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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十二章 特訓と成果15

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十二章 「特訓と成果」15 激突



― 助けて ―


まるで祈るような叫び


アルティアは身を屈め、体全体に力を込め衝撃に備える。



突然体がふわりと浮いた。


レナスは、アルティアの腕の合間から、ぼんやりとそれを見ていた。


突如現れた……これは…
犬…?狼…?


一瞬でその背中に揺られる。銀色に近い毛並み。
そして、その巨大さ。

アルティアとレナスの2人を担いでも、まだその背中は余る。

狼は、その場を避け、巨大な鳥から距離をとると、レナス達を床へと、そっと下ろす。

訳が解らないアルティアとレナスは、痛みにゆがんだ顔を見合わせる。
すると狼は一瞬、小さなレナスに対し、深く深く頭を垂れる仕草をしてみせる。まるで敬意を表しているかの様な。


銀色に輝く毛並み。目は青灰色で鋭くギラギラと光る。
口からは、鋭い牙が見え、呼吸をする度に白い炎のようなものが、漏れる。
前足、後ろ足の4本ともに、枷が嵌め込んであり、引きちぎった様な鎖が地を這い、動くたびにジャラジャラと音を立てる。痛々しい姿とは裏腹に神々しいとさえ思えるその狼。


ゆっくりとその仕草を終えた狼は、くるりと振り返りレナス達に背中を向ける。
まるで彼女達を守るかのように。
グルルルと喉を鳴らし、明らかに威嚇をしている。あの落雷を呼ぶ巨大な鳥に。


『何奴だ……!』


鳥は金の目をギロリと狼に向ける。
しかし狼からの解答がなどあるわけが無い。
そもそも、話せるパトローナスの方がおかしい。


対峙し睨みあう、巨大な獣達。
大きさは、おそらく狼の方が一回り大きい。


「どうして…守ってくれるの…?」

「パトローナスだ…。」

「え…?」


アルティアの疑問と、それに答えるレナスは口元の鮮血を、袖で拭う。


「これは……【フェンリル】だ…。」

「フェンリル…?」


視線は、相変わらず二匹の獣に向いているが、こくりと頷いてみせるレナス。


すごい……。
声にならない内なる声。


神話には元々興味があった。
当然、北欧神話にも。
その北欧神話に登場する神々の中には、レナスの名の由来である、【ヴァルキュリア】も存在する。

そして、目の前にいる、足かせを嵌めた、巨大な狼もその一人。
悪神ロキと、霜の女巨人アングルボザとの間に生まれた【フェンリル】。
不吉ゆえ、神々に捕らえられた。しかし、それも一時の事に過ぎない。
鎖を引きちぎり、神々の頂点に立つ、主神オーディーンを飲み込む程の凶暴さで、世に終末を齎した。
その顎を開けば、上顎は天に、下顎は地に付く程だったと言う。

目の前にいる狼を見ていると、それも只の伝説では無いような気がしてしまう。
それほどこの狼は巨大なのだ。


神話に登場する獣をパトローナスに持つ者も少なくないが…。
これ程悪評が高い化け物を、レナスは知らない。



「ゆけ……!」


低い声が何処からとも無く、狼に命じる。


一瞬、声の主を探ろうと、対峙する獣達から目を放そうとしたした瞬間。

狼が素早く飛び掛り、巨大な鳥の喉元に長い牙を突き立てる。
衝撃と痛み、そして苦しみに悶え、必死で翼をばたつかせ、耳を劈く鳴き声が轟く。
暴れる鳥に対し、狼は首に噛み付いたまま力任せに鳥の体を振り上げ、地に叩きつける。
まるで何かを破裂させたかのような爆音が響き、その勢いで起こった爆風がレナス達にまで到達する。

