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2019年02月17日02:51

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技術そして人類の向かう先 白野熊子さん・波多野怜奈さん@ 2/10新宿(Magnum Opus)

当おと日記筆者、一応「ナントカ予報士晴れ」の資格は持っておりますが、ここ数年の生業は、その、「ナントカ予報士」からイメージされる、直接的なお天気の話というよりは、もっぱらそのもとになるデータがお仕事のお相手。

「だって、このデータの仕様、Aって書いてあるから、処理した結果はBになるはずなんだもん!Cってなっちゃったのは、データがオカシイに決まってるんだもん!!」
「このデータ、処理したらDって結果にならないと困るから、プログラマーさん、ちゃんとそのように処理させてね!!」
といった、因果関係が固定されたお話が多かったりします。

いっぽう、当日記の主力をなす、”おと”や”ぶたい”、それに”たび”は、その光景をシンプルに楽しんだり、逆に奥深いところを考えてみたり、物思いに耽ってみたり…と、いろいろにとらえられる…という時点で、生業とはずいぶんと異なる感覚でいられる時間だったりします。


さて、少々時間がたってしまいましたが、2月の3連休の中日、10日は日曜日。
日中は、立石純子さんと武村麻実さんが奏でる”おと”(いや、”おわらい”だったかも^^)で、純粋に楽しむという感じでしたが、夜の部は、こちらで息をのみながら、いかようにもできる解釈をしていくという、観る方も相当にパワーを使う頭の体操であります。


ということで、昨年末の「あゆみ」以来の新宿シアターミラクル。

フォト


今回の演題は「Magnum Opus」。辞書を引くと「(文学・芸術の)最高傑作」などと出てきます。人類と、限りなく人類に近づくように作られた”最高傑作”なロボットとが織りなす物語。5話オムニバスという構成ですが、5話続けてひとつの物語というほうが自然な感じです。筆者は、このうち10日のAキャスト夜公演を観てまいりました。

ご出演はこちらの皆様(この写真の「CAST」の左側の列の皆様)。

フォト


白野熊子さんが当日記では3度目、波多野伶奈さんが2度目のほかは(お二人とも、前回は年末の「あゆみ」公演)、すべてお初な皆様方です。上段のお二方(加藤ひろたかさん・江益凛さん)はA/B両方に出られるシングルキャストですが、演じる役がAとBでは全く異なるようでして。Bキャストのほうも観てみたかったな…と思いますが、諸々事情により、片方のみの観覧となりました。


さて、このタイミングですので、いただいてきた脚本も読んでみての印象をつづってみようかと思います。”おと”ならばCDなどの音源に相当しますが、当たり前ながら、脚本からは音や声はでてきません。その場面をより強く思うことになり、いかようにも解釈できていくわけです。


日曜日の夜とあって、客席はほぼ満員ですが、”ぶたい”のほうは、熱気があってもなんとなく上品な待ち時間。開場〜開演の時間も、すでに舞台には出演者が二人一組で何かを話しながら毛糸球をいじっています。その二人一組は、いずれも男女ペア。なんでもない光景に、どことなく愛おしさがにじみ出ていて、今にして思えば、すでに伏線という感じになりますね。

やがて、シングルキャストのお二人によるプロローグを経て、本編に入っていきます。
ここでは、一応、案内されているお題を付しながらすすめてみます。

1:Catch The Future
技術が進んだ現代でも、この物語に登場する、人類と同様のココロを持ったロボットは、いまだ登場していません。AIでなんとか…と言えるくらいにはなってきたものの、それでも人間が思う感覚とはちょっと違う?といったことが、今はしばしば起きているような気がします。
物語の始まりは、そんなロボットが、こんなシチュエーションだと開発されうるかも…というところから。そこに選ばれたシチュエーションとは、お子さんが不治の病に倒れた夫婦の光景。互いに気を遣う夫婦ですが、このような条件下ではとても落ち着いていられないはず。
そこに、夫が勤める会社で開発されたという、女の子のロボットが登場してきます。いきなり「ママ…」。
ここから、この女の子のロボットを、ご夫婦が”子”として受け入れていくまでが、第1話。葛藤を激しい演技で表現する夫婦役(三枝聖さん・小々原奈奈子さん)と、純真無垢なロボット(波多野怜奈さん)が、それぞれ好演しています。特に、怜奈さん演じるロボット。最初は本当に心細そうな表情をしていますが、夫婦に”受け入れられたあと”は、本当の人間のように安心していく…。技術が目指しているものは、このような光景が続くことを想定していたはずです。


2:混成のキャラバン
技術の進化は、時として当初は想定できていなかった方向に進んでしまいます。やはりというか、この物語もそのようで、希望を託したはずのロボットの技術の進化が、制御不能になっていったあと…ということのようです。荒廃した土地にロボットが労働者として闊歩し、人類はもうほんの少ししか生き延びていない。そんな光景に変わっています。
もうほんの少しとなってしまった人間は、ひたすら生きているものの痕跡を探していく…。ここに、放浪者と商人が登場。商人はここでもクール、そして放浪者は本当にその先を案じつつも、疲労困憊という場面を熱演していきます。

一方、役柄上「労働者」となっている3人。すでにこれはロボットに変わっています。”人間を征服したところ”の時点ということか、このあたりでは純粋に強気というか、あちらこちらにコミカルなセリフも登場して、場内がクスッとなります。”自我”を獲得していくという筋道にそって、まずは”楽しそう”であり、一方で、”神”を名乗る人間相手には、臆せず向かっていく、そんな感じでしょうか。キーポイントのバルタザール(こちらは人間)が、”神”としてまずこの時点で登場してきます。”人間のため”につくられてきたロボットなのに、なぜこんなことに…


