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2023年03月28日16:30

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ピーター・ラブゼイのShowstopperを読んだ

ピーター・ラブゼイのShowstopper を読んだ。
お馴染み警視ピーター・ダイアモンドのシリーズ21作目です。
英国で現役のただ一人のDiamond Dagger(CWA)とGrand Master(MWA)を得たレジエンドです。
本当に面白くて愉快な気分になれます。 絶対のお勧めです。
今回はまさに「アガサ・クリスティみたい」というセリフが出てくるほど、どんでん返しの繰り返しを楽しめます。whodonneitです!
怪しい人物が次々現われ、また最初の容疑者を再度捜査し直して、それもピーターの頑固親父ぶりと、部下の結束ぶりが相変わらず笑えるのです。

相変わらず風変わりな事件に巻き込まれます。その上警察組織の改革の為ピーターの殺人捜査課の解散も副署長ジョルジアが匂わせるのです。
なんと殺人捜査課も「昔ながらの感を頼りの捜査を現代化」するため、刑事たちも「リフレッシュ・コース(近代捜査、サイバー捜査テロ対策等)」を受講するよう言われます。
ピーターは副署長ジョルジアから「できないのなら「引退」も考えることね」と言われるのです。捜査課も解散もあると言われピーターはジョルジアに対する闘争心は薄れ、気力をなくします。

TV映画「スイフト」シリーズは、女性の主人公のアクションが売り物で6シーズンも放映されている人気でしたが、最近は災難続きだったのです。

少し前にベテラン女優の自宅に泥棒が入り、それに気づいた女優が心臓発作で亡くなったのだ。その上続けて二人の女性スタントマンが屋根から落ちるというケガをしていたのだ。

6年前には主役女優の撮影開始前に離脱、その後エンジニアの焼死、アシスタントプロデューサーの行方不明、プロデューサーの突然死、俳優の登山中の転落死、ロケ舞台設営者の行方不明と続発していたのだ。何らかのたたり、ジンクス(呪われている)だと言われ続けたが、映画はヒットしていたのです。その間には製作者も変わり、俳優も変更になり、撮影現場もスタッフが入れ替わり、寄せ集め状態で製作されていた。

しかし警視ダイアモンドは引退して花壇の水やり犬の世話などを想像するとやる気が消え、巨漢の警視が涙ぐんでしまうのですから、笑ってしまいます。

あの頑固なピーターはスマホや、PCは単なる道具にすぎず手書きの地図や、黒板に書いて捜査員を煙に巻き「足と感を頼りの捜査」を行う、最後の古い刑事なのです。

彼は呪いやジンクスなど信じず乗り気でなく、殺人課の一番若手刑事ポール・ギルバートを担当させてしまうのです。
その結果、ポールは最後に撮影がされた昔の戦争用飛行場の荒れ地を探し、廃墟の中で野宿していた大男のホームレスと巨大な犬を見つけたのです。男は失踪した舞台設営者の道具や、彼のベルトをしていたのです。彼を尋問し、ベルトを回収し、DNA検査をするべく留置場に入れます。ホームレスは留置所で食事と犬を一緒に保護してほしいと申し出ます。
受け入れたのですが、証拠はすぐには鑑定できず釈放。すぐにピーターは逮捕を命じますが、大男と、暴れる人間以上に大きい犬に刑事たちはてこずります。

「警察に提案があります」とホームレス。「逮捕される人間が提案なんて言えることか」とピーター。

ピーターはやはりこのホームレスは元リーマン証券の社員であり不審に思います。バンドは行方不明の舞台設営者のDNAが残っていたのです。

飛行場跡に舞台設営者の死体が埋められていると考え犯人の現れるのを待ち背広のまま張り込み待ちます。雨の中に、雨具を着た怪しい人物が現れピーターと警官が捕まえるとポールだったのだ。(お馴染みのよくあるシーンなのです)

雨に濡れた背広姿のピーター達は「その恰好は準備不足でしょう」とポールに言われる始末。

そして新聞社が「警察は連続する災難に注目」し捜査が進められているとスッパ抜きます。

すぐさま、副署長ジョルジアはピーターを呼び、「新聞が大騒ぎしているわ」
「副署長命令通り、皆にはリフレッシュ受講勉強させています。新聞社に抗議します」とピーター。
「呪われたジンクスを考えているなんて、我々の名誉の問題です」
「いまさら貴方が名誉だなんて良く言えるわね。新聞社に捜査をしていることを見せないといけないわ」
「どうします。お考えは」ピーターの逆襲に副署長はたじろぎ、「捜査をして頂戴」
やった、決めセリフ!
「賢明な判断です。必要な捜査追加予算を頂けますか。お願いします」
「あんた、本当にいやな奴ね」

そして本部に捜査課の従来通りの机を配置、PCも設置します。しかしピーターには不要です。
ピーターに電話ですと言われて受話器を取りますが、「親父さんの電話はまだ接続していません」とポール。

奥に捜査主任と名札が付いた自分の席を見て、「ジンクス呪い排除作戦」は名前が良くないな」 
「ではショーストッパーでは」「それでいこう」

*Showstopperは(ショーが中断されるほどの)名演技、名演が本来の意味ですが、ビジネスでは(ショーを中断するような)致命的な問題という意味によく使われます。

それぞれに過去の事件の担当をインゲボルグはじめ全員に決めて捜査を開始します。

女性の証言を貰うときはいつもインゲボルグなのですが、今回は若手の女性刑事をピーターが同行するよう指名します。

「君は新車のボルボに乗ってるそうだな」とピーター。
「じゃ、私を助手席に乗せ運転してくれたまえ」
女性刑事は一瞬にしてパニックになります。
「心配するな、ガソリン代は公費をだすから」
ガス代の問題ではないのだ。ピーターが横に乗っていることが問題なのだ。ピーターがしゃべり続けるか寝ているため、彼女は緊張でハンドルを握る手がこわばってしまうのだ。

まあ、最初から終わりまで、クスクス笑いからジョークの報復絶倒の掛け合い漫才みたいな
笑っているうちに犯人の手掛かりがその中に隠されていますからご用心を。

3人の関係者が失踪しており、不審死も起きているのです。これらが、どう絡み合っているのかピーター達刑事の捜査から次第に事件の全容が分かります。
スタッフが毎シリーズ寄せ集めで、関係者がいずれもいわくありげで、後ろめたいものを持っているようなのだ。彼らに降りまわされてしまいます。
本当に何度も容疑者を絞りこめずに、振り出しに戻ります。

捜査課のメンバーはお馴染みの面白くて楽しい刑事ばかりです。
楽しく読んでください。結末はクリスティ風の複雑な関係が明らかになります。
ピーター・ダイアモンド警視の涙ぐむ姿は今まで見たことがありません。

余談;
30年以上にわたるラブゼイの代表作シリーズであり、英米両国で出版され、Diamond and the Eye(2021)以来の新作です。シリーズの初版サイン本HCは全て$1,000以上ですから、めったに市場には出ません。
最近日本では翻訳はでませんが人気がありました。今も新作は英米両国でHCが出版されています。

*ピーター・ラブゼイの小説はどれも読み易く一気に笑いながら読めます。
洋書の初心者には絶好の読み物です。会話は英国風ジョークですから、楽しいです。ダイアモンド警視シリーズは全作品お勧めです。

*失踪者が口髭を蓄えていると聞き「クラーク・ゲーブルの口髭がどうした」とピーター。
しかし世代違いの為ポールには意味が分からない。(映画フアンだって知らない人が多いでしょう)

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