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2021年08月06日08:12

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「古くて素敵なクラシック・レコードたち 」読了・・・LPの本なのに内容を理解するのにストリーミングサービスが必要な逆説

この本、ベストセラーになってるようだけど、ここにある実際のレコードと演奏を聞かないと、なんのことかわからないだろう、と思いました。

幸い、僕はこの中の数枚のレコードを持っていて、なるほど、と思わされたし、そのことでその頃の空気だとか、自分のことを思い出してはしみじみしたけど、そうでない人には買っただけになっちゃう気がする。

Spotifyで検索すると、ある程度は見つけられるので、昨日から細々と始めてます。「ストコフスキーと彼のオーケストラ」なんて初めて知ったけど、ちゃんと上がってるんですね。すごく面白い「火の鳥」。アンセルメ・スイスロマンドのモノラル録音ペトルーシュカがちゃんと上がってるのもびっくり。生々しい息遣いの、ヴィヴィッドな魅力!ルドルフ・ゼルキンとピーター・ゼルキンのバルトーク のpコンの聴き比べもできて、なかなか興味深かったです。

レコードの魅力を語る本で、ストリーミングサービスが伸びるとしたら、なんとも逆説的ですね。でも、この本の本質は、そんな表面的なところにあるのではなく、今は無くなってしまった、「あの頃のクラシック音楽の有り様」へのノスタルジーなんでしょう。それは、「その頃の自分の有り様」にも共鳴する。「レコード」は、その暗喩なのだろうと思います。

僕も文章を読みながら、1975年から1982年を過ごした中高一貫校の風景と空気、その質感を思い出していました。図書館に置かれたレコード芸術誌とその表紙、昼休みに流れるカラヤン・ベルリンフィル のブラームス、ムラヴィンスキーのチャイコフスキーについて激論を戦わせる放課後、文化祭の片隅で巨大なタンウェイのスピーカーから流れるドラティのハイドン。

あの頃は、今よりももっともっと、クラシック音楽が「特別な」もので、レコードは高嶺の花で・・・友達がアバドの春祭を買った、小澤の悲愴を買った、メータの惑星を買ったと聞いては群がるように貸し借りをし、帰りの十字屋でTDKのカセットテープを買っては、家で録音すると言う日々・・その有り様は、良い悪いは別として、振り返るとなんとも言えない「愛おしさ」が募ります。この本は、そう言う本なんでしょうね。
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