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2015年09月22日15:15

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脱走者たちに聞くISISの実態

もう飽きたのか、最近のマスコミ(少なくとも日本の)は偽イスラム国ISISに関する報道が影をひそめた気がします。もちろん益々危機的状況に陥っているのがISIS問題の現状です。
そんな中、昨日ツイッターでCNNが、安全保障の専門家でICSR (ロンドンのキングス・カレッジの過激活動研究センター)のニューマン教授が発表した、示唆に富む論文を載せていましたので、要点のみ簡単に訳してみました。ご参考まで。
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ISISに参加する若者たちの生い立ちや背景、参加経路、動機などについては、既に多くの報道がなされている。だが、ISISで見聞きしたことに我慢がならず、仲間を捨てて逃げ出してきた脱走者については、殆ど報道もされていない。
しかし、ISISが流すプロパガンダが如何に欺瞞に満ち、この集団が偽善者の集まりであるのかを世に示すことによって、この脱走者たちの証言が、現在世界規模の問題となっている若者のISISへの流入を止めるカギとなると思う。

この考えの下に、58人の脱走者の証言を集めることに成功した。この58人の三分の二は今年脱走した者たちで、この夏だけで三分の一が逃げ出してきた。
58人という数字は確かに多くはないが、その証言は、ISISに失望し秘かに脱走を考えている多くの若者たちを代表しているものと信ずる。

脱走者の経験したことはさまざまである。必ずしもこの58人全員が自由と民主主義の信奉者に戻ったわけではない。国に戻ってから、実際に犯罪を起こした者もいる。
彼らはある時点においては、現代で最も暴力的で残酷な独裁組織の熱心な信奉者だったのも確かだ。だが、もちろん今はISISの強力な敵である。
58人の証言の内容の確かさにも強弱がある。また、脱走の正確な理由や状況も全てが確かなものとは言い難い。
だが、全体として彼らの証言が信頼に値するものと信じている。

58人の証言の中で強く印象に残っている事実が4つある。
第一は、他のスンニ派グループに対するISISの行動に批判が多く聞かれたことだ。彼らによれば、アサド政権打倒はISISにとっては大事なことではなく、アサド政権に抵抗する他のスンニ派グループには冷淡だ。
多くのISIS戦闘員の関心事は、他の武装グループへの反目と首脳部の「スパイ」「裏切り」に対する妄想的弾圧が中心だ。
これでは、シリアやイラクで不正と戦うためにやって来た若者たちが目指す「聖戦」とは似ても似つかぬものだ。

次に多かったのがISISの残酷さ。多くの証言が残虐行為と無辜の庶民の殺害行為に関するものだった。人質をアットランダムに殺したり、村人に対する酷使や組織的な虐待行為、更には司令官による自分の戦闘員の殺害などなど。
ただ、不思議なのは証言の中に少数民族への虐待の話は一切でてこない。残虐行為の対象は、全てISISの宗派間闘争というレンズを通して見られ、特に相手が他のスンニ派グループの場合に激しさを増すように見える。

第三には汚職の蔓延がある。汚職が組織的なものとは誰も証言していないが、司令官や首長たちの個々の汚職行為に怒りが向けられていた。あるシリア人脱走者は、アラブ系以外の戦闘員に対する不当な優遇措置を激しく非難している。これはISISの理念とも、イスラム教そのものの哲学にも反した行為であると。
脱走者の多くは、戦闘の厳しさには耐えるが、不公平、不平等な扱いや人種差別には我慢ができないと訴えている。
「あれは聖戦などとは程遠いものだ」肌の色でトイレ掃除を強要されたインド人元戦闘員は怒る。

第四は、ISISの社会の暮らしが過酷で全く期待に反するものであったことだ。
自己中心的な考えでISISに参加した人たちが特に激しく失望していた。
そして全員が、プロパガンダが約束していた、車などの贅沢品は夢物語であったと直ぐに気がついたと語っている。

多くの若者にとって、ISISでの戦闘経験は、期待して行った格好いいアクションやヒロイズムとは縁遠いものであったようだ。結局外国から参加した若者たちは弾の餌食として使われただけだった。

これらの証言には重要な意味がある。脱走者が存在すること自体が、ISISの誘いに乗って殺到する若者たちの幻想と決意を共に打ち砕くものだからである。
これらの証言は、ISISの矛盾と欺瞞を明確に教えてくれる。
これらの証言は、さらに多くの脱走者を生み、更に、ISISに参加しようかと考えている若者たちを思いとどまらせることが出来るかもしれない。

政府や市民社会全体で、これら脱走者の価値を認識して、かれらが自由に発言できる環境を整えてやる必要があると思う。できれば、政府が社会の中で彼らの居場所と安全を確保してあげて欲しい。更に、現在彼らの社会へ出る意欲を削ぎ、閉じ込めている法的制約から解放してあげるのも緊要である。

もちろん、脱走者全員が善人とは言わない。また彼ら全員が社会の注目を浴びることを望んでいる訳ではない。
だが、彼らの声は力強く明確である。「イスラム国はイスラム教徒を守るのではなく、彼らを殺しているのだ!」と。彼らの声に耳を傾けようではないか。


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