暑い。
午前中に銀行に行って、振込を済ませただけで
帰宅したのだが、あまりの暑さに
体調が悪くなった。
気温は37度。
こんなときは軽い音楽を聴くに限る。
シェーンベルクの「期待」とか、絶対無理だ。
去年の秋頃から、モーツァルトのオペラ
「コシ・ファン・トゥッテ」をいろいろなCDで
聴いてきた。
このオペラは、カール・ベームが得意にしていて
スタジオ、ライヴ計8種の録音がある。
有名なのは60年代のEMI盤と、70年代のDG盤だが、
いずれもこのオペラを、非常に立派な作品と
見なした演奏だが、ちょっと立派すぎて
あまり面白くないのも確かだ。
指揮者の
フリッツ・ブッシュが、このオペラについて
「誰もスターであってはならない。歌手も、指揮者も、演出家も」
と述べていて、なるほどと思った。
このオペラは、筋書きは喜劇そのものといった感じだし、
音楽もことさらに劇的なものではない。
ベームより、もっと軽快で楽しい演奏はないかと思い、
別のCDを聴いた。
モーツァルト:歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』 K.588
フィオルディリージ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
ドラベッラ:クリスタ・ルートヴィヒ
グリエルモ:ヴァルター・ベリー
フェランド:アドルフ・ダラポッツァ
デスピーナ:オリヴェラ・ミリャコヴィチ
ドン・アルフォンソ:エーベルハルト・ヴェヒター
ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
ヨーゼフ・クリップス(指揮)
録音:1968年9月22日、ウィーン国立歌劇場(ライヴ、モノラル)
ORFEO
声が前面に出て、非常に鮮明なのに対し
オケは一歩引いて大人しいが、
このバランスが非常に好ましい。
ヴォーカルのアンサンブルが良く聞き取れる。
歌手は、やはりヤノヴィッツとルートヴィヒが別格で
アリアの後の盛大な拍手、セリフのやり取りでの
客の笑いなど、人気も抜群のようだ。
ルートヴィヒとワルター・ベリーは夫婦だが
この夫婦がオペラで愛の2重唱を歌うのは
珍しいかもしれない。
デスピナ役のミリャコヴィッチも上手い。
歌手は女声にくらべると、男声が少し弱いが
全体としてはよくまとまっている。
クリップスの指揮も、軽快で生き生きとしていて
この曲にふさわしい演奏という気がする。
クリップス盤を聴いたあと、ベームやショルティの
同曲を部分的に聴いたが、表現が重かったり
音色がきつかったり、いろいろ違和感があった。
クリップス盤は、自然な演奏で
どこがどう、ということが言いにくいところがあるが
他の演奏と比較すれば、いちばん違和感なく聴ける
名演であることがわかる。
フリッツ・ブッシュの言う
「誰もスターであってはならない。歌手も、指揮者も、演出家も」
という条件に、いちばんふさわしい名演ではないだろうか。
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