暑い日が続くので、ここはひとつ、怪談本を一冊挙げてみます。
最近、福岡県宗像~福津市にある「神宿る島」沖ノ島が2017年に、ユネスコの世界遺産リストに登録されました。
その「海の正倉院」と呼ばれる沖ノ島を含む宗像大社には、決して表舞台に出てこない「怨霊譚」があるんですよ。
宗像市の名前は、戦国時代にその地を治めていた「宗像氏」に由来します。
宗像氏には正妻と側室の二つの家系があって、ある時、側室側が家系を乗っ取る為に正室側を惨殺する事件を起こしました。
これは「山田事件」と呼ばれ、地元の歴史書に残っています。
ここまでは良くある「史実」なのですが、そこから後に起こった出来事が不可解なんですよな。
惨殺された山田の局と、その娘である菊姫。そして、その侍女四人の亡霊が夜になると現れると噂になり、事件に関わった者達に災いを及ぼして、三百人以上が呪い殺される事態に…。
こじつけとも受け取られますが、事実として宗像氏の家系は「山田事件」が発端で途絶えてしまいました…。
大正四年に「福岡日日新聞」(現在の西日本新聞)で連載された竹林庵主人こと竹林巖氏の「九州一の怪談」が底本。
この本は宗像氏を中心に福岡の歴史を描いていていますが、その周辺が興味深い。
明治時代に起きた日露戦争は、学校の歴史で習ったと思います。
当時最強と呼ばれたロシアが誇るバルチック艦隊が、旧日本帝国海軍によって撃破された事は有名です。
では、バルチック艦隊と旧日本帝国海軍が「どこで戦ったのか?」
答えは、現代の福岡県宗像市にある「沖ノ島」の近くだそうです。
当時、沖ノ島にいた宗像大社の宮司は、その戦いを終日見ていたとか…。
てっきり北海道や東北地方の方だとばかり思っていたら、まさか九州沿岸だとは夢にも思いませんでしたw
宗像大社は「海の守護神」と呼ばれています。。
世界最強と呼ばれたロシア艦隊も、海の守護神の逆鱗に触れるとどうなるか?…、答えは明らかですなw
ちなみに、小説や映画で有名な「海賊と呼ばれた男」のモデルになった出光佐三も、宗像大社の熱烈な支持者です。
黒田官兵衛をご存知ですか?
晩年は、剃髪して黒田如水と改名して太宰府天満宮の片隅で過ごしていたとか。
「九州一…」で名前が出てきて驚いた。
某国営放送の大河ドラマの主人公になった人ですが。敬虔なクリスチャンだったことは知られていません。
豊臣秀吉による「基督教迫害」の裏で、仏教寺院へ根回しをして「基督教徒」を受け入れて守護しようとした節が見受けられます
作品の資料として面白かったところ。
源平合戦で、平氏が破れて「落人」が日本国中へ流されました、
平氏に与するある一族は、現在の山口県下関市へ流されます。
その姓は「安倍」。
平家が没落して、源氏が日本国中を席巻していた頃、九州北部 の遠賀川近辺で「麻生」と名乗る豪族が一大勢力を築き上げます。
「安倍」と「麻生」、その名前を聴いて誰か?は容易に分かりますよね。
「怪談」という親しみやすい?切り口から、北部九州のローカルな「地元の歴史」へと繋いでゆく語り口が面白い一冊。
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