ずいぶんと昔に思い付いたネタを思い出したので掲載。
設定としては、三界の闘士たちが生き返ってて、でもアイオロス兄さんだけは死んだままで、カノンは聖域にいる設定。
『閻魔帳の使い方』
その日、聖域を訪れていた沙織の御前でミロとアイオリアの模範試合が行われていた。
「喰らえ、アイオリア、真紅の衝撃…」
だがその後、ミロの口から出た言葉は必殺技「スカーレットニードル」ではなかった。
「○■※△ーッ!」
およそ未成年の沙織には聞かせられないような言葉がミロの口から飛び出した。
「きゃあああーっ!」
驚きのあまり赤面した沙織が叫ぶ。
「ミロ、何を言っている!」
沙織の隣に控えるサガが叱責する。
「い、いや、おれはこんなことを言うつもりでは…」
「ふざけるな、ミロ!受けろ、獅子の牙を!」
だが続いてアイオリアから出た言葉も、やはり人前でおおっぴらに言えるような単語ではなかった。
「▲☆●※ーッ!」
「どういうつもりだ、アイオリアまで!」
「ち、違う!おれはこんなことを言っては…」
「どういうことだ!おれたちが必殺技を叫ぼうとすると、放送禁止用語を口走ってしまうとは!」
「これは…何かの呪いか?」
その時、闘技場にいたカノンが怪しい気配に気付いた。
「むっ…、そこにいるのは何者だ!?」
カノンの拳が空を撃つ。すると空間の狭間から現れたのは、冥闘士の一人、天英星バルロンのルネだった。
「ルネ、なぜお前がここに…。さては先程から必殺技が変な言葉になるのは、お前の仕業か!?」
「ふっふっふ…」
ルネが手にした閻魔帳をめくる。
「この閻魔帳にはあらゆる人間の人生が書き込まれている。逆に言えば、閻魔帳の内容を改ざんすることで、人間の人生を書き換えることが出来るのです!あなた方の必殺技を放送禁止用語にさせていただきました」
「お、おのれ…」
「はーははははっ、カノン!これであなたもアテナの前では必殺技を使えまい!聖戦での恨み、ここで晴らさせていただきます!」
だがカノンは躊躇なく銀河を砕く拳を放った。
「◆※△★ーッ!」
もちろん、卑猥な単語を大声で口にして。
「きゃあああーっ、カノン、やめてちょうだい!」
再び沙織が赤面する。
「カノン、アテナの御前で何を言うか!」
サガの鉄拳がカノンの頭に飛ぶ。
「痛っ!仕方ないだろうが、サガ」
カノン最大の拳で吹っ飛ばされたルネからカノンは閻魔帳を取りあげた。
「バカめ、幼い頃からさんざん悪事を働いてきたおれよ。今さらあの程度の言葉を言うのに躊躇するわけなかろうが」
「お、おのれ、カノン〜」
ぐぬぬぬ〜と打ち倒されたルネがうなる。
「さて、閻魔帳を書き直させてもらう。…人生を書き換える、か。ついでにおれの悪事を抹消させてもらうかな」
「やめんか、カノン」
「サガ、お前の悪事も抹消してやろうか?何ならアイオロスのページに手を加えて、奴を生き返らせるか?」
「……!」
その時、沙織と一緒に聖域に来ていた氷河が叫んだ。
「マ、マーマ!マーマを生き返らせてくれ!」
「氷河、まだそのような乳臭いことを!」
師のカミュが叱責する。だが血相を変えたのは氷河だけではなかった。
「エ、エスメラルダ!エスメラルダのページはどこだ!?」
「兄さんまで!」
ドタバタ劇に終止符を打ったのは、闘技場に降臨した天猛星ワイバーンのラダマンティスだった。
「まったく、冥府に姿が見えないし、閻魔帳もなくなっていると思ったら、こんなことをしていたのか、ルネ」
「ラ、ラダマンティス様〜」
「カノン、閻魔帳をこちらに」
「ああ」
カノンがラダマンティスに閻魔帳を手渡す。
「内容は元に戻しておく。私情で閻魔帳を使うのは禁止事項だぞ、ルネ。お前はしばらく謹慎だ」
「は、はい…」
「では迷惑をかけたな、聖闘士たち」
そうして冥闘士二人は冥界に帰還していった。
ある日の聖域で起こったちょっとした事件であった。
<FIN>
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