昔、押入れの中には、たくさんの夢があった。今、押入れの中には、たくさんの殻が転がっている。毎日たくさんの 何か が、生まれ、毎日たくさんの 何か が、消えていく。その全てを大切にしたいけれど、そのどれをもしっかりと大切にできずにいる。気泡の
一歩、踏み込む足が沈んでいく。安定を崩した体は砕け落ちて、倒れながら自身を見ている。どうして僕は笑っているのだろう。過不足のない今日は疑問でしかなく、誰が倒れているのかすら分からない。あれ、そういえば僕は悲しんでいなかったっけ。年々気持ちに
信じる事を止めた覚えはない。でも、いつからか疑う事をしなくなった。それは、同時に信じる事を放棄してしまっていたのかも、と或いは、信じたい対象を失ってしまったからなのかも、とあの頃と同じ蝋燭の中で、昨日の残り香が揺れている。ゆらり、ゆらり、ゆ
朝から雨が降り続いている。僕の住む場所も梅雨入りをして、夏の準備を始めたようだ。梅雨といえば、「いま、会いにゆきます」という映画が好きだ。恋愛映画はあまり見ないのだが、友達が原作である市川拓司が好きで勧めてくれた。それ以来、中村獅童さんがと
遠くで虫が夜を呼んでいる。こっちだと、こっちへ来いと手招いて明日を教えているようだ。遠くで誰かが鳴いている。ここだ、ここにいるんだと手を振って自分を知らしているようだ。月は変わらずに今夜も明るくて星は変わらずに今夜も眩しくて拠り所はどこなの
黄緑色の昨日が終わって、グレーな明日の間に浮かんで漂う。久しぶりのフラットな感覚が楽しくもあり、どちらにも転べる、転んでしまえる不安定さが懐かしくもあり、少し言葉を過去へと流してやろうかと少し僕自身が溶けて消えていくのではないかと夜と朝の隙
赤いポストが好きだ。海外では赤ではなく、青かったり黄色かったりするものもあるらしい。形も色々なものがあって、オシャレなものなども多い。でも、どれもどしんっと変わらぬ姿で立ち続けている様が、なんだかなんとなく愛おしい。君にまだずっと恋してるっ
犀川創平。僕がこの名前と出会ったのは高校生の頃だった。それまで小説などとは無縁のバスケ少年だった僕が、初めて欠かさず買い続けた小説に出てくる主人公だ。その話ではたくさんの人が死ぬのだが、悲しみを独特な観点で丁寧に紡いでいくお話が大好きだった