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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十六章 惨劇10

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十六章 「惨劇」10 コワレル



「……ヘル…、迎えに来たよ。」


腕を掴まれ、耳もとでささやく声。


「お前は……」


動揺を隠せずにいるヘルは、腕を掴む男を見た。


黒く流れるような髪と、キリリとした眉。白い肌を携え、整った顔立ちをしていた。



「ナック・パーキーソン……?!」



驚いたように目の前の敵の名を呼ぶのはスネイプ。
およそ1年と半年前、インキュバスの亡霊であるこの男は、サキュバスの血を継いだレナスを襲った。

全ては、この男の企みによる、子孫繁栄の為。
それに失敗したナックは、スネイプとレナスを辱め、その想いを抉った。

後にホグワーツに戻ったレナスは、再びインキュバスに襲われる事になったが、それを阻んだのがシオン。乗っ取られたビルと、レナスの窮地を救う。
力の足りなかったインキュバスは、追い返された。


そのナックが、シオンに警告を伝え、何故ヴァンパイアとの戦いに割って入るのか…?


目の前の現実に混乱の色を隠せない。



「何故、貴様がここに…!?」


訳が解らず、スネイプが怒鳴ると、ナックはその声の主を冷ややかに見た。


「あぁ…、スネイプ教授。ごきげんよう…。相変わらず、地に這うのがお似合いだね?」


立ち上がれないスネイプを、まるであざ笑うかのようだった。


以前に見たときとは違う。
スネイプもシオンも気づいていた。


シオンは、ほんの数時間前に顔を合わせている。
にも関わらず、明らかに違う。


以前は半透明のゴーストだったはず。なのに、今ではどうだ?

