マスクとパンツ

　
　「マスクとパンツって、なんか似てない？　どちらも、消化器系の開口部を覆うものだし。」
　「前にもそんなこと、いってたよね。
　でも、いっぽうは入口、いっぽうは出口だから、開口部といっても、違うといえば違う。」
　「そりゃま、そうだけどさ。　どちらも肌に密着して、入口出口を隠すものなのに、いっぽうは堂々と他人（ひと）様に見せてよくて、もういっぽうは、隠しておかなきゃいけないっていうのは、差別待遇だと思わない？
　ヴィジュアル的には、むしろパンツのほうが、ひと様の鑑賞に堪えるグッドデザインも少なくないのにさ。」
　「差別ってなに？
　じゃあきみは、パンツもマスクと同じように、みんなに見せて歩くべきだとうの？」
　「いや、そこまではいわない。
　ぼくはただ、平等な扱いが望ましいって、いってるだけさ。
　パンツをズボンやスカートで隠すんなら、同じように生々しいマスクの上にも、マスク隠しを装着して歩くべきでしょう。　どう思う、きみ。」
　「マスクの上にマスクを重ねるのじゃ、だめ？　コロナの予防効果が上がるっていわれているけど。」
　「だめだめ。　それじゃ、パンツの上にパンツを重ね履きして、ズボンを履かずに歩くようなものでしょう。」