなかったのはイイことです。じゃあ、答えは出てるんじゃないですかね、デキちまったもんはしょうがない。旦那さんは旦那さんで産んだ後に自分のタネでしっかり作ればいいじゃないですか。一体何を悩んでおられるんですか?」
「実は、その、うちの母が産むのに大反対しておりまして・・・」と旦那さん。
「あー、あのお母さん?不倫も妊娠もバレてると?(そこで若奥さん、こっくり頷く)そいつはマズイですな。人一倍世間体を気にするあのお母さんじゃね・・・」
少し間を置いて、私がぽんと手を叩いて、私がお母さんを黙らせましょうと持ちかけようとしたまさにその時。
居間のフスマを乱暴に開けて入ってきたのがいた。
お母さんである。
いつ見てもチスイコウモリにコマチヘアのカツラを被せたような、世間一般を呪っていそうなカオである。この仏頂面で日本舞踊の先生をしているのだから、さぞかしお弟子さんたちも胃の痛い想いをしていることだろう。
続いて、カラダを必要以上にちっちゃく、丸めて入ってきた若者がいた。
旦那が「ヒロト・・・おまえ・・・あ、弟です」と紹介した。私は会釈して、座卓のコッチ側に座るよう促して、よしこさんに二人分のお茶の追加を頼んだ。
「ハナシは伺いました。お母さん、産むのに反対だそうで」と私が水を向けると、お母さんは座卓に身を乗り出すようにして「×××・・・!」と金切声をあげた。興奮のあまり何を言ってるのか分からない。それで落ち着くまで待って、新登場の弟くんに水を向けた。
「おたくは何でこの場に?」
「えっと、僕がその・・・不倫相手なんです・・・」と弟。
これにはさすがの私もへっ?と間抜けな声を漏らしてしまった。「つまり、実の兄弟でありながら、穴兄弟・・・」と口走ってしまって、それを聞いたお母さんはますますチスイコウモリのカオを吊り上げた。
「いやこれは失礼、でもこんなのを不倫などと仰々しく考える必要はないですな。いいですか、お母さんもキミ(弟)も。こちらのお二人は産むということで意見一致してるんですよ。何もかもワカッた上でね。その度量に免じて、君はそれなりのサポートをするべきだし、お母さんも世間体がどうとか口角泡を飛ばしてますけれど、だまってればいいだけのハナシでね。まあ、どこかのオヤジとデキたんじゃなく、不倫相手も息子さんというだけマシってことですよ」
「なんで、そんな・・・!さらっと言ってしまえるんですか、アナタは!」とお母さん。
「そりゃ他人事だからですよ。他人事だからこそ冷静に相談に乗れるわけでしてね、いいですか、お母さん、わざわざここまでやってきて私のクチから『よし、分かった。まことにけしからん、堕ろしなさい』と聞けることを期待しているとしたら、それはお母さんが単に自分の思い通りにしたいだけのことで、ハナッからウチに来る必要はないわけですよ。それだったら自分の味方をしてくれるバアさんたちをたくさん連れてきてギャーギャー責める方がいいでしょう?ま、それだとコトがアチコチに広まっちまうから無理なハナシなんですけどね・・・あきらめなさい、お母さん。こちらの三人はもうあんたのコドモじゃないんです。社会人なんです。オトナなんです。ちゃんと自分で責任とれるんです。そんな仏頂面してないで、昼メシ食いながらお孫さんの名前でも考えてみたらいかがですか?おーい、よしこさん、お品書き持ってきて」

誰も頼む気力がないようだったので、全員親子丼ということで注文した。

もちろん、親子丼にしたのは私なりの皮肉である。私はキレイに平らげて、ちょっと失礼とお手洗いに立った。用を足すと聞き耳をたてていた八重バーが「兄弟で嫁はんとセクロス(2ちゃんで覚えた)か・・・嫁はんは拒まなかったってことはやっぱりそういうことなんやろねぇー」と意見を述べてきた。私は「まあ、セックスってのは心にも重心がかかってきますからね。単純なことなんですよ、義弟とも関係を持つのってコーフンするじゃないですか。今回は避妊しなかったのがデカくツケが回ってきたってことで」と答えて、なるべくゆっくり歩いて戻っていった。

すると予想通り、お母さんが大声で泣きわめいていた。結局、修羅場のモトになるのは、自分の思い通りにしたい、そして出来ない人間なのである。

そして私の役目は若い人たち、旦那さん、若奥さん、弟くんのケアがメインだった。こんなのは不倫なんていわない。若さゆえの過ち、ただそれだけなのだ。重く考えるこたーない。そしてトドメの一言。「兄弟なら誰でもヤッている、もしくは妄想しているんだ。ギリシャ神話なんか堂々とヤッてるのばっかりだし」

泣き疲れてイッキに老け込んだお母さんのためにタクシーを手配し、みんな乗り込む前に、私は若奥さんをちょいちょい手招きして、囁き声で「どっちから誘った?」と聞いた。すると若奥さんはじっと私の目を見据えて「私です」と答えた。私はヒューッと息を鋭く吐き、「そういうことか。そういえばおたくの嫁姑のガチ喧嘩っぷりは有名だったもんな」と低く囁いた。若奥さんはニッと笑ってタクシーに乗り込んだ。

「女ってこえーな」私は汗をダラダラ流しながらもキモが冷える想いであった。結局私も利用されたということなのである。

私が気づいた若奥さんのほんとうのねらいが分からない方は、残念ながらお子ちゃまとしか言いようがない。こういうケースもあるということで、みなさんも気をつけよう。
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