千葉劇場で観てきた。なんとなく木曜日に行ったんだけど、この日は千葉劇場はメンズデーで1100円だったのでラッキーだった。
『バンデッドQ』を劇場で観て大好きだったし、テリー・ギリアム監督の他の作品も嫌いじゃない。時々、観ていて頭がこんがらがるけど。
だから、今世紀の初め頃に『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を観に行った。色々と想定外の不幸が襲って製作中止に追い込まれ映画を「どうしてできなかったか?」というドキュメンタリー映画にしちゃったものだったのだが、なんかもう開き直った感じの、ものすごい映画だった。
で、それから18年経った現在、そのとき作れなかったドン・キホーテの映画がついに完成して、日本で観られるというのだ。そりゃ観に行くだろう。あきらめずに作り上げたんだなあ。すげえなあ、って感じだもの。
『ロスト・イン・ラ・マンチャ』では、「ドン・キホーテのお話の中でサンチョのポジションに現代人が紛れ込んで……」みたいな話だった。
ところがだ。
『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』が始まってすぐ、いきなり笑いをこらえる羽目に。
ほんと、爆笑を堪えるのがきつかった。
だってさあ。
ああ……! 『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を観ていて、それ以上の情報を入れずにこの映画を観ようって人にとってはネタバレになってしまうから、該当する人はここから先を読まないほうがいい。
だって……。
ドン・キホーテが風車に突っこんで巻き上げられた途端、「カーット!」って声がかかって、そこがドン・キホーテの映画の撮影現場だとわかるんだもの。
しかも、スペインに乗りこんでの撮影は決して順調にいっていないらしい。そのトラブルの数々を助監督やプロデューサーが言いまくるのだが、内容がやたらとリアル。
自分でここまでの挫折した撮影を皮肉って再現してるって、なに?
当時の小道具なのか、新たに似せて作った物なのか、とにかく、なにもかもがロスト・イン・ラ・マンチャしてるの。
笑わせてくれる。
それでいて、どこからが現実でどこが空想なのかこんがらがってくる作りはいかにもなテリー・ギリアム映画だし、舞台が現代になったとはいえ、狂気ともの悲しさと笑いはきっちりドン・キホーテでもあるし。
ドン・キホーテって、究極の見立てというかTRPGのハマりすぎプレイヤーというか。オタク寄りの人には、どこか彼の気持ちがわかるところがあるんだよね。
そして、映画の中での映画監督である主人公の立ち位置が、すごくいいんだよなあ。10年前に映画を撮った村に行くシーンが一番良かったな。
生きているラマンチャ、という看板に気づいて小屋に引き寄せられていくと中には……? という辺りがゾクゾクした。
あとヒロインもすごくいいんだよなあ。
撮影班の様子が描かれる前半の展開でチラチラと提示される幾つかの要素が、混沌とした展開の中でだんだんとひとつになっていくのも気持ちいい。
そして、あのラストの展開ですよ。
レズニックの『サンティアゴ』を思い出してしまった(わかる人だけわかってくれればそれでいいです。けっこう勝手な連想なので)。
あと、最後のあの巨人。あれが最高だった。映画の最初と最後で、見事に『ロスト・イン・ラ・マンチャ』の無念を晴らしているんだから。
本当に満足だ。
そして、千葉劇場は単館上映の渋い映画ばかりをやる映画館なのでお客さんも映画好きの人が多いんだろうけど、上映後に後ろから「ブラボー! ブラボー! いいねえ〜」と言っておじさんが拍手していたので、私も精一杯拍手してしまった。
本当は、あの三人の巨人が出てきたときに拍手したかったわけだし。
ログインしてコメントを確認・投稿する