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2015年12月06日20:09

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オペラ 金閣寺

この週末は2本のオペラが重なってしまいました(もっとあるかもしれない)
土日でバラせば良さそうなものですが、観たい(聴きたい)キャストが
日曜に集中してしまいましたので、佐藤正浩さん指揮の藤原歌劇団公演
「仮面舞踏会」は断念し、本日神奈川県民ホール開館40周年記念の
黛敏郎作「金閣寺」に行って参りました(原作はもちろん三島由紀夫です)

ワタシは三島文学の熱心な読者というわけではなく、既読の作品は限られており
金閣寺も(多分)読んだことはありません
事前に文庫でも買って読んでおこうかと思わないこともありませんでしたが
結局無防備のまま今日の日を迎えてしまいました

横須賀線が品川−東京間で運転見合わせという事で、余裕をもって早めに
でかけましたら、会場ではちょうどプレトークが行われるところでした
(評論家の片山杜秀さんと、今回の演出の田尾下哲さん)
それを聞くと、どうも原作を読んだだけではわからないことも多いみたいです

なにしろ、観念的な題材をドイツ語訳したものをテクストにして、それを再度邦訳した
字幕で読むのですから、単に「金閣寺に放火しました」だけではない
難解な字幕の言葉に頭をひねっているうちに、時間芸術であるオペラはどんどん
進んで行ってしまう
音楽自体はそれほど前衛的ではなく、映画音楽のようにも聞こえました
(もちろんラフマニノフ風ではありません)
電子音楽やミュージックコンクレートなど、さまざまな実験的手法を率先して
行った黛氏にとって、結局オペラは機会音楽であったのかなぁ

元々、放火の動機については理解の及ぶところではないので、オペラ鑑賞も
そういう「しちめんどくさい」ことは投げ捨てて、もっぱら歌い手の技量と
音響学的に見たオーケストラに神経を集中させました

そういう意味では、溝口を演じた宮本益光さん、友人鶴川を演じた与那城敬さん
いずれも立派な歌唱でした(土曜日に溝口を演じた小森輝彦さんをパスして正解)
オケは神奈川フィルですが、ヴェルディのようにわかりやすい音楽だとアラが見えて
しまいますけれど、合っているのかはずしたのかわからない現代曲は
気迫に押されて聞いてしまいました
むしろ合唱(東京オペラシンガーズ)は、ユニゾンが多く、それほど難曲ではないものの
却ってアラが目立ちやすいところを、ピシッと揃えていて感心しました
あるときはナレーションを、あるときは主人公の心象を、また登場人物の合唱としては
僧侶の声明を担当して、極めて重要な役どころをしっかり押さえていました
心から拍手を送りました

最終場面は溝口がこの上もなくハイテンションになり、オケは咆哮の如し
圧倒するかのように収めました(指揮は下野竜也さん)
上演時間は休憩含め2時間20分とのことで、プレトークでは田尾下さんも「第2部が
50分」と仰っていましたが、実際には休憩を含まず正味2時間20分で、終演は
17時46分でありました(まさか熱演のあまり時間が押したのではないと思います)

公演プログラムの解説は、まだじっくり読んでおりませんので、これから熟読玩味
しようと思いますが、原作を読むことはしないでしょうね
同じ放火事件を扱った(三島に対するアンサー小説である)水上勉の「五番町夕霧楼」
の方が、はるかに好きですワタシ
ラストの一文は泣けますよね(今、書棚から探し出して読み返し、泣いております)
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