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2015年09月17日02:37

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「東京暗闇いらっしゃいませ」 (狗飼恭子 著)

  
「ストロベリーショートケイクス」 「スイートリトルライズ」 (どちらも矢崎仁司監督) などの脚本家としても知られる狗飼恭子さんの小説を初めて読んだ。

タイトルは、もちろん相米慎二監督の 「東京上空いらっしゃいませ」 のもじり。
ひょんな事から、中目黒にある名画座 『楽日座』 で20万円分労働することになった、売れない女優・溝口夏十(市川崑監督の奥様と同じ名前) は、これまで演じてきた色んな端役のためわざわざ取得した幾つもの資格等を活かして、閑古鳥の鳴くボロ名画座を魅力的に変身させていく。

「三行であらすじが表現できる映画は、必ずヒツトする」 をはじめ、映画ファンならにやりとする法則や、映画の名台詞が、あざとすぎることなく作中に振り撒かれている。
映画の神様だって登場していたかもしれない。

そして、これまたひょんな事から夏十は、名画座の副支配人である数納くんが昔執筆しクランクイン寸前にポシャッた映画の脚本を、短篇として映画化し、楽日座で上映する事を思いつく。
夏十にとって因縁の ” ある映画 ” と2本立てで。
スタッフ探しが始まる――。

これまでの狗飼さんの脚本作から漠然と抱いていたイメージをいい意味で裏切ってくれた、どこか懐かしい匂いのするほっこりとした好篇だった。 映画化して、各地に僅かに残る名画座で上映してほしくなるような。
この小説は、もしかして、ポシャッた彼女のシナリオを元にしているのだろうか。

『楽日座』 のラインナップにも、にやりとさせられる。


湯布院行きの車中で読むのに最適な1冊でした。
(行きに読了した4冊の内の1冊)

 
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