舞い上がる髪を押さえた時。
狼が鳥に圧し掛かり、背を着かせる。二枚の翼を鎖の付いた前足でねじ伏せた。

しかし鳥は諦めない。
尚抵抗しようと、耳を劈く奇声を発し、暴れる。がむしゃらに雷と爆風を起こす。

それは、見守っていたレナスとアルティアの元にも当然襲い掛かった。
見せしめとばかりに。

杖を握り、衝撃に備える両名。
どちらの額にも汗が滲む。


またかよ…。


そんな言葉を押さえ込み、回復しないまま杖に力を込める。
痛んだ腕で顔がゆがむ。





突如目の前に現れたローブが翻る。




突き出した褐色の手にまるで吸い寄せられるかのように、瞬時に稲光が消えた。


「お怪我は……?」

「……遅い…!」


現れた男に毒づくレナス。
まるで現れるのが解っていたかのように。


「まさか…これ程のパトローナスを従えているとは…。」

「あたしは、お前のパトローナスに一番びっくりだよ!!なんだよ!販促だろ!」


眉を深く寄せる男。
しかし、更に毒づくレナスが、彼に肩を並べて立ち上がる。
毒づいてる場合ではないのだろうが…。


《まぁ…しょうがない、許してやるよ…。》


助太刀への安心からか、途端に笑みさえもが漏れ出す。しかし、痛みに顔をゆがめる姿は然程変わらない様だ。


「シオン君!早く何とかしないと!」

「確かに…このままでは、あの少年が一番危険、ですね…。」


慌てふためくアルティア。


「私も加勢に…!」

「いや、アルは辞めた方がいい。」

「どうして?!」


アルティアの声が裏返り、まるでヒステリックを起こしたかのようだった。


「落ち着いて。ウンディーネは水の精。雷とは相性が悪いんだよ。だから、ここは私に任せてよ。」

「でも……。」


アルティアの不安に満ちた顔。
しかし、レナスは、そんな親友に対し、笑顔を向ける。


「私の勘が正しかったら…多分恐らく……。」


大暴れする巨大な鳥に視線を向けたまま、言葉がフェードアウトしていく。
しかし、すぐさまシオンへと移した。


「シオン、合図したら、あの狼をどけてほしい。パトローナスの説得は、あたしがやる。」

「しかし……」


言葉を言い掛けるシオンの、肩にそっと手を乗せるレナス。
少し低い視線。しかし、深紅の瞳をまっすぐに見つめるその翡翠の瞳の奥にあるもの。


「大丈夫…。信じて…?」


優しく笑う主人に対し、シオンが取る行動は只一つ。


「………御意……」


まるで頷くように小さく、会釈をする。

何をする気だ?
そんな疑問もあったが、何があってもレナスを信じる事にあたって、根拠や目的を知る必要は後回しだと、瞬時に理解する。


杖を構え


瞳を閉じ、唱える呪文



エクスペクト・パトローナム!



パトローナス召喚!!



*******



「…………主……」


緊迫した空気のはず。
未だにやむ事の無い落雷とイナズマが飛び交っている空間のはず。
聞こえてくる鳥の奇声と、狼の唸り声。


しかし……


「ふざけている訳じゃ……ありませんよね…?」

「うっさいぞ、そこ!!」


緊張が解ける訳だ


レナスが召喚したパトローナス。
数々の伝説を残した聖獣。
ライオンの胴体と後ろ足と尾。鷲の頭部と二枚の翼と前足。
初期は、人間を餌とする程恐ろしい凶暴さゆえ、魔獣だったといわれている。
しかし、その頭の良さゆえ、神々から重宝される様になり、次第にその性質や性格を変え、神獣や聖獣と呼ばれる様にまでなった【グリフィン】。



しかし、そんな聖獣にも関わらず…レナスのグリフィンは……




「ち…小さくて、可愛いね…。」

「アル…それ褒めてないよね…。」



形は確かにグリフィンだった。腕で抱える事が出来る、柴犬ほどの大きさ。背中に備え付けられた、ちょこんと覗く小さな翼。前足につく小さな鉤爪で、何を引き裂くというのか?ふるふりと遊ぶライオンの尾。
到底何か出来るとは思えない小さな聖獣。


そして、グリフィンは何故自分がそこに居るか解らない様子で、床に鼻をつけ、クンクンと匂いを探っている。なんとも自由奔放なようだ…。
しかし、何処か愛くるしく、可愛らしい姿だった。


「だからさっき召喚するのためらってたんだね…?」

「んな事今は、どうだっていいって!」




ギィァァァァァァーーーー!!!




再び奇声が劈く。
鳥が暴れ狂い、抑える狼も必死の形相だった。

実態が無いパトローナス。体力も能力も、持ち主のソレに比例する。
そのため、状況は何も変わって居ない。


「ギルがミイラになる前に…なんとかするか…。」


足元で、レナスを見上げ、小さな嘴でクワーと鳴いている、小さなグリフィンに片膝をつき、頭を撫でる。


「頼んだよ?」


杖を振り、パトローナスを導く。


化け物のような巨大な二匹の獣に、こんな小さな聖獣を行かせてしまって良いものか…?
シオンとアルティアが顔を見合わせた。


翼を羽ばたかせ、宙を舞い駆けて行く。決してスマートな飛び方、宙を走っているとは言えない。

あっちへふらふら、こっちへふらふら…まっすぐに飛び駆ける事さえ出来ないようだ。


頼りない…!

その一言に尽きる。


飛び交うイナズマがいつ襲い掛かって黒焦げになってしまうか…。
いや、パトローナスなのだから、黒焦げになることはまず無いのだが…。


やっとの事で、獣達に到達するグリフィン。


その大きさの差は、象と小鳥ほどあるようにも見える。


「シオン!フェンリルを遠ざけて!!」


その言葉と同時にフェンリルが巨大な鳥から飛びのく。
抵抗し続けていた鳥が、首をぶるぶる振りながら起き上がる。





『おのれぇぇぇぇ!!!許さんっっっっ!!!』





金色の瞳をまるでナイフの様に鋭くギラギラさせ、翼を大きく広げる。
怒りに任せて天井を仰ぎ、次の行動に出る。


必要の部屋。
野球場程の広さがあろうとも、そこは室内。しかし、黙々と黒い煙が立ち込める。あれは…雲。


「まずい…ですね…。」


思わずシオンの口からこぼれた言葉。
落雷を起こすだけでは飽き足らず、この部屋全体に雷雲を留まらせ一気に放出する気だ。
もしそんな事をこの部屋で行えば、爆発では済まない。


《せめて…、あの少年に近づければ……》


シオンは、床にうつ伏せになった少年をはがゆそうに見た。
しかし、彼はピクリとも動かず、一向に目を覚ます気配はない。


巨大な鳥と、落雷の為、簡単に近寄る事もできない。
彼に手を出そうものなら、またあの鳥は怒り狂うであろう事は誰の目にも明らか。


《……主…》


自分が信じると決意をした。そして彼女の背中を見据える。
しかし、拳を握る。
その拳の中には、彼の長い爪が突き刺さる。

その隣では、緊張した面持ちで、自分の手を祈るように合わせ握り、じっと行く末を見守るアルティアの姿。




空気が変わる。



渦を巻いたどす黒い雲が、3人を包み込む。重苦しい空気。所々火花がバチバチと散る。


いつ爆発してもおかしくない。
膨張する大気。




《…レナス……!》




****続く****

コメント(3)

一回パトローナスの対決を書いてみたかった…。
まじちょー念願!!

しっかし…。
なんか凄い事になってるねみんな。
シオンのパトローナス 

フェンリル あくまでイメージです。
レナスのパトローナス

グリフィン あくまでイメージです。

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