3:地下牢 〜吟遊詩人との対話〜
もう、生きている人類はほんの数人…とおもわれるシチュエーション。
とある地下牢の中で生きている、二人の人類、カスパーとメルキオールのカップル。一見、平和そうな雰囲気にもみえますが、出口も窓もない地下の限られた空間。そこで、懸命に雰囲気だけでも楽しそうにして、そして生き延びようとします。さきほどはコミカルな3人の労働者のうちのお一人だった、小栗真優子さんが、ここではシリアスなメルキオールを演じています。コミックな立ち位置…とおもっていたら、シリアスな場面になると、ほんとうに見とれる感じだったりします^^。
しかし、はじめはまだ冗談を言えるだけの元気が残されていますが、いろんな訪問者が現れるたびに、徐々に”閉じ込められてどうしようもない状態”という現実が、ふたりの中で認識されていきます。そして、ついには、メルキオールが先に…。一人残されたカスパーの叫びが、その場の先の混沌を伝えているようです。


4:奇蹟信奉者
生きている人間は、もうたった一人。あとはすべてロボット…。なんでも獲得することができたロボットですが、自らを生産していくことができません。したがって、このままでは、人類が”滅亡”すると、ロボットも”滅亡”してしまう…。ロボットも、”生き延びる”ためには、なんとかして”進化”しなくてはいけません。
自我を持ったロボットとここでは表現されていますが、”自我”を持っても、あくまで技術の結晶であるロボットのそれは、”人間”と比べるとどこか過度に論理的な描かれ方をしています。「××ができないから、あなたに●●してもらわなくてはいけない」「△△委員会の仕事があるから、◇◇するわけにはいきません」「★★は、※※しかできないから、”犠牲”になっても仕方がない」…。なんだか普段のお仕事がちょこっと顔をのぞかせるようでもありますね(あ、ギスギスしてる…とかいうのとは別ですよ)。そのすべてを、たった一人生き残っている人間、バルタザールが受け止めていかなくてはなりません。
Aキャストのバルタザール役は、シングルキャストの江益凛さん。時に激しく、時にやるせない情景を熱演されています。そして、バルタザール一人の力では、ロボットをどうやって作ったか(作るというより、人間としてのココロを込めたか、かもしれませんね。このあとの展開を考えると)を解明しきれない…。

そこに、ヘレナとプリムス(それぞれ、波多野怜奈さんと加藤ひろたかさん)という、ロボット同士のカップルが、バルタザールの部屋の掃除をするという名目で入り込んできます。が、見つかってしまう…。
”ロボットの作り方”を解明しないといけないバルタザールは、ヘレナとプリムスの両名を”解剖”しようとします。「連れておいで…!」

しかし、ここにこそ”進化”したロボットがいたのです。そう、そのヘレナとプリムス。ふたりは、互いに愛し合っていたわけで、そんなことはさせまいと懸命に防御。やがて、このふたりにしっかりとしたココロが宿ったことを悟ったバルタザール。3人すべての手から武器は離れ、ヘレナとプリムスの2人に、”人類のその先”を託していくバルタザールの姿。一つの時代の終わりでもあり、また始まりでもある…。息をのむというより、ほわーっとした感覚が、筆者の中で支配的になっておりました…。うまく表現できていないだけともいうけれど、とにかくこの先いいことがあってほしい…


5:ジダイノユメ
みてのとおり、お題はカタカナ6文字。時代とも次代ともとれますね。現実に戻ってきたのか、すべてがロボットになってしまったあとの世界なのか。
3組の男女が、ごく普通の暮らしを送る場面が、舞台上それぞれに展開します。いかにも若いカップル、すでにご夫婦となったふたり、そしてただいま恋愛中のおふたり。
本編ではここで初めて登場する白野熊子さん。若いカップルを演じていかれます。途中にいないじゃない…という感もありますが、開場〜開演まで、2人1組で毛糸球を作っている場面で、途中で入れ替わらずにいらしたのがこのひと。そして、早口で演じていくカップルの片割れは、まさに普段の生活でよく見かける光景。ふつうであること、普遍的であることの象徴のように見えますね。

そこに再び商人が現れ、「Magnum Opus」という名前の飴を配っていきます。もらった6人全員がそれをなめると、はて、懐かしい雰囲気。
やがて、一組ずつ、結ばれるようにして舞台をあとにします。そして、締めくくるようにもう一度登場する、ロボット「Magnum Opus」。ここでも、互いの存在を認め合うようにも、さらなる”進化”へのスタートにも見えるエンディング…。筆者個人的には、前者であってほしいとおもったりしますが。



まとまってるのか、まったくまとまっていないのか…(^^;)
演者さんの印象とともに、こんな解釈だったんだろうか…とやっていくと、結構な長さに(笑)。
だけれども、とにかく内容が濃いということは確か。実際前のめりになって観ていたところも多かったですし、観終わった後の”充実した疲れ”(結構、演劇観るのってパワーがいるってのを、あらためて実感)も、結構すごかった演目でありました。

2度目まして、3度目ましての、しろくまさんこと白野熊子さん、それに波多野怜奈さんには、それぞれささやかながら差し入れがてらご挨拶も。一番普通っぽい存在であることを演じた熊子さん。透明感のあるロボットが、とってもはまり役だったと思った怜奈さん。それぞれにすごかったです…。お初の方も含めて、次作も期待しちゃいそう。


この劇のエンディングシーンではないけれど、とにかくありがとう…というのが本稿結びのことば。皆さんありがとうございました^^。
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