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2020年12月18日23:51

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中途半端な考証と中途半端な視点 『ミッドウェイ』

日本は戦艦と空母。アメリカはグラマンやバンシーなど艦戦を中心に描くミッドウェイ海戦のスケールは十分。ただいろいろ中途半端だ。
本作の主役は赤城へ爆弾を投下して沈めたベスト隊隊長ディック・ベスト。もう一人の主役は大和に座乗した山本長官と飛龍に座乗した山口多聞になるのだろうか?

山本と多門をつとめた豊川悦司に浅野忠信。ベスト中隊長のエド・スクライン。山本と昵懇(じっこん)の間柄で、日米双方の視点に立つ情報将校レイトンのパトリック・ウィルソン。キャストの演技に不満はない。

日米の思惑と戦局の行方も忠実だ。ならなぜ不要なものを付け足し、描写に不備があるのか? たとえばミッドウェイ海戦以前のアメリカ艦戦。
零戦の撃墜能力があるか疑問だ。*1 17もの制作スタジオが名を連ねる体制。アメリカへの肩入れ? ところが日本艦隊の対空防御は史実以上の有能さ。*2

その部分はまったくアメリカ視点にたっていない。ドゥーリトルが東京空襲のあとで中国に着陸したのは事実だし、日本が中国本土におこなう爆撃を反映した場面も直後にある。*3 巻雲の米軍捕虜殺害事件をモデルにした場面など、日本へ憎悪をあおる。

なら山本と多門を悪の首魁にすればよいのに、我々がみても両者はかっこいいものにしあがっている。どの国民感情にも配慮した結果こうなったのかもしれないが、軸足を一国へとおかない視点はやはり中途半端。興行成績の不審もわかるのだ。*4


※1 米軍の零戦研究が進歩したのは1942年のミッドウェイ海戦と連動しており、古賀ゼロの鹵獲と研究が契機だ。それまでのあいだアメリカのグラマンの乗り手は、大半が機体特性の情報を得ず、個人の技量で対抗するしかなかった。そのため劣勢をしいられた。

※2 こんなに日本軍の高射砲や高射装置が優秀だったら赤城も加賀も蒼龍も飛龍もしずんどらんわ。

※3 重慶爆撃。この中国本土爆撃のあとで、中国はアメリカに先駆け、日本本土にビラを撒く空襲を行う。このビラ空襲は世論誘導と同時にアメリカの東京空襲戦略に影響をもたらした。日本が南方へ敷く絶対防衛ライン後退前に、中国で離発着を行い空襲可能なプランのヒントになったからだ。

※4 ある意味では真摯な態度かもしれないが。
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