脳
「今日、みんなに集まってもらったのは他でもねー、実はこのところ自分が生きる意義や意味に
ついて非常に悩んでいるのだ。かつては俺だってやればできる、本気をだしていないだけ
と高をくくっていたのだが、それは今思えばただの思いあがりだった。
俺は自分が思う以上に平凡だった、いままでは他人を平凡だと決めつけていたんだが
俺こそが平凡だったんだ。その事実をしった今、生きる意味やこうしてつまらないことで
いちいち悩むのに心底疲れてしまっているのだ。
いっそ、死のうかなと思ってるんだ。
みんな、これについてどう思う?」
心臓
「は?は?ちょっと私はあなたが眠ってる間もこうやって一生懸命働いているんですけど。
それは私に止まれってことですか?言っときますけどあんたが死んだって私は勝手に動きますから。
あなたに言われて止まるわけにはいきません。だって動くことが宿命なんですから。」
脳
「そうか、あんたがおとなしく止まってくれたら話は早かったんだけれどな。
そうだなじゃあ、そこにいる奴らはどうだ?」
胃、腸
「僕らはまだ美味しい物が食べたいなーと思ってるよ。きっと死にたいって気持ちも
おいしーものを食べたら安らぐよ、君はつかれているんだ。たくさん食べてしっかり寝た
ほうがいい。ほら、まだ駅前のラーメン屋のラーメンも食べてないじゃないか。」
脳
「そうだ、せめて死ぬ前くらいは美味しいものが食べたいな。でも食べ終わった時に
すごく悲しくなるから、食べるのが怖いな。っていうか、君らもあんまり死ぬことに協力的でないね。毎日食い物のことだけ考えられたらさぞや幸せだろうな。オイラはそうはいかねーな。
じゃあ次は肝臓さん、あんたは?」
肝臓
「…」
脳
「さすが沈黙の臓器、何も言わないのか考えているのかさえ不明だな。まあでもあんたがくたばると、死ぬためにかなり苦痛になるからな、まあお前は黙ったままでもいいよ。」
心臓
「はーはー、脳さんあんたさ、死ぬのが怖いんじゃないのだって、死にたいって言う割に自分は死ぬ努力しないで、私達臓器に止まって下さいとか頼んでくるんだもん。」
脳
「確かに怖い、矛盾しているな死にたいと言っているのに死ぬのが怖いなんて。」
胃
「それってさー生きたいってことなんじゃないの。」
脳
「いや、生きたいなんて思ったことはないんだよ。死にたいと思うことは毎日なのに。」
心臓
「でも死なないじゃん。あんたの鶴の一声さえあれば私達は嫌がおうでも死ぬよ。
結局、全て決めているのはあんたじゃんかはーはー」
脳
「どうしたら、どうしたら死ねるんだ!」
肝臓
「言われなくたって、そのうち死ぬよ。」
脳
「お前いきなり喋ってなんなんだ死ぬのは痛いんだ、苦しいんだ、体の中にこもっているお前に何がわかるというんだ。」
心臓
「じゃあ、私止まりまーす」
脳
「まて!まて!とまるな!止まっていいとまだ言ってない」
心臓
「ははは、バカバカしい、こんな問答もう何度めだか。」
胃
「かれこれ5000回ほどかな。」
肝臓
「どうせ言われなくても死ぬよ。安心しろ」
脳
「そうだな、何度目だろうな死ぬって言ったのは。死にたいと思ってるが死んでないのは死ぬ覚悟がないということだな。でも覚悟もなにも覚悟なんて出来る前に死ぬんだろうな。
そう思ったら少し気分が楽になってきたよ。どっちゃみち死ぬんだ。」
だったらも少しだけ何か、できることがないか探してみるか…
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