ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十二章 特訓と成果16

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十二章 「特訓と成果」16 説得



《レナス……!》


主の名を叫びかけたシオン。


しかし、それを制した空気がある。



一瞬にして黒い雲が晴れた。
何かに散りつかれたように、はたっと…。


何事かと、シオンとアルティアが視線を泳がせる。


目に止まったのは、巨大な鳥の視線近くを、羽ばたく小さなグリフィンの姿だった。

それは、金色の大きな鳥も注目していた。
気を取られたのか、すっかり雷を降らせる事を忘れてしまったかのようだった。

小さな小さな体で、ふらふらと一生懸命に。既に四脚の足を動かす体力が残っていない。
項垂れながら、それでも翼だけで羽ばたき、キュ〜キュ〜と何かを訴えている。
一定の高さで飛ぶ事も出来ない。上下に激しくぶれるその高度。
力を振り絞って、前足をバタバタさせて高度を上昇させるが、今度は翼の動きがやんでしまう。



その瞬間だった。
巨大な鳥は、翼を地に着けグリフィンが床に激突するのを妨げる。



『まさか……グリフィンを従えているとは……。』



巨大な鳥は、翼からグリフィンを放し、床に寝かせてやると、そっと嘴で撫でた。

むくっと起き上がる小さなグリフィンは、クワクワとじゃれ合うようにその大きな鳥を見上げる。
まるで、嬉しそうな仕草。

すると、巨大な鳥が力いっぱい頭を擡げる。小さなグリフィンが驚かないように、ゆっくり大きな動作で。
そして、敬意を表したかのように…。


「大成功…!って所っすね。」


一瞬アルティアとシオンを振り返る。
そして、一歩飛び出し、レナスはギルガに向かって足を進ませる。


「どうなっている……?」

「なんで……?」


当然の疑問が二人を硬直させる。

レナスの背中を目で追い、ギルガを助け起こすのを見届ける。
その奥に目をやると、フェンリルがご丁寧にお座りをして待っている。もう、大きな鳥と対決するつもりは無い様だ。


「もう大丈夫だよー!」


ギルガを抱き起こしたレナスが大声で2人に手招きをする。
一体何が起こったのか…?


『そなた…グリフィンを従える者か?』

「まぁ…そうだね。」


ギルガを抱えたままのレナスに頭上から声がした。
紛れも無く、それは巨大な鳥からなのだが…。


『非礼を詫びよう…。』

「非礼なら、あの2人に詫びてね。それより危なかったよ?もう少しであんたのご主人、ミイラになっちゃう所だったんだから…。」

『それは…如何様な意味か…?』


腕の中のギルガを見るレナス。倒れた際に鼻先を擦ったのか、少し血が滲んでいる。


「レナス!」

「これは……。」


アルティアとシオンが走り寄る。いったい何事なのか…?と。


「いったい…どうして?何が起こったの?」

「う〜ん…。順番に行こうか…。」


レナスとギルガの元でしゃがみ込み、混乱するアルティアに対し、優しく微笑む。


「そこに居るギルガのパトローナスは、【サンダーバード】。」

「サンダーバード…?」


【サンダーバード】
姿は大きな鷲に似ていて、雷を操る。
時には鯨さえも襲うという。
中には人の言葉を解する者もいるという伝説が残っているが定かではない。


「まぁ…こんな感じ。彼が喋ったとしても、不思議じゃあないって事。」


とりあえず、ギルガを仰向けに寝かせて、へたり込み項垂れるレナスは深く深く溜息をつく。
さすがに、遅くまでの訓練と、この巨大な鳥の相手とあっては、疲労が溜まらない訳が無い。


「しかし…。何故……」

「『グリフィンを見て攻撃を辞めたんだ?』でしょ?」


レナスはシオンの言葉の先読みをした。言葉を最後まで繰り出せなかったシオンが、軽く溜息を混じらせるも、頷いてみせる。


「物知りなシオン君も、伝説とか神話になると、からっきしって訳ですかぁ〜?」


からかう様にニヤニヤと笑うレナス。
いつだって、自分よりも優れているシオン。その彼が、自分が知る事を知らないでいる。その事実が堪らなくレナスの悪戯心をくすぐった。

すると、グリフィンがへたったレナスの元に走りよって来た。クワクワと言いながら、レナスに擦り寄る。
その頭を指先でそっと撫でるレナス。するとシッポを振り、喜びだす小さな生き物。


「グリフィンはね、猛禽類の聖獣の中で王位についてるって伝説があるんだよ。」

「もしかして…それで…?」

「サンダーバードは埃高く、気高い種族。だから、いっくら小さいとはいっても、王位についてるグリフィンに対して、手を出すどころか、敬意を表したって訳。」


なるほど…。
全員の口からそんな言葉が聞こえてくるかの様に、腑に落ちた顔をしている。

すると、鎖の音と共に、大きな影がレナスたちを覆う。
フェンリルまでもが、その輪に入ろうと歩み寄り、いわゆる伏せをする。

グリフィンは遊び相手が増えたと、ばかりにこんどは、フェンリルにじゃれ付く。
しかし、フェンリルは微動だにしない。
下手に動いて潰してしまっては可哀想だとでも思ったのだろう。

