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陰陽師@二次創作小説コミュの妖怪小話其之百六十七【人柱師・四】

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【人柱師・四】
冬弥「あん…たは?」

火男「俺は、火男。ずいぶんと哀しい火を焚いてるが、何かあったのか」

冬弥「別に…。流された橋の残骸を、燃やしているだけさ」

別に。と答えはしたものの、一度言葉にしてみれば、先の大雨で橋を流されたこと、新たな橋に人柱をたてること、それから、初が人柱に選ばれたこと。
胸に渦巻いていた思いが、口をついてあとからあとから溢れ出た。
初が、可哀想だ。
と吐き出すように呟けば、知らず、涙が流れ出た。

火男「その…初という娘を助けたいんだな」

口を挟むこともなく、耳を傾けていた火男が、静かに問うた。

冬弥「けど…、人柱を建てなくちゃ、また橋が流される。
村のみんなは、初にその人柱になれというんだ」

火男「それは、違うな」

冬弥「え?」

火男「この川の神は、人柱なんて望んじゃいない。
土の中に埋めた人なんて、喰えやしないと言うだけさ」

冬弥「川の…神が?」

火男「それに、橋は架ける大工の腕次第だ。
俺の知り合いに、木の扱いならそれなりに秀でた友人がいる。
鬼の一味で熊童子という奴だ。
良い橋も創ってくれるに違いない。
こちらの願いを聞き入れてくれたら、の話だけどな」

冬弥「鬼…熊?」

火男「けど、一番厄介なのは、その人柱師だな。
村のみんなはそいつの話をすっかりと信じ切っているんだろう。
今更人柱なんかいらないと主張したとして、果たして聞き入れてくれるかだな」

おそらくは、無理だろう。
と冬弥は顔を曇らせた。
流されない橋を架ける。
その望みに村の誰もが縋っていた。
ましてや冬弥が初と仲が良いことは、村の中でも知られており、身分違いの二人だと、あまり良い目では見られていないことも知っていた。

火男「そうだ。京の都の安倍晴明の屋敷を知ってるか」

冬弥「え…。ああ…」

安倍晴明といえば、都で度々噂にのぼる。
その屋敷の前を何度か通ったこともある。

冬弥「けど、安倍晴明といえば天上人御用達の陰陽師と聞いている。
こんな川向こうの村の話なんか引き受けてくれるとは思わない」

火男「確かにそうだ。だが、安倍晴明には何人か陰陽師の弟子がいてな、そのひとりと俺は知り合いなんだ。
安倍晴明直属の陰陽師なら、村の者も少しは話を聞いてくれるかもしれない」

男の言葉に、ふさぎ込んでいた気持ちに初めて希望の灯が見えた。
初を助けられるかもしれない。

冬弥「いこう。善は急げだ。時間がない」

そういうと、船着場で小舟を一漕借り出して、二人は橋の向こうの京の都へ向かっていった。

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