「家康の肖像と東照宮信仰」・・・・岡崎市美術博物館

６月１１日

今日は、岡崎市美術博物館に行った。

午後２時から埼玉県立歴史と民族の博物館学芸員の浦木賢治氏の講演会があることを知っていたので、午後１時を目指して出かけた。

「描かれた東照大権現像の広がり」というテーマで講演会が行われた。

浦木氏は１９８２年生まれで、東京芸術大学の出身で、日本絵画史が専門とのことだった。

肖像画・・・生前に描かれた「寿像」と没後に描かれた「遺像」がある。

家康の肖像画・・・家康を神格化した東照大権現を描いた神像→　　東照宮信仰と密接にかかわる。

家康の薨去と「東照大権現」

１６１６年　１月２１日　鷹狩に行き体調を崩す。
　　　　　　
　　　　　　　４月２日頃　　本多正純と南光坊天海、以心祟伝を集め、遺言を託す。
遺言の内容
　・遺骸を久能山に納めること　　・葬礼を増上寺で執行すること

・位牌を大樹寺に立てること　　　・一周忌の後に　日光山に小さなお堂建立して勧請すること
「八州之鎮守」になること・・・・関東を守る神様になる

４月１７日　薨去

４月２０日頃　　家康の神号について　崇伝は「明神」号を、天海は「権現」号を主張し、論争。

５月２６日　　秀忠、天海に「権現」号の採用を伝達。

９月１６日頃　　秀忠が「東照大権現」に決定。

１６１７年　４月　久能山から日光へ移った神霊（家康）に後水尾天皇宣明が捧げられる。
後水尾天皇の名のもとに「東照大権現」が成立。

展示の中に紅葉山東照社扁額「東照大権現」　　後水尾天皇筆がある。


家康の肖像画

「霊夢像」・・・三代将軍家光が夢に見た家康（東照大権現）を狩野探幽に描かせた。
　　徳川記念財団、日光山輪王寺、国立歴史民俗博物館に分蔵。

　目を見開いている　　白い平服姿　右膝を立てた姿　　リラックスした表情

「東照宮御影」…将軍の親近者による礼拝に用いられたといわれる。
　　徳川記念財団が「四月十七日拝礼」「九月十七日拝礼」「元日拝礼」の三幅を所蔵。

　　目を見開いている　正面を向く　　束帯姿

「東照大権現像」・・・黒い袍を身につけた束帯姿の家康像。全国に多数所在。徳川記念財団、長圓寺など各地の寺社などに所蔵。

三代将軍家光の東照大権現信仰
　祖父家康からの恩徳　　祝詞、守袋、霊夢像

東照大権現像と絵師たち

１。狩野探幽・・・江戸幕府の御用絵師、江戸狩野派の始祖　　１６１２年　駿府で家康に拝謁。
　　　１６１６年　江戸へ召され、幕府御用絵師になる。二条城障壁画、名古屋城上洛殿障壁画制作など。寛永大造替では日光東照社本社の彩色を担当、「東照社縁起絵巻」「霊夢像」も制作。

２．四代木村了琢・・・・１６２２年　日光東照社奥社の多宝塔内壁画が現存最古の作例か。
「深秘の絵師」といわれる。木村派は幕末まで続く。

３．初代神田宗庭・・・・歴代当主が「宗庭」を襲名。絵仏師の神田派の始祖。天海のもとで出家。
１６３２年　「東照宮尊影」

黒い袍の「東照大権現像」
瑞雲と宮殿　　　背景画　　束帯姿　　狛犬、獅子　着賛

先行研究の着眼点
背景（寺社建築の描写）

袍の裾の流れ方

足の位置（足裏の密着）

木村了琢の絵では、三重塔、奥社拝殿、多宝塔、　針葉樹、鳥居　　左流し　足裏密着

東照大権現像の類似点と展開

１、徳川記念財団本と聖衆来迎寺本　　鳥居が一つ　多宝塔、拝殿　穏やかな顔、

２、長圓寺と京都大学総合博物館本　　右に寄せている背景　多宝塔、拝殿、鳥居二つ
　左に水墨画　別の風景　　三重塔はない　左流し、　ふっくらした顔、　　あごに少しひげ
赤い袖口　衣のしわが違う　　足裏が離れている



３、三河武士のやかた家康館本　　右流し、足裏離れている　　こわばった顔、

東照宮は、幕府、大名が勧請する以外に民衆によっても（私勧請）
　
幕府は管理しない

ご神体、画像、彫像など自由に作られた　　さまざまな東照大権現像

天台宗の東照大権現信仰
天海が推進　　　毎月１７日


展示では　いろんな家康の肖像画があったが、中でも家康本人が描いた絵まで展示されていた。

講演会で聞いた後、また展示に戻って確認した。

徳川記念財団の所蔵する家康の肖像画が　「本家本元」という感じがした。

霊夢像は、プライベートな家康という感じだった。

寺などに飾られた家康像は　神格化していて、それを民衆が拝んだ。

武士としての家康の肖像画と　東照大権現になった家康とは　違うんだな。と、思った。

それから、全国に　東照宮は　７００以上もあるということを講演会で聞いた。

それだけ家康というのは　人々の心の中に残っているのだろう。

凄いなあ！と、思った。