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2022年12月02日10:28

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エストニアからやって来た困惑ファンタジー!「ノベンバー」

これから観ようと思っている映画について、出来るだけ情報を入れないでおこうと思う人は多いと思います。
「あ、CMで観たシーンだ。」「話に聞いた通りの展開だな。」と、新鮮さを失ってしまい、なんだか損した気持ちになるからでしょう。
僕も、どうしようか迷っている映画については色々調べますが、これを観る!と決めた映画についてはあまり内容について知りたいとは思いません。

しかし、この映画については、あらすじだけでも事前に読んでおけば良かったと思いました。
本当になんて言うか・・・。
これは一体何の映画なのだ?という疑問が、結構終盤まで続いてしまったのです。

序盤で登場する、クラットという名前のロボットみたいな使い魔に、まずは心を掴まれました。
頭と腕しかないギクシャクと動くクラットは、なんと牛を持ち上げて、しかも腕をプロペラみたいにして空まで飛びます。
やった!得した!変なものが見られた!
不気味でユーモラスなこの造形と動きは必見ですが、しかしこれは一体何・・・?

次に、なぜか死者が蘇ってくるイベントが始まります。
死んだ家族が家にやって来て、食事をし、サウナに入る。
・・・これは果たして。
丁寧な説明は無く、当たり前の様にどんどん展開されていく世界観に疑問は増えるばかりです。
新しい職場で、新人なのに何の指導も受けられず、どんどんと積み上がっていく仕事をただジッと見ている様な気持ちです。

ファンタジー世界というより、おとぎ話と言う方がしっくり来ます。
異常な事が平然と起きているのですが、村人の暮らしのウルトラ貧困ぶり等は物凄くリアルに描かれていて、結構汚い描写も多いです。
ワクワクするような気持ちになるものは何も無く、主軸となるドラマもなかなか顔を見せないので、ひたすら困惑と退屈に責め苛まれます。

主人公らしき村娘が、豚みたいな男に突然求婚されます。
娘は「エッ私と?豚と結婚するのじゃないの?」とビックリ。
どうしようもないシーンですが、実はここからが本題なのです。
彼女には、実は惚れた村男がいるのです。

さて、その村男はと言うと、こちらはドイツの男爵の娘にゾッコン。
ここでようやく、この映画の主軸となるのがそれぞれのラブストーリーだと分かるのですが・・・。
その大事なところを、もっと序盤に説明してくれよ!

この主軸だけ見れば、別に混乱する様な映画では無いのです。
むしろ、非常に古典的で分かりやすい物語なのですが、それ以外の要素がすべて不可解で異様!
この2人は自分の好きな相手をモノにするために、それぞれ魔術的なものを利用するのです。
これがまあ、悲惨な展開をもたらすというお話なわけです。

エストニアって、実はIT技術が発達した国で、あらゆるものがデジタル化されている国なのだそうですが、この映画を観る限り、絶対に行きたくない国ナンバーワンです。
寒くて貧乏で飢えている描写が延々と続くからです。
おまけに村人は汚いジジイとババアばかりで、クラットという使い魔の魂をもらうために悪魔と契約を交わしたり、魔女に相談したりと、治安の悪さも凄まじい。

モノクロ映画だと「異端の鳥」が記憶に新しいですが、話はこの映画以上に胸糞だったものの、映像は大変に美しいイメージでした。
「ライトハウス」も割とそうでした。
この映画も、確かに美しい映像は多くあるのですが、汚らしいイメージの方が先行するためか、そこまで美しさは感じませんでした。
むしろ侘しさや寂寥感が上回っていた気がします。

なかなかこの映画を掴めないまま終盤へ向かうのですが、終盤はかなり面白いのです。
主軸となるラブストーリーの顛末が一気に、ドラマチックに展開します。
なるほど、これがやりたかったのか!と思えるシーンもあり、いきなり評価が高まりました。

最終的には、やっぱりおとぎ話みたいだと思いました。
もちろん大人向けの、やるせないお話ですが。
もう一度最初から観直せば、今度はかなり楽しめそうな感じがします。

これから観る人は、事前にあらすじを読んでおいて物語世界の予習をしておけば、初見でも楽しめるかもしれません。
日本人にはなかなか馴染み辛い、独特の世界観、宗教観ですので。

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