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2020年10月25日08:40

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短気連載ブログ小説 淋しい生き物たち−ねぇおじーちゃん 第14話

「えー! なにかおじーちゃんかわいそう。それでよーこさんにはおへんじかいたの?」
「書いたよ。あんまりよく憶えてないけど、君とも圭子さんとも仲よくしていきたいというようなことを」

「明らかに私は添え物みたい」と、幾分怒気を含んだ返信を葉子さんから受け取ったような憶えはある。それから何か圭子さんと葉子さんとぼくとはぎくしゃくした雰囲気になり、やがてぼくが葉子さんに書いたように、どちらとも当たり障りなく仲よくすることになった。
 地元の神社の夏祭りは1学期の終業式の日が初日で、圭子さんとは7時に古本屋の前でと約束していたが、行ってみると当然のように、浴衣姿の圭子さんの横には同じく浴衣を着た葉子さんが立っていた。今、考えてみれば、葉子さんだってそこに喜んで立っていたわけではないのだろう。もう心を決めていたのかもしれない。ぼくは自分のことしか考えていなかったけれど。
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「それじゃ、けーこさんとの初恋はそれでおわっちゃったの?」
「それがそうじゃなくてさ、葉子さんはぼくへの興味を失ってしまったみたいだったよ。それは多分、葉子さんがぼくたちに気を遣ってくれたんだと今は思うけど」
「じゃ、もうやきもちをやいたりじゃましたりしなくなったの?」
「まぁ邪魔する気持ちなんかなかったんだろうけど、ぼくは葉子さんにふられたわけさ。それでよかったけどね」

 夏休みを挟んだのは、圭子さんに会えないのは寂しかったけれど、葉子さんの気持ちが切り替わるのにはいい時間だったのかもしれない。2学期になったら、圭子さんとぼくは以前のふたりに戻っていた。と言っても特に進展と言うか、ふたりの関係が親密になったり何かの変化があったりしたわけではなく、文字通り、元のそこそこ仲のいい、よく冷やかしのネタになるふたりに戻っただけだった。圭子さんが葉子さんに気を遣わなくなっただけだ。

(挿絵 匿名画伯)

【作中に登場する人物、施設等にモデルはありますが、実在のものとは一切関係がありません】

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