「今回はいろいろと気を利かせて動いてくれて、おかげで催しがうまくいったよ。 で、これ、私からの寸志。」
「えー、寸志ですか。 芥川也寸志じゃなくて?」
「芥川って、なんだい。 昔いた音楽家の名前?
あ、そうか。 お若い人は、寸志といってもわからないか。 あの、ほら、ほんのちょっとした心づけだよ。」
「寸志くらいわかりますよ。 立川一門にも、そういう名前の噺家がいますし。
前座のころお使いに行くとき、『談志のところから寸志が参りました』という口上を師匠に言わされて、当人はこっ恥(ぱ)ずかしかったみたいですけどね。」
「きみ、なにか勘違いしてるんじゃないかね。 いろいろ動いてくれたことについて、こういうかたちで、ささやかではあるけど感謝を示そうとしているんだよ、私は。」
「お気持ちは有難いんですけど、辞退させていただきます。
だって、ほら、昔からいうでしょ、寸志危うきに近寄らずって。」
「何をいうんだね、きみ。 だいたいそれは君子だろう。 ちょっとした心づけの、何が危ないんだ。」
「そうやって、餌付けをして取り込もうという、寸志の兵法かもしれないじゃないですか。」
「それもいうなら、孫子の兵法だろう。 なんでそんなことを私がしなきゃならないんだ。 きみ、失礼だよ。」
「やだなあ、怒らないでくださいよ。 でも、蛇は寸にして人を呑むっていうから、わずかな額だといっても剣呑で。
一寸の虫にも五分の志(こころざし)がモットーのぼくとしては、自主独立のフリーランスを貫くために、いろいろ生意気なこともいわなきゃならないんですよ。
だいたい、その寸志をいただいたあと、それを私のほうから寸志としてお渡しするといったら、センセイ、怒りますよね。」
「・・・そりゃあ、目下から目上への寸志など、失礼千万だからね。」
「でしょ。 だからここは、笑顔でそのポチ袋を引っ込めていただいて、ご縁があればまた、筋目の通ったかたちでお手伝いさせていただくということにしましょうよ。」
※なんだか頭がバグって、わけのわからないことを書いちゃいました。 現実とは一切関りがないことばの自己増殖(寸志という語から何を連想するか)なので、どうか放置プレイしてください。
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