人事権とは、従業員の地位の異動や待遇に関する管理的立場の決定権限の事を指します。人事権は就業規則などに基づく権利なので、その範囲を超えて行使する事は出来ず、また、権利の濫用は法律によって制限を受ける事があります。
人事権は、法律で直接定義されている権利ではありません。使用人は、規則に基づき、従業員の採用や配置、異動、人事考査、昇進や降格、休職に解雇などを行う権利を有するものです。ですが、権利を有するといっても権利の濫用は禁止されています。
法律によって制限がなされる事もあります。こうした権利に関する使用人の決定権限を人事権と呼ぶのです。人事権は規則に基づく権利ですから、規則の内容、具体的には就業規則に明記することです。
日本の会社では、一般に会社側が人事権をもち、組織の柔軟性を確保してきたといわれています。人事権に対する制限とは、権利濫用法理による制限があります(労働契約法3条5項)。
例えば、配置に関する配転命令権は人事権の具体的な例であると考えられますが、配転命令権の行使は規則の根拠があれば基本的に認められるものの、従業員に生じる不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるといった場合には権利の濫用として無効と扱われます。
また、法律による個別の制限があります。例えば、異動が使用人の人事権に含まれるといっても、労基法3条の均等待遇や男女雇用機会均等法に反するような法律上禁止される差別にあたる異動は違法であり、損害賠償(民法709条)の対象になります。
尚、人事権はあくまで規則に基づく権限ですから、規則に含まれていない事、つまり、就業規則や労働協約、個別の合意で定めた内容を超えて行使する事は出来ないと解されます。その意味では、人事権は就業規則等によっても制限を受けると説明する事が出来ます。
以上、人事権の法律的範囲を紹介しましたが、従業員の保護の観点からは、法律的に拘束を受けることが多くなったように思いますが、組織運営上、人事権は重要でもあり、適正な運用をすることが望ましいと考えます。
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