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2006年02月01日00:05

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「耽奇館主人の日記」自選其の二十四

2003年12月13日(土)
ドラッグレス・ドラッガーのこと。

最近、デビッド・リンチ監督が、米国の会社を通して10億ドルの寄付金を募っているとか。
何でも、瞑想を広めるために、トランセンデンタル・メディテーション(超自然的瞑想)の指導者を養成したりするのに必要なのだそうだ。
世間一般的には、いよいよおかしくなって、とんでもないカルトに走ったかという声が聞こえてきそうだが、リンチ自身がすでに「ある種の滑稽さがある」と認めているのには、思わずニヤリとした。
全然、変わっていない。
リンチはリンチのままだ。
子供の頃、座禅が大嫌いだった私が、瞑想を定期的に続けるようになったのは、リンチの影響が大きい。
実際、瞑想は素晴らしい。
私としては、ナチュラル・ハイの極みだと思っている。
ドラッグなしでトリップ出来るというやつだ。
人によっては、まず、あらゆるドラッグを試してから、その感覚を思い出すようにして、シラフの時でもトリップ出来るようになるというのと、生まれつき、ドラッグなしでイッてしまえるというのと、二つのタイプに大別出来るそうだが、デビッド・リンチは完全に、後者の見本のような存在である。
私はまずランナーズ・ハイから出発した。
高校時代、体格と腕力を買われて、美術部に在籍しながらラグビー部を掛け持ちしていたのだが、プロレスと漫画「北斗の拳」が大好きな主将の考えた練習メニューのおかげで、ほんとうに血尿が出るくらいしごかれた。
その中に30キロランニングというのがあって、時間に関係なく、完走を絶対目的とした持久力トレーニングを毎週土曜の夕方に実施していたのだが、私は強靭なスタミナを得る代わりに、心の中で自分の肉体を捨て去ってしまうことを覚えてしまった。
足の筋肉の痛みが消えてしまって、肺も心臓も溶けてしまって、目の前の景色が真っ白になってしまう。
それでも、私は走り続けているのだ。
先輩に言わせると、ヨダレを垂れ流しながら、ニヤニヤして走っているので、すごく怖かったそうだ。
この時の快感が忘れられずに、一歩先へ進んで、今度はカーズ・ハイ、バイカーズ・ハイを得られるようにスピードそのものに耽溺した。
真夜中に、あまり車通りのない、寂しい直線の道路を車やバイクで百キロ以上出して飛ばすのだ。
私としては、車より、バイクの方が気持ち良かった。
そんなこんなで、今日に至るまで、ナチュラル・ハイを得るために、色々なことをやってきたのだが、一番気持ちいいのは何と言っても、瞑想である。
リンチのそれは、主にベッドの上でやっているそうだが、私は真っ暗闇の中でやることにしている。
座禅を組んで、手を組んで、呼吸を整えて、目を半分閉じながら、闇を見つめつつ、自分自身の内側を見つめるようにする。
すると、それまで頭の中で渦巻いていた、様々な映像がぷっつり切れてしまって、ねっとりした乳白色の液体が目の中に流れ込むような感触が広がる。
そこから、地上から宇宙に向けて、自分がだんだん膨れ上がっていく感覚が全身を支配し、人間としての感情が色々な形に変形していくのを覚える。
そんな感じなのだが、実際は、もっとブッ飛んでいる。
そして、そのブッ飛んだ快感を、スポーツのように楽しみ、決して溺れることはせずに、陰影のあるモラリストとして、明日に向かって密かに微笑する。
今日はここまで。
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