mixiユーザー(id:9051319)

2020年11月20日23:50

172 view

黒人も警官の命も大切だ 『ブラック&ブルー』

黒い肌の黒人は「ブラック」。
青い制服を着る警官はアメリカの俗語で「ブルー」だ。

中東での従軍経験を経て、故郷ニューオーリンズへと戻った警官のアリシア(ナオミ・ハリス)。彼女は「黒人警官」という複雑な立場のなか危険な任務をこなす。

そのアリシアが署内の汚職の口封じに“同僚”たちへ撃たれる。

本作が人種差別と、白人とくらべ、極端に危険任務へ従事する割合が高い黒人警官の“現実”をあつかっているのはまちがいない。

アメリカの警官は危険な仕事だ。入署した警官の40%以上が25歳以内に辞め、40歳になるとこの割合は70%をこえる。*1

くわえて警察組織は伝統と歴史において“白人”の職場。*2
差別と格差はいまだ根強い。
アリシアは同僚へと撃たれ、同僚は彼女を犯人へと仕立てる。
だが彼女は生き残る。

現在、世界の警官の標準装備となったボディカメラには証拠と冤罪の会話が記録してある。アリシアは孤立無援の中で「真実」をあかるみにしようとする。
汚職を主導する犯人の白人警官と、犯人が撃ち殺す黒人を“家族”とみなす地元の黒人ギャングにねらわれながら――。*3

以後作品はエスケープ & アクションといったわかりやすい要素をまじえ娯楽作品の色合いを濃くする。と、途端に最初に提示した社会問題の色合いは薄くなる。

荒唐無稽になりすぎず地に足が付く活劇の展開は十分おもしろい。

だがこの選択によって悪い奴を倒し終了の単純な構図になることは残念だ。


※1 公民権法や黒人優遇政策(アファーマティブ・アクション)が登場する1960年代〜1970年代まで、黒人と白人の警察分野ははっきり“区別”をされていた。黒人警官が増加した背景には、黒人人口の増加と権利獲得もあるが、いずれにしろ1970年代以降に黒人警官は顕著に増加していく。ノーマン・ジュイソン監督の『夜の大捜査線』(67年)は、当時の黒人警官の立場と活躍を描く名作だ。だがつまるところ、それがテーマになるほど当時も現在も“区別”が存在するということだ。

※2 https://www.theiacp.org/sites/default/files/2018-08/BP-RecruitmentRetentionandTurnover.pdfの「Turnover」を参照。

※3 白人も黒人も敵と化す四面楚歌。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年11月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930