朝、目覚めたら女が冷たくなっていた。ふざけた物言いと思うだろうが、俺はとても悲しかった。とてつもない喪失感を覚えた。そして、もうこれで終わりだと思った。終わりでいいと思った。俺はもうゴールしたんだと。その厳粛な静寂を破って、仲間の一人が無様

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それまで作品の題材とすべく、いろいろな人間の転落人生を取材していたんだが、その中で、札付きの毒婦がいることをつかんでいた。結婚詐欺紛いの甘言で男を次々と篭絡し、金をまきあげている女。その女の周辺では少なくとも二人の男が命を落としている。公判

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順を追って話そう。先にも書いたように、知識も教養も貧弱な俺は、いざ物を書く段になって自分には何も材料がない事に行き詰まった。そこで俺は開き直って（そう、開き直るのが俺の悪い癖だ。ガキの頃からよく逆ギレ野郎と言われたものだ）根無し草の自分を更

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先生は少し「頭でっかち」なんだよ。啓蒙思想的理知主義に毒されていると言ってもいい。実はこの感想文を書くために、少し先生の他の作品も知りたいと思って、弁護士先生に頼んで本屋に行ってもらったんだよ。そして、先生の著書『MM9』と『”境問題のウソ”

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気を悪くしたかい、先生。しかし俺としても、この語り部に自己投影をしながら読んでいて、予想外の予定調和的なぬるいラストにたたき落とされて、行き場のない気分を抱え込まされたんだからおあいこだろう。そう、俺はこの語り部に感情移入していた。それは、

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さて、本題の感想文を書かせてもらうよ。まず、この小説の構成の妙に驚いた。それぞれ別々に書かれた短編小説を、一つのテーマのもと力技でまとめ上げたその構想力にはおそれいったよ。だが、先生は短編向きなのかな。後半の中編二作はひねりもなくて退屈だっ

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高３の時、俺のオヤジが鬱病で死んだ。それで俺の人生が一変した。と、公判記録には載っているだろうから、そういうことにしてもいいのだが、実のところ、俺としてはオヤジの死はそれほど衝撃的ではなかった。そういう兆候は長い時間積重ねられていたものだっ

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