COVID-19対策におけるアメリカの科学者とホワイトハウスの確執

今朝のワシントン・ポスト紙のニュースレターが、アメリカの政権と科学者とのあいだで興味深い対立が≪起こっている現状を報じていましたので、一部を抄訳してご紹介します。
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生物医学先端研究開発局(BARDA)でトランプ政権 のワクチン開発担当の責任者の職から突然左遷されたCOVID-19危機の警告者リック・ブライト氏が議会で今週火曜日に証言した内容の一部を紹介します。

ブライト氏は現在の連邦政府の新型コロナウイルスに対する無策に対して警鐘を鳴らしてきた。
１）警告を無視した政府の無策の為に多くの命が失われている。政府、特に保健福祉省の初期の対策の遅れが多くの死につながっている。この対策の遅れで、最前線で戦っている多くの医療従事者の命を危険に曝す結果になっている。
感染発覚当初から、ブライト氏は医療用マスクの増産体制を大至急とる必要を強調したが、関係当局者たちはマスクは充分足りているとして彼の警告を数か月間も無視してきた。その結果医療従事者たちに危機が訪れると彼は強く危惧していた。ブライト氏曰く「その時点でわれわれは不利な状況に陥っていたのだ。あの時が我々に多くの医療従事者たちの命を守れる最後のチャンスであったのだが、われわれは行動をおこせなかった。そして現在でもこの初期の無策の結果、ウイルスとの戦いに苦戦を強いられ、医療従事者をやらずもがなの命の危険に曝しているのだ。多くの貴重な命が危険にさらされ、失われて行った。更に、我々は正しい基準を守られていない外国製のマスクを調達せざるを得なくなり、病院の医師や看護師たちが、アメリカ製なら安全に使用できるN95マスクが外国製であるがために充分な保護を期待できないN95を使わねばならなくなっている。ある製品は本来の性能の３０％の効力しか期待できないものもある。その結果、医師や看護師は自分たちは危険から保護されていると信じて働いているが、実態は保護されていない状態である。」

２） 政府は効果が判っていない薬品を治療薬として使用しようとしている。
ブライト氏は彼が左遷された主な理由は、COVID-19の治療薬としてマラリヤ特効薬のchloroquineやhydroxychloroquineの使用を推し進めようとする政府側の意向に真っ向から異を唱えたことが主な原因であったと語っている。
その後食品医薬品局（FDA）はこれらの薬品の使用を危険であるとして警告を出している。

３）ワクチン開発には12〜18か月は必要という悲観的見方に対する反発。
トランプ大統領はマラリア特効薬の使用推奨だけでなく、COVID-19感染予防に有効なワクチンの開発期間にも楽観的な発言を繰り返しており、今年中には出来る筈だと語っている。アメリカ国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長Fauci氏などの医薬品専門家が、ワクチン生産に要する現実的な時間は12〜18か月という説に比べると遥かに楽観的な見方だ。だが、ブライト氏はもっと長い期間が必要かもしれないと危惧している。

４）今やアメリカには肝心なリーダーシップや対策のマスタープランすら存在しない。
NIAIDのFauci所長に対しリーダーシップても厳しく批判するトランプ大統領に対して「政府はもっと自国の科学者の意見を尊重すべきだ。」とブライト氏は語っている。
「われわれには、もっと強固なリーダーシップが必要で、アメリカの科学者たちの束縛を解いて、われわれが今必要とするかれらの知識や提案に耳を傾けることが出来る環境が必要である。そして、アメリカ市民にこのウイルスの危険な真の姿と危険性を正しく伝えることが必須である」
Fauci氏は「アメリカ疫病予防管理センター(ＣＤＣＰ)
が出している指針に合致しない内に経済活動再開に向かって動き出す州があり、新たな感染爆発のリスクがある」と指摘している。

５）最近の政府のCOVID-19の危険性を無視する対応を、ブライトン氏が厳しく叱責してるのに、共和党委員やトランプ政権のメンバーは彼の議会証言を無視する態度に出ている。Azar厚生長官はブライト氏に対しては特に厳しい態度だ。ホワイトハウスの庭でトランプの横に立ち「かれが苦情を言っていることは全て実行している。彼が指摘した人工呼吸器用のマスクは大統領の指示に従って調達している。」と言ってのけている。