ヘルの腕を掴んでいる。それ即ち、実態があることを意味している。
また、誰かの体を乗っ取ったのだろうか…?以前、ビルの体を乗っ取ったように…。



いや…違う。



以前とは明らかに違うのは…瞳の色。
並んで立つヘルと同じ色をし、赤く染め上げられている。

当のヘルは、掴まれた腕を引き剥がそうと、もがいている。時折「放せ!」とナックの腕を殴りつけてさえいたのだ。


「インキュバスの貴様が、何故邪魔をする…!!?」


腕を振りほどけぬまま、ナックを睨みつけるヘル。
ナックはというと、自身の肩付近にある顔を覗きこんだ。その顔は、新しい玩具を手に入れた子供のような顔つきだった。


「僕ね、君達のマスターに、血を貰ったんだ!まぁ、君達ヴァンパイアとは違う、【グール】なんだけどね。」

「【グール】…だと…?!!」


一瞬、自身の耳を疑ったヘル。
抵抗する腕を一瞬止めてしまうほどに動揺していた。


「ほら、ちゃんと目だって赤いでしょ?そうそう、ちゃんと【名前】も貰ったんだよ!」


今度はニコニコと、嬉しそうに笑うナック。


「僕の名前は【バルドル】って言うんだ。」

「な……?!『名を与えられる』のは、ヴァンパイアのみの筈!何故、グールごときの貴様が…!」

「君って、本当に『表面』しか見ないんだね…。」


今度は、不機嫌そうに眉を寄せるナック。
いや、バルドルと名乗る男。

掴んだ腕を、勢い良く引き寄せた。


「…………ッッ?!!」

「…煩いから、黙っててよ。」


腹部にあてがわれた、掌からの衝撃。
体を貫く衝撃が瞬時にヘルの意識を奪って行く。



「……き…さま…」



【ヘルを連れ戻せ。】

【ミシェイルが……壊される前に…。】



「それが、マスターからの命令だから…。」

「………な…に……?」


地に膝をつき、崩れるように地に頬を着けた。
徐々に重くなっていく目蓋を持ち上げ様にも、意識だけは遠のいて行く。まるで夢の世界にでも誘われるように…。


「あと…もう一つ、伝言。」

「…………」









【 勝 手 な 真 似 を す る な 】









「確かに…伝えたからね?」



地に倒れたヘルを気遣うでもなく、冷ややかに言葉を放った時、ヘルの意識は途絶えた。


「まったく…こういう、自分の物差しでしか計れない人…嫌いなんだよね…」


イライラしているのは明らか。
まるで子供のように、機嫌もこコロコロ変わる。


「マスターが何を考えてるのか、知りもしないで、勝手な事して…」


そして、独り言もブツブツと多い。


「表しか見ないから、こういう事になるんだよ。」



イラついた様に眉を寄せ、ヘルを肩に担ぎ上げた。



「お騒がせして、ごめんね。僕達、すぐに退散するからさ。」


くるりと振り返り、未だに立ち上がることが出来ないスネイプとシオンに向き直った。
まるで八つ当たりするかのように、口を尖らせて。



「レナス…治るといいね。」




【もっとも…、もう…

壊 れ ち ゃ っ て る 

かも知れないけどね…】






それじゃ。と手を上げると、空間に切れ目と歪みが現われた。
踵を返し、その先に一歩踏み出す。




「待て!」




スネイプの怒声でピタリと足を止めたナック。



「貴様…確かにゴーストだった筈。今はヴァンパイアの仲間になったとでも言うのか…?」


スネイプの疑問。
それが徐々に形になっていく。


「ヴァンパイアの仲間なら、何故それを阻む?!貴様らの言うマスターとは何者だ!」


そして、爆発する。


「襲うつもりなど無かっただと…?!レナスの翼をもぎ取り【こんなつもりは無かった】で済ませるのか!!ふざけるな!!!!」


体力の限界。それでも言葉を搾り出し、大声を張り上げただけでも、肩で息をする。

ナックは、ため息をつき、振る返ると、スネイプを睨みつけた。
赤く染まった、その眼光で。


「……そんな事、【今】聞いて、どうしたいのさ?」

「なに…?」

「今、君たちに必要なのは、一刻も早いレナスの手当てでしょ?【何故?】【どうして?】そんな疑問を解消した所で、何もならない。違うかい?」

「貴様!」


杖を構えたスネイプだったが、ナックはヘルを担いだまま、身構える事もしない。


それは、何を意味しているのか…?ナックもシオンも、スネイプもわかっていた事だった。





「ねぇ、スネイプ教授…?ヘルは、ヴァンパイアの中で、最も能力の低いヴァンパイアなんだよ…?」





………………。
言葉が詰まる。頭の中が白くなる。







「ヘルさえも、退ける事が出来ないで、僕に勝てるとでも……?」






スネイプは唇を噛む。

自分達が退ける事が出来なかったヘルを、ナックはいとも簡単に退けた。

その時点で実力の差は明らか。ソレが、グールであり、この【バルドル】の能力だと言う事を、まざまざと見せつけられ、ギリギリと握った拳の中に爪が突き刺さる。


「一つ…聞きたい事がある。」

「……今度は、君…?」


面倒だと言わんばかりに、今度はシオンを睨んだ。
ナックが動くたびに、片に担がれたヘルの逆立った髪が揺れる。



「マスターと呼ばれる者が…、【この娘に手を出すな】と、そう言ったのか…?」



その質問に目を開き、眉を上げたのはナック。
シオンが何を意味して、その質問を繰り出したのか、察しがついたからだ。


「マスターは…、【まだ力が定まっていない娘に、手を出す必要は無い。】そう仰った。」

「まだ、と言う事は、いずれ引き入れるつもりだったのか!?そんな事は断じて許さん!!」



「スネイプ殿…。少々黙っていて下さい…。」


噛み付いたスネイプを諌めるシオン。


「僕は、レナスに死んでもらったら困るんだよ。ヴァンパイアに成り下がってもらっても困る。僕の目的は、レナスだけだから…。」



「……なるほど…」




言葉の全てを聞かずに、何かを理解したシオン。




「スネイプ殿…。暫くは、レナスが襲われるという愁いは無くなった。一先ず、治療に当たりましょう…。」

「貴様…何を考えている…?!」


自然とレナスを抱えている手に力が入る。


「この者も、我々もレナスを死なせるわけには行かない。我々の利害は一致しているんですよ…。よって、レナスの身の危険はこれ以上は無い、と言う事だ…。少なくとも…【今は】、ね…。」

「信用するとでも言うのか!!?」


「いいえ…信用など…。しかし…今は一刻を争う…。」

「…………。」



状況は、一刻を争うなどと言う物ではなかった。
一秒ごとに命を削られていくのは、事実だったのだから。


「僕にとって、レナスが生きていてくれないと意味は無いからね…。」

「……ほぉう…?あぁ…。よい事を思いつきました…。」


シオンの不敵な笑いに、息を呑むスネイプ。




「状況は、真意を語っている…。目的はどうあれ…。」



首を傾げるナック。



「そこで…提案なのだが…」



そして、シオンの言葉が形を表して行く。




*******




空気が渦巻く。

赤、青、白、黄色が渦巻く、
ふわふわとした…、それでいて、ねっとりとまとわりつくような、浮いてるような、地に足が着いていないぐるぐるとした空間を、ヘルを背負い歩く。



まったく…本当に余計なことしてくれたよな…。
僕は戻って、フォローでもしておくとするか…。


でも、ヘルの【オシオキ】は…避けられないだろうね。



誰も居ない異空間で独り言をもらすのは、ナックだった。




まさか…あの使い魔が…
この僕に…あんな提案を…ねぇ…?





フフフ……
レナス、君の使い魔って、やっぱり凄いよ…














レナス…。君が【壊れて】いない事を祈るよ…。



無駄な足掻きかもしれないけどね…?











Fin

コメント(2)

ナックがグールexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & question
インキュバスだったのに、グールになったんですかexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & questionexclamation & question


にしても…
レナスが壊れるなんて言い方が気にくわないですウッシッシウッシッシウッシッシウッシッシウッシッシウッシッシむかっ(怒り)むかっ(怒り)むかっ(怒り)むかっ(怒り)むかっ(怒り)むかっ(怒り)むかっ(怒り)
レナスをまるで、物みたいにexclamation ×2exclamation ×2exclamation ×2exclamation ×2exclamation ×2exclamation ×2


なんだか、まだまだ謎が多そうですね泣き顔泣き顔泣き顔泣き顔泣き顔泣き顔泣き顔バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)バッド(下向き矢印)
璃っちゃん

ナックさんグールになって新たに復活です。
というか…どうしようか迷った挙句に、ナックさんだったら、こうするかなぁと思いました( ̄0 ̄;

むちゃくちゃだけど、そのムチャさ加減がナックさんらしいかなぁ〜なんてねゞ( ̄∀ ̄*)

壊れる。
そういう言い方をするのにも、理由があるのよ。
少なくともハーグリーヴス家は、レナスを仲間として迎え入れたいんじゃない。
道具として利用したいだけなんだからね…。

謎はまだまだ多いよ。
こんがらがったら、申し訳ない。

ハリポタ世界観が崩壊しても、それは…
うん、がんばります…( ̄ー ̄+

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