先日、海道東征を聴くに当たってSP復刻盤で予習いたしましたが、そのCD全集解説で海道
東征に関連する文章として阪田寛夫氏の小説について触れられておりました
それはタイトルも「海道東征」と題された、昭和37年の正月特番放送による再演について
書かれたもので、阪田さんは当時勤務しておられた朝日放送のプロデューサーとしてこの
番組制作に携わっておられたのです
この小説仕立てのドキュメンタリーの含まれる短編集が講談社文芸文庫「うるわしきあさも」
で、ワタシはすぐにamazonで注文したのですが、出品業者からの配本だったので数日を要
したため演奏会には間に合わず、また、連作を意図したものではないアンソロジーですから、
飛び飛びに読んで、数日前に読了致しました
阪田さんは海道東征の初演を聴いておられ、 是非この大作を再演したいとの情熱を持って
おられたようで、その熱が文章から濃厚に伝わって来ます
また、小説としての体裁もとっておりますので、そこに描かれている信時先生の人物像も
興味深いものがあります
面白いことに、先日の日記に引用した畑中先生の書かれたエピソードが、再演のときにも
あったようで、つまり、合唱の発する「ヤッ」の掛声に満足がいかず、信時先生自らお手本を
示されたとのこと、よほどこの部分には思い入れがおありでしたのでしょう
この短編集には小説「海道東征」と同じ作品集から選ばれたものもあり、それが表題となっ
ている「うるわしきあさも」で、阪田さんの叔父に当たる作曲家大中寅二氏に関する文章です
阪田寛夫という作家は「面白くて、やがてちょっと哀しい」作風の持ち主で、例えば童謡「サッ
ちゃん」にもそれが表れています
大中寅二という一風変わった作曲家が脳溢血に倒れ、そこから奇跡的に回復して最初に
オルガンで弾いたのが讃美歌「うるわしきあさも」でした
のっぴきならない状況にあってもどこかオカシイ、そんな人を食った文章で大中寅二の
人となりをみごとに表した文章には唸らざるを得ません
阪田さんが詩を書いて、従兄の大中恩さんが曲を付けた合唱組曲「熊の上の天使」には
こんな一曲があります
熊にまたがり 空見れば
りんどうの花 散り行けり
熊にまたがり 屁をこけば
俺はアホかと 思われる
短編集「うるわしきあさも」は、こんな感じの掌編で埋められております
因みにワタシは羽仁もと子女史が創始した「友の会」函館支部の運営する幼稚園、函館
幼児生活団に通い、そこでこの讃美歌「うるわしきあさも」を習いました
驚いたことに、60年を経た今でも歌うことができます
大カンタータ「海道東征」もそんな風に、聞いた人の心にいつまでも残る作品なのでしょう
先日のワタシの鑑賞日記は、ちょっとそっけないものでしたが、この阪田さんの文章を
読んで居れば印象は変わっていたことでしょう
それがどんなものであるかは、日記でも触れましたが、当日会場でお会いしたハイドン��
さんのブログをご参照ください↓
http://blog.goo.ne.jp/katsura1125/e/ce1126c43026b73928406bc0e09a3143
再度CDで聴いてみようかと思います（年が改まった来年、2月11日の建国記念日にでも）
その前に、我が書架に有った連作短編集「わが町」を、この正月に再読します
芥川賞受賞作「土の器」もあったはずですが、どうしても見つけることができませんでした
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