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2021年12月12日23:52

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“不正”が法と人を塗り潰す 『モリータニアン/黒塗りの手記』

政府の公式記録が黒塗りされて真実を伺い知ることができない。この問題は日本だけではなく神を前で法を誓うアメリカすら例外ではない。*1

本作はキューバ・グアンタナモで約14年間無実の罪で収監されていたモハメドゥ・ウルド・スラヒ――通称モーリタニアン*2 の記録だ。

“不正”中で法は無視され、モーは「尋問」と名の付く「拷問」で自白を強要されてしまう。このモーを人権派弁護士ナンシー(ジョディ・フォスター)が救い出し、同時にアメリカの闇と戦う。

構成が良い。

実話作品は平坦でメリハリを欠く事も多いが、本作は型破りで不敵なナンシーの存在で物語をひっぱる。このナンシーが対決する相手は海兵隊検事局のカウチ(ベネディクト・カンバーバッチ)。

だが、むしろカウチはアメリカの罪を背負う“贖罪者”である。敬虔なキリスト教徒の彼は“不正”に法を捻じ曲げるアメリカに絶望する。*3

モーがうけた拷問は想像をこえる。

暴行、無理な姿勢での拘束、有名な水責め、性的凌辱、自白強要、看守たちはやがてモーの拷問をたのしむようになる。この映像は過激だ。

9.11で同胞の多くを失ったアメリカの憎悪が無実の人を拷問する行動。これを“正義”と呼び、この“正義”にグアンタナモから出所した人々がテロ活動へ戻る負の連鎖。

唯一の救いと許しは、現在のモー本人の笑顔と、自国の汚点だろうとすべてを保管するアメリカの公文書記録局のシステムだ。

“書き換え”などはしないのだ。*4


※1 どの国でも一緒だ。そもそも自身の住む国を100%信頼している人間など自分は到底信用できない。「好きな所」「嫌いな所」「欠点」はかならずあるはずだ。

※2 スラヒの故郷がモーリタニアンだということの愛称。

※3 大統領の就任式で聖書に手を置き法を誓う儀式があるようにアメリカの法は神の下で人が誓う約束だ。つまりスラヒを収監する“不正”とは、神と交す約束を破り、神を欺く行為。アメリカ国民の基本理念へ背く行為だ。

※4 どこかの“国”みたいに。
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