第4変奏曲 Cantabile non troppo lento 変イ長調 終曲への橋渡しとなるこの耽美なる変奏には、オイゼビウスがまどろみに身を委ねるような、官能的な雰囲気が漂います。次第に曲は発展し、勢いよく飛翔しますが、徐々に滑空し、molto lento のカデンツァ風パッセージを経て、幻想の世界へと旅立ちます。
幻想曲風終曲 Finale alla Fantasia ヘ長調 幻想的終曲と銘打たれたこのフィナーレは、詩的精神に満ち溢れながらも、突発的な変化に富む、後年のシューマンの音楽性を予期するかのような終曲です。あたかも、オイゼビウスに擬態したフロレスタンが、縦横無尽に駆け回るような情景が浮かびます。最後の突如フッと煙が消えるように姿が見えなくなる終わり方は、『人生は塵と幻である。幻想なのだ』という後年のシューマンの気質を、預言しているかのようです。