レナスは、獰猛な筈のフェンリルが、大人しくする姿を見て、シオンのパトローナスらしい奴だと思うのだった。


そして、一息つき見上げる。
巨大な鳥と問答を始めるレナス。


「ねぇ?さっきも言ったけど…。あんたがご主人を、守りたいって気持ちは分かる。でもあ、その守りたいって行動は、時には傷つけるって知っておいた方がいい。」

『主人がか…?』

「あんたは、どんなに気高い種族でも、パトローナス。ギルガの力を媒介にしている存在。あんたが無茶をすればする程、ギルガの小さな体に負担がかかる物なんだよ。」

『その様な事が……。』


巨大な鳥に向かって、にこっと笑う。
解ってくれたんならいいよ。
そんな笑みで投げかける。そして、人差し指を立てて再びサンダーバードに投げかける。

しかし、この鳥は、頭が悪い訳でも、能力が足りていない訳でもないのに…。主人に似て無知であることが伺い知れる。

本当に……パトローナスは主人に似るんだな…。
そんな事を内心思うレナスだった。


「んで、本題。ギルガはまだ、体が成長しきっていない。力のコントロールがままならない。協力してくれる?」

『主人の為だ。出来る事ならば…。』


少し頭を下げ、自分の主人であるギルガを覗き込む。心配する気持ちはレナス達と、なんら変わらないのだ。


「多分なんだけど…、思い込んだらすぐ行動に起こすでしょ…。あんたの性格…。」

『ギク…。』

「カッとなったら、大暴れしちゃう…みたいな…?」

『ギクギク…!!』


図星をつかれ、たら〜りと大粒の汗が見えそうな勢いの大きな鳥。
レナスに視点を合わせ、たじたじと言った具合だった。


「その性格が、あんたの主人の妨げになってるんだと思うんだよねぇ〜。」

『………。』

「だから、少し抑えてほしいの…。ギルの為に…。出来る?」


少しだけ笑って、レナスは後ろで腕を組み、小首を傾げてみる。
全ては、ギルガの為なのだと…。




『……ぜ、善処しよう…。』




瞳を閉じたサンダーバードからの苦悩の言葉。
すると、彼は言いたい事を理解したのか、自分自身で姿を霧に変える。


『そなたのパトローナス…グリフィン。そして、フェンリル…見事だ。またお会いしよう。主人を…、よろしく頼む。』

すると、ふわりと消えていった。
これ以上ギルガに負担をかけまいとした、配慮だったのだろう。


任せてよ。
そんな言葉をぽそりと呟く。


そして、レナスは、その様子を黙って見ていたアルティアとシオンに顔を向ける。


「それで一応…成功!みたいな…?」


力なく笑うレナスは、立ち上がる。制服についた砂埃を掃いながら。


「なんか…凄いんだね…。」

「パトローナスとその持ち主は何処か似てる部分がある。だから説得も必ず出来るって思っただけ。にしても、皆のパトローナスって凄いね!私のとは大違いだ。」


ふぅと息をつき、一瞬ギルガに目をやったあと、フェンリルに目をやると、前足を交差させ、その上に顎を置き目を閉じているフェンリル。相変わらず伏せの姿勢。その背中では、彼の銀色の毛並みを毛づくろいをするグリフィンの姿がある。

なんか…あの構図が…人事ではない気がするのは、気のせいか?
などと思うレナスだった。


「でも…どうしてレナスのグリフィンは小さいの?小さいって言うか…子供…って感じがするけど。」


何気ない親友の言葉に、一瞬レナスは静止する。
虚ろな視線。
力なく垂れ下げた腕。
下げかけた顔を無理矢理上げる。


その場にいた誰もが、その様子の変化に気が付いた。


「レナス…?」


聞いてはまずかったかと、アルティアが恐る恐る声をかける。


「知りたい…?」


いつになく笑顔だったレナス。


「最初はね…小さくなんか無かったんだよ?」


どこか様子がおかしい。


「最初はそれはそれは、でっかい生き物でさ〜。このフェンリルほどじゃないけど、多分象とかと同じくらいの大きさかな?もう手が付けられない程じゃじゃ馬でね〜。」


明るい顔が…徐々に曇り始める。




「私がパトローナスを初めて召喚したのは、2年の時。身を守る手段の一つとして、ダンブルドアが教えてくれたの。」




重苦しい空気を纏う。




「あれは…ジェームズとリリーが死んで間も無くだったから…。」





****続く****

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

さしゃの二次小説(ハリポタ) 更新情報

さしゃの二次小説(ハリポタ)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング