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2023年12月31日18:09

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2023年を振り返る 世相篇

 今年を象徴するコンテンツはこれだ!


 敢えて原曲ではなく、さくらみこと星街すいせいのVチューバー版を貼ってみた。このYOASOBIの『アイドル』は、僕が言うまでもなく今年のビッグヒットだ。では、この曲は何だったのか?

 この曲の持つ象徴的意味合いを表現するなら、それは「混乱と矛盾」という事ではないかなと思う。この『アイドル』という曲の際だった特徴は、「表現者の主体が判らない」という事だ。

 例えば小泉今日子の『なんてったってアイドル』は、アイドル本人からの目線で歌われている歌詞だ。しかし『アイドル』は、アイドル本人からの目線で歌われている曲ではない。いや、厳密にいうとアイドル本人から『だけ』ではない目線で歌われている。

 そうこの曲には、アイドルを好きになる「ファン」からの目線や、中心的アイドルの脇にいる別のアイドル、からの目線が挿入されている。ちなみにだが、新人賞に送る小説を書く上で、まず注意すべき点は何か? それは『視点の統一』だと、全ての本に書いてある。

 これは一人称小説ではもちろん、「神の視点」である三人称の小説でも同じ事で、基本的には主人公から視点が外れないことが、『プロ』の第一歩なのだ。つまり、登場人物が出てくる度に、その内面が判るような描写をしてはいけない。これは漫画や映像媒体に慣れた世代だと、つい間違えてしまうポイントだ。

 実際、そんなに悪い事なのか? 書く側に立つと「読めばわかるじゃん」と思いがちなのだが、実は読み手に廻ると視点が統一されてない小説とは極めて読みづらく、混乱するものなのだ。僕も実地でそれを理解したので、一作で取る視点は多くても二人、にしている。(その際には、視点が変わる際には、段落や章を完全に変える、などの工夫が必要だ)

 つまりである。歌にしたって、それは同じ事なのだ。『誰の」視点からの歌なのか、それは本来的には非常に重要なポイントだ。だが、この『アイドル』は、作り手がその主題歌となった『推しの子』の登場人物の、多角的な視点を意図的に挿入したものなのだ。

 リアル・アキバ・ボーイズというダンスグループがあり、そのグループがこの『アイドル』を踊ってみたという動画を創った。その際に、このダンサーは『アイドル』の作り手に歌詞の一つ一つの意味を訊いたところ、原作の『推しの子』の誰々の視点、という風に
答えが返ってきたという。

 敢えて多重視点をとったこの『アイドル』。僕が最初に聴いた印象は、「ヘンな曲」だ。アイドル本人の視点かと思いきや、ファンの方の心理が出てくる。推してるだけかと思いきや、嫉妬するような気持も含まれてる。人を好きになる人の気持ちが判らない、と告白してるのは、当の人を好きにさせている本人だ。

 混乱と矛盾。だが考えてみると、今年はコロナが終息した…と思いきやまたぶり返したり、売る側、観光に来てほしい側の論理と、買う側、出かけたいけどまだ躊躇する側、など立場によって、コロナ一つとっても様々なスタンスをとる事が露見した年だった。マスクは自己判断とされ、都市部ではマスクなしの人が増える一方で、田舎や医療機関ではいまだにマスクは必需品。政府も煮え切らない態度で、むしろ混乱のトリガーを引いている印象である。

 その矛盾と混乱の中を、それでも生き抜かなければいけない。そういう心理が、この『アイドル』をビッグヒットにしたのではないかな、と思う。正直、主題歌となった『推しの子』自体は、それほど面白くはない。し、もうそれほど話題になってもない感じがする。

 自分の日記を読み返して驚いたが、今年の前半では『チェンソーマン』がとにかくビッグヒットだった。しかし今やどうだろう? コロナの五類化以降、生活が元のペースに戻ると同時に、あれほど悲惨を背景にした漫画はほとんど過去のものとなった。あのチェンソーマンが穿った虚無感は、コロナ終息(ほんとはしてないが)と同時に消えたように見える。

 その後、WBCの優勝(大谷翔平はほんとに凄い)、バスケットの盛り上がり(映画)、阪神優勝等、スポーツ界ではビッグで明るいニュースが多かった。にも拘わらず、一方では「岸田に殺される」「増税眼鏡」という政治批判、時世の嘆きの声もあがった。そういう矛盾と混乱に満ちた一年だったと思う。
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