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2020年12月25日23:54

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普遍的家族愛への理解とそのすべてに共感するむずかしさ 『フェアウエル』

ガンにかかる高齢の祖母を心配する家族の愛情。万国共通の感情だ。だが作品の根底へと流れる中国的価値観がわからないと、すべてに共感しずらい。

ニューヨークで暮すビリーは大好きだった祖母ナイナイがガンで余命わずかな悲報を聞く。親戚は、従兄のハオハオが結婚するとのウソをついて、祖母の様子をうかがうため中国に向う。*1 中国ではガン告知はしないという伝統があるらしく、ガンをかくす行動が一家を振り回す。

ビリーたちがナイナイを想う気持は本物だ。普遍的家族愛がみちており、温かくなったり、哀しくなったり、先に逝く者と後に残る者の別れも漂う。*2 一方、本作では国外に出て人生を送る人々の価値観の相違も描く。両親と自分はアメリカで。叔父夫婦は日本で。叔母一家も祖母と一緒に生活はしていない。

華僑スタイルにおいて、中国の人々が国外で生活するのはめずらしくない。ビリーたちは25年間アメリカで暮し、叔父一家も同じ様に日本で暮す。それは中国人なのか? 国外で得たアイデンティは時折家族の衝突を生む。それを乗り越えあらたに「家族」になるというのが本作の深味。

ナイナイのガンの書類を偽造。一致団結する場面で、全員の背後に“紅門”がひかえるのもそう。*3 一族の源流はやはり中国だという証明でもある。ただ、この実感を強く抱く人々は、やっぱり源流の国を持ち遠く離れた国で生活を送る人々だ。理解はできる。だが共感はややむずかしい。*4


※1 「ハオハオの結婚はウソ」だとはっきりしめさず、台詞で説明してしまうことがこの映画の欠点といえば欠点だ。最初にわかりやすくこれをしめしたほうがよい

※2 通常において先の世代が後の世代より早くに、この世を去る事実はかえようがない。でもだからこそ「ナイナイがいなくなる」というビリーの感情はせつない。

※3 赤色の楼門は中国の伝統建築様式で、そもそも赤色自体が国旗をふくめ中国の伝統的カラーだ。その赤い楼門を背景に、日本人のアイコをふくめ、親戚一同が背負い歩く場面。これは「家族」の源流は中国あるいは中国的家族像を得た暗示なのであろう。

※4 自身のよくわからない物事へ簡単に「理解した」「共感した」というのは「そもそもたいして関心」がないか「傲慢」かのどらちらかだ。
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