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2023年08月11日22:16

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ターとショルティとマーラー5

 特にクラシック音楽好きの間で話題になっていた映画『 TAR / ター 』を観た。ケイト・ブランシェットが指揮界のトップに登り詰めたリディア・ターを演じる。

 レズビアンであることを公言するターは、女性チェリストの重用、音楽学生への厳しい指導などから誹謗中傷を受け、次第に精神のバランスを崩した結果、指揮者としてのキャリアを失う。

 映画で重要なファクターとなるのがマーラーの交響曲第5番。ターが録音を進めるマーラーの交響曲全集最後の曲となっている。

       閑話休題

 その後、ゲオルク・ショルティがシカゴ交響楽団を指揮した同曲のDVDを久しぶりに観てみた。1986年3月の東京公演で会場は東京文化会館(SONYがDVD化している)。アドルフ・ハーセスやデイル・クレヴェンジャーなどの伝説的楽員の姿を見ることができる。勿論、エルボーを繰り出すショルティも元気いっぱいだ。この時、自分も会場にいたのだが、第1楽章最後に弦楽器が一斉にピチカートで「バンッ!」と一発弾く音がバラけることなく且つ大きな音なのに度肝を抜かれたことを思い出す。

 さて『TAR』に話を戻すと。ターの話の中に女性指揮者の先駆けとなったアントニア・ブリコとか、若い頃のセクハラ問題でMETから追放処分となったジェームズ・レヴァイン、ヴィブラートが強すぎて音合わせができないとビーチャムに疎まれたオーボエの名手レオン・グーセンスの実名が出てきて思わずニヤリとさせられるシーンも。

 一番面白かったのがターの友人である銀行家でアマチュア指揮者のエリオット・カプランという人物。これは実在のギルバート・キャプランがモデルだろう。彼は資産家でマーラーがとにかく大好き。ショルティに本格的に指揮法を学び、マーラーの『復活』交響曲だけを指揮して世界中回ったという(日本にも来た)変わり種だ。この曲をロンドン交響楽団とウィーン・フィルを指揮して録音までしている。

 ケイト・ブランシェットの指揮ぶりが堂に入っているとか、映画としてとても良くできていたが、なにより劇中で語られるエピソードに感心した作品ではあった。



 


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